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「 芫くん!!! 」

私は……芫くんに向かって……ジャンプして…

芫くんに飛び込んだ!!!


「 うわっ!!! 」

「 !!! 」

ドカッッと芫くんの胸に飛び込んでぎゅっとしがみ付いた!

ゴンッ!!

「 いてっっっ!!! 」

倒れはしなかったけど私に飛び付かれて受け止めた芫くんはその勢いで最後の段まで早足で…
しかも後ろ向きで駆け下りると思い切り踊り場の壁に後頭部をぶつけた。

「 あ…ごめん…大丈夫? 」
「……っつ…何とか……」
「あ…あの……その……」
「もう…怒ってないの?」
「え?」
「オレの事…呆れて…怒ってたんだろ?」
「あ…呆れてなんかないよ…?」
「じゃあやっぱ怒ってはいたんだ?」
「別に……怒っても……あ…ちょっと…最初は…かな…」
「……やっと…許してもらえたって事かな?」
「え?」
「それとも…別れ話しに来た?」
「ええっ!!??何で??」
「良かった…違かったか……」
もの凄いホッとした顔してる…
「長かった……この1週間…どうにかなりそうだった…」
「…うそ…うそだ……」
「うそじゃない……みかげは?みかげは平気だったのか?」
「…平気なわけないじゃないっっ!!だから…こうやって…こうやって……うっ…」
やだ…急に涙が込み上げて来て……

「ちょっ…ちょっとタンマ!!ストップ!!!」

「…え…?」

もの凄く芫くんが慌ててる?

「来て!」
「え?あ…」

そう言って腕を引かれて…2人で廊下を走り出した。



「ここなら落ち着いて話が出来る…」

「…………」

いつもの保健室…先生も休んでる人もいない…いつもいないんだよね…??
いつもの様に一番奥のベッドに2人で腰掛けた。

「……………」 「……………」

改まると2人で無言になる…

「……芫くんはもう…私の事怒って…ないの?」

やっとの思いで話し掛けた。

「最初から怒ってないけど?」
「そうなの??」
「だって…オレが怒るのおかしいだろ?」
「でも…いきなり頬っぺた叩かれちゃったんだよ?」
「?ああ…でも…それはオレのせいだから…」
「芫くん……」

「ごめんな…嫌な思いさせちゃって……オレ嬉しくて…舞い上がってた…」

あんなにどうみかげに話せばいいのか悩んでたのに…
こうやって会えばスラスラと言葉が出てくるなんて……

「え?芫くんが?」
「そう…オレ…がだよ…みかげって凄いよな。」
そう言ってにっこり笑う…いつもの…優しい芫くんの笑顔だ…
「……あ…」
芫くんがぎゅっと私を抱きしめた…

「まだ…オレの事好きか?」
「……芫くん…」
「…好き?」
「……うん…好き…大好き…」
目を瞑って芫くんに寄り掛かりながらそう答えた。
「みかげ…」

「ずっと…会いたかった…声が聞きたかった…こうやって…傍にいたかった…」

「オレも…ずっと会いたかった…でも…みかげが怒ってると思ってたし…嫌われたと思ったから…」

「………芫くん…」

芫くんがそんな事思ってたなんて…

いつも自信たっぷりで…女の子の扱いに慣れてて…こんなの悩んだりしないって思ってた…


「大嫌いなんて言ってごめんなさい…」
「いや…あの時はそう言われても仕方ないから…」
「あ!」
「ん?」
「でも…私と付き合うの…面倒くさくなったんじゃないの?」
下駄箱でそう呟いてたもん!!
「は?何の事?」
「…………」
私はちょっと膨れっ面で…ちょっぴり唇を尖らせた。
「何だか良くわかんねーけど……別に面倒くさいなんて思った事ないけど?」
「うそ!!!」
こっそり聞いちゃったなんて言えないから…
「??…確かに女と付き合うなんて面倒くさいってずっと思ってたよ…」
「ほら!やっぱり!!」
「でもそれはみかげ以外の女とだ。」
「え?」
「そう思ってても…みかげとは付き合いたかったんだ…
そしたらみかげにはそんな事思わなかった…思った通りだった。」

「……本当?」

「本当!ちゅっ!!」

「 !!! 」

「一週間ぶりのキスだ…?どうした?」
見ればみかげが納得行かない顔でオレを見てる。
「……ズルイ!芫くん!!」
「は?」

「仲直りのキスは私からしようと思ってたのに!!!!」

そう…せめてそれくらいは頑張ろうって決めたのに!!

