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佐伯 彩(saeki aya) : 快の現担当編集者。快の事が好きらしい。芫と昔1度だけ寝た事がある。



「あら!」
「!!」

快のプロポーズ事件から2日後みかげを送り届けた後
駅から自分家に帰る途中彩とばったり会った。

輅は次の日に帰って行った…また来るって言葉を残して…



「今帰り?」
「ああ…そっちは…快の所か?」
「そう。」

「………」

オレは次の言葉が見つからなくて一瞬無言になった。

「!!」
「ちょっとだけ…」

彩がオレの胸に飛び込んで来てオレの胸に顔をうずめる。

「………」

いつの間にかオレは大分彩より背が高くなった…あの時は同じくらいの背だったのに…

「まさかあんな風に諦めさせられるなんて思わなかったわ…」
「快に告白した事あんの?」
「無いわよ…だって最初から私の事なんて快先生眼中に無かったから…」
「そう……」

「…抱いてくれない?」
「…また快の代わりにか?」
「さあ…ご想像にお任せするわ…」

そう言うと微笑んでオレを見上げる…

「オレ彼女いるんだけど?」
「そんな事気にする様になったの?あんなに女性相手で冷めてた人が?」
「オレだって成長する。」
「じゃあその成長した所見たいわ。」

腰に腕を廻されて抱きしめられた…微かに彩の温もりが伝わって来る…

「彼女には黙ってればいいわ…別に恋愛感情がある訳じゃないんだもの…」

オレに胸に顔をうずめたままそんな事を呟く様に話す。

「……………」
「芫君?」
「昔…悠の奴に言われた事がある…アンタがオレの初恋なんじゃないかって…」
「?」
「そうかもしれないって…思ったよ…アンタの事は気になってたし…悠の女友達とは
違う感情もあった…多分今ままで寝た女の中でアンタがオレにとって一番だったから…」
「………そう…嬉しいわ…」
「でも…それだけの事だ…」
「え?」
「アンタと初めて寝た時もしアンタが快の事好きじゃなかったら…
オレはそのままアンタを好きになってたかもしれない…でも…そんな事今更だ。」
「 !!! 」
「アンタはオレの初恋の相手…それだけ。そしてオレは今みかげが好きだ。
アンタよりも…どんな女よりも…みかげの事が好き…だからアンタとは寝ない…」
「…………」
「悪いけど他当たって。」
「………ふふ…まったく…本当に君って快先生にそっくりね…」
「?」
「女性に冷めてて…なのに本当は結構一途で…真面目。」
「そりゃどうも。」
「……はぁ…ホントあなた達兄弟は私には鬼門なのかしら……ロクな事がないわ。」

そう言って髪をかき上げながらオレから離れた…

「ちょっと甘えさせてもらったから…もう大丈夫。快先生の事はキッパリ諦めるわ。
あんな風に振られたんじゃどうしようもないし…私も他にいい男見つけなきゃ。」
「彩なら直ぐに見付かる…」
「あら…名前で呼んでくれるの?さっきまで 『 アンタ 』 だったわ。」
「そうだった?」
「……仕事はちゃんとするから大丈夫よ。小説家の 『 東雲快 』 はずっと好きでいるから。」
「そう…」

「じゃあ……またね。」

「ああ…」




彩が駅に向かって歩いて行く…

快の結婚騒動で何だか色んな事が落ち着いたみたいだ…何故だかそう感じた…

本当に彩なら相手なんかすぐに見付かりそうだし…オレは……


何となくみかげの声が聞きたくなって…オレにしては珍しくみかげに電話をした。

繋がった携帯から聞えて来るみかげの声を聞きいて…ホッとしてる自分がいる…

オレはそんなみかげの声を聞きながら家までの帰り道を歩き出した……