08





「すーー」
此処はオレの部屋だ…オレは気持ち良く眠ってた。

「キィ……」

ゆっくりと入り口のドアが開いた…
でもぐっすりと眠ってたオレはそんな不意の侵入者に気付かなかった。

キシリとベッドが軋んで身体に重みが掛かって微かに眠りから覚めた…

「ん……?」
何だ?誰かいるのか?

「芫君……」
耳元に囁かれた
「…は…?」
誰だ?この声…?女の声だ…聞き覚えあるような無いような…?
「芫君…」
また囁かれた…
「ああ?誰……んっ!!!」

夢うつつのまま肘を着いて頭だけ起きた途端いきなり口を塞がれた!?

「なっ…ちょっと待て…ングッ!!」

身体は人一人乗っかってるらしく重くて動かせない…
起こした頭もキスであっさり押さえ込まれた。
舌を思い切り突っ込まれて声も出ない…しかもタバコくせぇ!!!

「…ぷはっ!!誰だお前!?」

やっと絡んでくる舌から逃げて一声出た。
「フフ…」
オレの上で鼻で笑いながらオレを覗き込んでるのは…

「あたしよぉ ♪ 芫君 ♪ ♪ 」

「お前…」

そうだ…名前は知らないが確か悠の奴が時々連れて来る女友達の一人だ。

「此処で何してる?悠の部屋は向こうだぞ…」
「知ってるわよ。悠の部屋から来たんだから♪」
「はあ?」
「今夜はお姉さんと遊ぼうよ…」
そう言ってニンマリと笑う。
「ふざけてんのか?」
「まさか!ずっと前から狙ってたのよねぇ〜 ♪ 
お姉さん君みたいな年下の男の子としてみたかったの ♪ まだ女知らないでしょ?
お姉さんが手取り足取り教えてあげる ♪ 」
「断る!!オレだって相手選ぶ権利はあんだろ!あんた年上過ぎ。」
「あらぁ〜生意気ねぇ…でもそんな所もそそられるわ。」

「…………」

これは何を言っても無駄だと思った。

最初から止める気なんてないしやる気満々なのがわかる…
まぁ別にどうしてもしたくない理由なんて無かったし
童貞喪失にもなんの未練も無いが……

本当にこの女でいいのか?オレ…

「…んっ!」

考えてる間に相手は行動に出た。
舌を絡めるキスをしながら剥ぎ取る様に服を脱がされても別に抵抗しなかった…

『教えてあげる』と宣言した通り慣れたもんでオレの身体は初めてのはずなのに
オレにとって敏感な所ばかり攻めて来る…

オレの身体をこの女の舌がいやらしく這う…
頭で想像してたのと違う感触で…生暖かくて…でも柔らかい…
気持ちいいとまでは思わなかったが…こそばゆい感触だ。

初めて生の胸も触った…と言うか触らされた。
オレの手を自分の胸に持っていって揉んでくれと言うから言われた通りにした。
それなりに出来上がってる身体は肉付きもハリも申し分なかった…


散々オレの身体を堪能したかなり年上の名前も知らない女は…

勝手にオレの上乱れて…感じて…勝手にイッてた……


そんな相手に結局はつき合わされたオレも何気に息があがってる…
考えてみたらこれって無理矢理ヤラれたって事か?……女に??

そう思うと無性に腹が立って来て頭にきたからお返しにヤリ返してやった。


その後も何度か夜中にオレの部屋に来る様になってその度に相手をした。
今はもう悠の奴もそいつと付き合ってないから家にも来なくなったし…
悠が言うには結婚したらしいが定かじゃ無い…

まあオレには全く関係ない事で気にする事でも無いから
その女の事は思い出しもしないが…

もう3年も前の話だ……


「いつ聞いても羨ましいよなぁ…夜中に生のお姉様が忍んで来るなんてよぉ〜」

お昼を食べた後の昼休み…
屋上でいつもの様にクラスの連中とたむろってる…
ただ何でオレの初体験の話になったのか覚えてないが…
確か初めてではないと思うが喋らされてた。

