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「みか…げ?」

みかげが思い切りオレの頬を引っ叩いた!!!

「芫くんは一体誰を相手にしてたのっっ!!」

「………………」

誰って…そりゃ…
オレが何も言えずにいるとみかげがベッドから抜け出した…

「みかげ!!」

「触んないでっっ!!」

触らないで!?え?なんでだよ…?

「見ないでっっ!!」

みかげが自分の脱がされた服を掴んでオレに背を向けた。

「………」
オレは仕方なくみかげから視線を外した。

嫌な沈黙が流れてる…時間にしたら数分の事なのに…異様に長く感じる…
服を着終えたみかげが黙って部屋から出て行った…



「………クソッ」

こんな後味の悪いの初めてだ…
確かに強引だったかもしれないがお互い合意の上だっただろう…?
なのになんであそこまでオレを拒絶する?

ふと…視線を落とすとシーツにみかげが初めてだと証明される痕跡があった。

「………」

あいつ…大丈夫なのか?不安と一緒に心配な気持ちまで湧き上がって来た。


「おい芫?」
いきなり部屋のドアが開いて快の奴が顔を出した。

「あの子泣いてたぞ…って何だ?芫お前…無理矢理?」

裸でベッドに座り込んでるオレを見るなり呆れた様にそう言った。

「ノックぐらいしろよ。無理矢理なんかじゃない…」


そう…無理矢理なんかじゃ……無かったよな…





「あれ?芫の奴どしたの?超機嫌悪くね?」

教室に入ってくる奴が入って必ず最初に言うセリフ…
もう一体何人がそのセリフを言ったか…数えるのも面倒くせぇ…

「 いちいちウゼェんだよ…黙れ。 」

睨んでそう吐き捨てた。

「うわっっ…怖えぇ〜〜どうしたん?」
オレには聞かずにオレより少し離れた所にたむろってるメンバーに声を掛ける。
「あいつが機嫌悪くなるっつたらみかげちゃんじゃねーの?」
「普通の娘だったもんなぁ〜」
「やっぱ遊び人の芫には無理だったんだよ…」
「芫にはついていけなかったか…」

連絡は取ってない…向こうからも何も言ってこない…
こんな便利な世の中で…ボタンを何回か押せば会話が可能なのに…
何でお互いそんな便利なモノを使わずにいるんだろう…

なのにオレは昨日から携帯を握り締めてる…



「おい東雲!」

「ん?」

今のこのオレに声かけてくる無謀な奴は誰だ?って…

「吉泉…」
みかげの兄貴…

「ちょっといいか?」


授業の始まる前のまだザワめいてる廊下で話し込んだ。

「昨日みかげと会ったんだろ?」
「……ああ」
「帰って来たかと思ったら何か様子が変で…」

「………」

なんだ?コイツ…カマかけてんのか?

「案の定夜熱出した。」
「…熱?」
「ああ…結構高い…」
「昨日オレと会った時は何とも無かったぞ…」

確かに熱なんて無かった…あればわかる…なんせ素肌で抱き合ったんだから…

「みかげは風邪をひいても滅多に熱なんか出さない。」
「?」

「何か精神的なショックを受けると昨日みたいな熱を出す…昔からそうだ。
朝はあんなに元気だった…だからお前と会って何かあったんだ…」

「……!!」

真っ直ぐな瞳で見つめられた!!みかげと…同じ瞳……
一瞬息が止まった。

「何があった?」

「………」

言うべきか…?
そう…今までみたいに言えばいい…簡単に…
今までだって誰にでも言ってきたじゃねーか…でも…

「…まあ…何となくわかるけどな…」
「吉泉…」

「此処が…学校の廊下じゃなきゃ…お前の事ぶん殴ってやる…」

そう言って拳を力強く握ってる…

「 !! 」

「付き合ってる以上…ある程度の事は目を瞑る…でも…みかげを傷付ける事だけは許さない!!
熱が下がったらみかげと話す…万が一の時は…別れてもらう。
みかげにもそう言っておく…みかげは2・3日学校を休ませるつもりだ。」

それだけ言うと吉泉は先に教室に戻って行った。


「……はぁ……」

こんなため息吐くのなんて…オレはどうかしてる…
昨日何があったかなんてサラリと言えばよかったのに…

でも…何故か言いたく無かった…いくら身内でも…兄貴でも…

これはオレとみかげだけの…思い出の1つだから………




……パチン

と携帯を閉めた…自分の部屋のベッドの上だ。

昨日ここにみかげがいたんだよな……

結局みかげには連絡していない…
熱があるらしいし…何をどう話せばいいのかわからなかったから…

「ハァ〜〜〜」

オレはまた今まで吐いた事の無いため息を吐く……



それから3日後お互い何の連絡も無いまま…
学校で教室を移動する廊下の途中でみかげとバッタリ会った。

ちょっとまだ顔色が悪くて…元気が無い…


「………!!!」

「!!」

お互い…ちょっとびっくりした顔になった…

「………」

オレの方がぎこちなかったかもしれない…
みかげは何も話さず…俯いて…オレの横を足早に抜けて行った…

「 !!! 」

何だ?この胸の中のザワめきは……
重苦しくて…微かに吐き気まで襲って来る……何だ?何だよ…この感情!?


「どうしたんだよ?芫?お互いシカトか?」
「喧嘩でもしたのか?」

「うるせぇ……」

喧嘩ならまだマシかもな…

「ま!なるようにしかならねーもんな…特にお前相手じゃな。」
「何だよ…それ。」
「だけどお前と別れたってわかったらみかげちゃん周りの野郎共…放っとかねぇだろうな。」
「?」
「今は芫の彼女だから誰も手ぇ出さねぇけどフリーってわかったら狙われんだろうな…
東雲 芫が初めて付き合った女だもんな…どんだけあっちもスゲーんだってみんな興味津々だぜ。」

「はぁ?何言ってんだ…」

オレはムカついていつも一緒につるんでる高野の胸倉を掴んだ。

「本当の事だろ?だったら変な意地張ってんじゃねぇよ…」
「高野…」
「お前の方が未練タラタラなんだろ?」
「はぁ??」
「ほら図星で焦ってんぞ。」
「バカらしい…アホか…」
掴んでた胸倉を離した。

「マジで横から手…出されんぞ。」

急に真面目な顔で言うな……

「……………」



今までそんな事考えた事なんて無かった…

みかげが他の男と付き合う?他の男のモノになる?他の男がみかげを…抱く…?


…ムカッ!!!


!?…あれ?何だ今の…また胸の中が変になった…