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3日振りに芫くんとすれ違って…何だかドキドキした。

あの日から一言も口を利いてなかったし顔も見て無かったから…
心の準備が出来てなくてびっくりしちゃった。

でも…あんな事しちゃったけど…会えたらやっぱり嬉しかった…
私の事…どう思ってるんだろう…ひっぱたいて…文句言って…
『大嫌い!』なんて言っちゃったし……

芫くんからは連絡が1度も来なかった…もう…ダメなのかな…
そんな事をずっと考えていた……

どうしよう…後で勇気を出して…話し掛けてみようかな…
でも…私と…話してくれるのかな………

お兄ちゃんには彼と付き合うのは無理なんじゃないかって言われたけど…
私は返事をしなかった…

「はぁ……」

本当…どうしたらいいんだろう…
あの時本当はショックだっただけ…
強引で乱暴で…私の事なんて何も考えてなくて……
痛くて…辛かったから………

いつもの…優しい芫くんは……何処にもいなかったんだもん……



「芫今日も一人か?」

「余計なお世話だ。」

超不機嫌に返事して…教室を後にした。
階段を下りて下駄箱で上履きを履き代えながらボソリと呟いた。

「……女と付き合うのってやっぱ色々面倒くせぇ……」

そんな呟きを…まさかみかげが聞いていたなんて…オレは全く気がつかなかった。

心臓がドキリとなって…しばらく動けなかった…
話し掛けようと芫くんの下駄箱で待ってたけど勇気が出なくて…
奥の列の下駄箱で見えない様に隠れてたから…

目の前が真っ暗になって…息が詰まって…涙が込み上げて……
芫くんが外に出たのを確かめて私は自分の教室に戻ろうと駆け出した。

周りを見ずに早足で歩いてたから出合い頭に人とぶつかった。


「あ…ごめんなさい…」
「いや…大丈夫…ってみかげちゃん?」
「?」
顔を上げると…誰?でも見た事ある人?

「ああ…俺東雲のダチ!クラスは違うけど東雲と一緒の時何度か会ってるんだぜ。」

「あ…そうなんですか…」

返事をしながら手の甲で涙を拭いた。

「なに?泣いてるの?」
「え?あ…違います…じゃ…」

「東雲と上手くいってないの?」

「!!」

思わず立ち止まって振り向いた。

「相談のるよ?東雲とは1年の時からのダチだからさ。」

「…………」



「あれぇ?芫君こんな所で何してんのぉ?」

「…!!」

校門を出た所のガードレールに腰掛けてみかげが出て来るのを待ってた。
他のクラスの女2人が話しかけて来た。

「別に。」
「彼女待ってんの?」
「いいなぁ〜あたしも芫君と付き合いたいなぁ〜」

…無理だな…心の中でそう呟いた。

みかげとは会った瞬間から今まで出会った女とは違う何かがあった…
だから強引に彼女にして付き合っていつもならあっという間にベッドに誘うのも
我慢して我慢して……やっと達成したって言うのに…

「はあ〜〜〜」

またため息だ…でも…

あの時…みかげはどんな顔してた?あの時みかげはどんな声だった…

みかげの身体もどうだった……?……オレ………



「あ…あの…!!」
「何だよ…東雲の奴と上手くいってないんだろ?なら奴と別れて俺と付き合おうぜ?」

「や…止めて下さい!!」

芫くんの友達って言ったのに……なんなの?この人…
肩を掴まれて階段の踊り場の隅に押し付けられて迫ってくる…やだ…怖い!!

「何だよ。止めて下さいなんて上品ぶってんじゃねーよ!どうせ東雲の奴とヤリまくってんだろ?
どんな声で感じてんだ?出してみろよ。」
「!!!あ!!嫌っ!!!」

彼の手が乱暴に私の腿を撫でながらスカートの中に入って来た!!やだっっ!!芫くん!!

「あ…あなた芫くんの友達じゃないんですか!!何でこんな事…!!!」


「いつからお前が芫のダチになったんだ?」

「!!!」

階段の途中にいつも芫くんと一緒にいる人達が立ってた。

「大丈夫?みかげちゃん」
そう言って私を彼から引き離してくれた。
「オマエ前から芫の事目の敵にしてたよな?」
「ああ…確か狙ってた女に芫がタイプだって言われてフラれたんだっけ?」
「げー自分がモテない逆恨みですかぁ?」
「……この娘が…東雲の奴と上手くいってないっつーから相談に乗ってやったんだろ…」
「相談?ふざけんなよ!あれが相談乗ってるなんて誰が信じるんだよ!」
そう凄みながら芫くんの友達が彼の胸倉を掴む。
「あ…あの私…大丈夫ですから…もう…」
掴んでる腕を私も掴んだ…だって私のせいで喧嘩なんて……
「だってよ…離せよ。」
「……みかげちゃんに免じて今回は芫には黙っててやるよ。だが次はねぇからな!!」
凄い睨み合いになっちゃって……ど…どうしよう…
「そりゃどうも!ったく…お前等だって奴に女取られた事あんだろ?悔しくねーのかよ!」

!!…芫くんに?

「確かに芫の奴は女にモテるけどな……芫はな…

      テメェみてぇにダチの女に手なんか出さねぇんだよっっ!!」



「………出てこないな…」

しばらく校門でみかげを待ってたが来る気配がない…
友達とでも話してるのか…それとも兄貴を待ってるのか…有り得るな……
仕方なくオレは学校を後にした。

会って……何て言うつもりだったんだ……



「あ…ありがとうございました……」

芫くんの友達に深々と頭を下げてた。

「気をつけなよ。此処にいるメンバー以外は友達なんかじゃないからね!」
「はい……」
「芫と喧嘩したの?」
「!!…本当に…ありがとうございました…この事は芫くんには……」
「わかってるって!」
「じゃあ…」
「送ってってあげようか?」
「いえ…教室で友達が待ってるから……」
「そ?じゃあ…」
ペコリと頭を下げながら階段を下りた。

友達が待ってるなんてウソ……
でも…あのままあそこにいたらあの人達の前で泣き出しちゃいそうだったから……
少しでも早くあの場から離れたかった…



「……うっ……」

怖かった…あの人達が来てくれなかったら…私……

芫くんに会いたい……芫くんの胸に飛び込みたい…芫くんの声が聞きたい……

でも……もう…私の事なんて……重荷でしか…ないから……


「…うっ……ひっく……どうして……」


とうしてこんな事になっちゃったんだろう………

ほんの数日前まではあんなに楽しかったのに……

涙が次から次へと溢れて来る……いくら拭っても止まらなくて……

私は誰もいない静かな廊下で…ずっと1人で泣いていた………

やっと涙が止まった時は外はもう夕焼け色に染まってて……

パラパラと下校する人達が…校門に向かって歩いていた……