「でもそのせいで芫 『タバコ』 と 『香水』 がダメになったんだよな?」
高野が面白そうに笑ってそんな事をバラす。
「ああ…とにかく舌絡ませられるたんびにタバコの味が苦くて…
あんまいいもんじゃなかったし香水が布団に染み付いて取れなくてさ…
何かその匂い嗅ぐと気分重くなんだよな……」
「やっぱ無理矢理だったからか?」
「さぁ…自分じゃそんなに気にしてるつもり無いけど…」
「でもお前同級よりも年上相手だよな?」
「2つがセットだとキツイけど1つなら…別に一緒でも出来ない訳じゃないし。」
「ホント慣れてるよな…芫ってば…」
「そうか?」
「やっぱ家庭環境の違いか?」
「まぁガキの頃から上の兄貴達に鍛えられたからな…
家に知らない女が居るのは毎日の事だったし…
どっちかが連れて来てた女が必ずいるんだよな…」

確かオレのファーストキスが奪われたのはそんな女の一人でオレが8歳の時だった…
そいつもタバコの味がした記憶がある…
裸にシャツ1枚で抱き着かれた事もある。
思い切り胸押し付けられて…胸の谷間に顔を挟まれた事もあったっけ…
小学生の頃は特に構われたな…お陰でいろんな事勉強させてもらったよ…

「良く親が何も言わなかったな?」
「ああ…家の親放任だから…快と悠が親代わりだったし…
流石に男3人そんなんだからおふくろが慌てて下の輅には女近付けるなって
凄い力入れたからあいつは普通の健全な中学生に育ったみたいだな。」

「普通…ね…」
周りの奴らが一斉に呆れる。

「何だよ!?大体何でオレのこんな話しになってんだよ?」
「いやぁ…そんなお前がみかげちゃん相手にいつオオカミになんのかなぁ〜って。」

「ならねぇよ!そんな事したら一発でさよならだ。」
多分今の段階だと確実だろう。

「身持ち固いな。」
「いやぁ普通女ってそんなもんだろ?俺達が相手にしてる子が軽いんだよ。」
「ま…そう言う子狙ってるんだから仕方ねぇか。」
「彼女いるのこのメンバーじゃあんまいないんじゃね?」
「確かに…」
「俺はいいんだぁ〜〜色んな女の子と遊びまくるから!」
「だよなぁ!!心の友よ!!」

野郎2人でしっかりと抱き合ってる……
オレもちょっと前までは女なんて暇つぶしの相手くらいにしか思ってなかった…

ガキの頃からの慣れは怖い。

でもみかげは違ってた…
出会い方も強烈だったし何よりオレに心配と不安を与えた初めての相手だ…
しかもオレを振ろうとしてたし…

こんな愉しい相手夢中になるの当たり前だろ?



「………クン…」

「ん?何?」
「いや…みかげなんか付けてる?」
「え?何も付けてないけど?やだ…何か匂う?」
凄い慌ててる。
「違くて…いい匂いがするから。あ!別に嗅いでるわけじゃないからな…」
今度はオレが慌てた…そんな趣味無い。

きっとシャンプーの匂いなのか…
オレにとっては心地よい…と言うかホッとする…


「みかげ…」
「ん?…あ…」
後ろからみかげの腰に腕を廻して抱き寄せた。
「ちょっと…芫くん…止めて…誰かに見られる…」

下校途中の人通りの一応少ない帰り道…何度目かのみかげとの帰りだ。
今はオレの家に向かって駅から歩いてる…
強引な事はもうしないと誓わされて何とかお誘いに頷いてくれた。

スルリとオレの腕からみかげが擦り抜けた。
本当なら逃がさない所だけどしつこくして嫌われるのは避けたい。

オレが嫌われるのを避ける?何とも……兄貴達が聞いたら大爆笑だろうな…

でもそんな気持ちも新鮮で愉しい。


「芫くん部活は?」
「帰宅部。」
「やっぱり……」
「呆れるの失礼だろ?」
「だってそうだろうなぁって思ってたから。」
「別に運動にも興味無かったし…文化部も…ね」
「………っ…ぷっ!!!」
「何だよ!?」
「え?ううん…芫くんが文化部のどのクラブも似合わないなぁって…
でも部活してるの想像したら…何か笑えて…」
「何想像してるんだよ?」
「え?んー…茶道部…華道部…?」
「何でそっち系?」
「何となく……」
「みかげは?どのクラブだったんだ?」
「前の学校では水泳部。」
「水泳?」
「うん…あ…でも大会出場とかそんな大それたのじゃなくて同好会みたいな…
ダイエット目的!」
「は?何だそりゃ?」
「顧問の先生の趣味。」
「え!?そいつ男?」
「ううん…女の先生だよ。」
「…そう…」

何故か胸を撫で下ろした。
男ならどう見てもそっち目的だろ?

「でもここってプール無いから…」
「普通…特に女子ってプール嫌がるだろ?
この辺じゃプール無い高校ってだけでココ選ばれてるくらいなんだぞ。」
「そうなの?良い運動になるのになぁ……」

どうやらみかげは男の視線を気にして無いらしい……

「ならオレと一緒に帰宅部でいいじゃん。毎日一緒に帰れる。」
「ダメだもん…お兄ちゃんがうるさいんだよね…部活入ってないと…」

また兄貴か……

どうやらみかげと兄貴はお互いに 『シスコン』 と 『ブラコン』 の気配がある…
本人達は至って兄弟愛だと思ってるみたいだが傍から見てるとそれを越えてる……

「……なあ…みかげ…」
「ん?」

「……もしかして…そん時って…水着?」
「え?」
「学校指定のスクール水着?」
「当たり前じゃない!私服の水着なんて着れるわけ無いでしょ?」

ド ッ キ ーーーーー ン !!!!!

やばいっ!!やばいぞっ!!
想像しちまった……みかげのスクール水着姿……ちょっ…マジやばいって…

オレは心臓がバクバク…

「も…もしかしてまだ…その水着って持ってる?」
「うん…持ってるよ。だってちょっと前まで使ってたし。」
「……使ってた…!!」

ヤバイっ!!
オレの頭の中でスクール水着を肩から外して横たわるみかげのビジョンが…

「……………」
「…!?…芫くん?」
「え?」
「どうしたの?大丈夫?顔真っ赤だよ?」

覗き込まれて不思議がられた…

「えっ!?…いや…何でも無い…はは…ホント…大丈夫だから…」

みかげを抱ける様になったら絶対1度は水着をきせる事を心に誓った!!!
オレ…頑張るっ!!!!!


「あれ?芫君?」

「!?」


聞き覚えのある声に呼び止められて振り向いた…
「今帰り?あら?そちらは?」

「え?ああ…オレの彼女…」

「え!?彼女!!??ウソでしょ!?…って…あら…失礼。」

声を掛けて来たのはスーツを着こなしてそれなりの化粧をしてる…小奇麗な女。

「芫くん?」
みかげがオレの制服の袖を引っ張っる。
「ああ……こいつ佐伯 彩…」
「彩さんでしょ!きゅっ!」
「…痛って……!!」

素早く手が伸びてオレの鼻を抓んだ。

「初めまして…えっと…」
「あ…吉泉…吉泉みかげです…初めまして…」
みかげが慌てて頭を下げた。
「変な事聞いてごめんなさい…本当に彼女なの?」
「…あ…はい…」

俯き加減で返事をしてる…もっと自信もって答えろよな…まったく…

「何だよ…ウチに用か?」
「そうよ。快先生にね!」
「ふうん…」
「じゃあ2人のお邪魔しちゃ悪いから…先に行ってるわね。」

そう言って手を振ると足早に歩いて行った…オレん家に向かって…


「…はぁ…」

オレはあの女が苦手。
上手く言えないがどうもあの女には強気に出れない所がある…

「芫くん?あの人って?快さんの知り合い?」
「……快の担当の編集者だよ…きっと仕事の打ち合わせだろ…」
「へぇ…でも綺麗な人だったね。」
「そう?」

オレはちょっと曖昧な返事……

佐伯 彩…
快の担当の編集者で……



       オレにとって…2人目の女……