「えっ!?そうなの?何だよ…だったらそう言えばいいのに…」
「言う前に芫くんがしちゃったんだもん!!」
「…ごめん…じゃあやり直し!」
「……そう…改まられると…照れる…」
「何だよ?相変わらず奥手だな…みかげは。」

「…………」

「みかげ?」

「もう…芫くんとこうやって話せないと思ってた…だから毎日が不安で不安で…
友達に自然消滅しちゃうって…言われて…そしたらもっと不安になって…
そんなの嫌だったから……」

「……ごめん…不安にさせて…もう2度とそんな思いさせないから…」

「うん……ねえ…何でメールもくれなかったの?」
「え?…あー…何だか…メールでやり取りする内容じゃない気がして…」
「でも電話もくれなかった…」
「………何て言えばいいのかわかんなくて……」
「今日…私がこうやって話し掛けなかったら…どうするつもりだったの?」
「みかげがオレに話し掛けて来ないって事はまだ怒ってるって事だと思ってたから…
きっとみかげが話しかけてくるまで待ってた。」
「えーーじゃあずっと話し掛けなかったら?」
「ずっと待ってた…」
「ずっと?1年も?5年も?10年も?一生??」
「ああ…」

「もう!!!それって男らしくない!!」

「でも…みかげのこと怒らせたのオレだから……みかげが気の済む様にして欲しかった…」

「じゃあもしこのまま自然消滅で私が他の誰かと付き合っても平気だったの?」
「それがみかげが選んだ答えなら…」
「えーーー…」
「でも1秒でも早くそいつと別れる様に邪魔してやる。」
「え?」
「事あるごとにイチャモンつけて別れさせる。」
「だったら最初から自然消滅なんて待たなきゃいいんじゃない?」
「自然消滅しなかっただろ?」
「だってそれは……って芫くん私から話しかけてくるってわかってたの??」
「自信はあった。」
「あ…なんかそれってズルイ気が…」
「そう?オレはただお互い別れる気は絶対無いって確信してたから…」
「 !!! 」
「みかげはオレと別れたかった?」
「……ううん……そんな事…思うわけ…」

そりゃ…ちょっとはもうこのままダメなのかなって思ったりもしたけど…
芫くんは少しも思わなかった…ってコト?

「なら…いいんじゃない?好きだよ…みかげ…これからも…すっと好きだ…」

「……私も…好き…これからも…ずっと……」

そう言ってまた触れるだけのキスをした…

「ちょっと……泣いても…いい?」
「いいけど…うれし泣き?」
「……うん…ひっく…」
いい終わらないうちに涙が零れちゃった…
「なら…いいよ…」


そう言って芫くんは私の頭をそっと引き寄せて自分の胸と腕で包んでくれた…


「また…オレの腕の中に落ちて来てくれたんだな……」

私を抱きしめながら優しくそんな事を呟く…

「……うん…絶対受け止めてくれるって…信じてたから……」



好きな人とでも…ときどきこんな風に悩んだり…喧嘩したりするんだ…

私は芫くんの事がすごく好きなのに…遠慮して…素直になれない所もある……

きっと本当は2人共もう少し勇気を出せば…もっと早くこんな風に仲直り出来たはずなのに…

いくら好きな相手でも人と付き合うことは難しいのかも…

でも…私も芫くんと同じで…芫くんなら…そんな風に思わないで過ごせるのかも…


「なあ…みかげ…」

「ん?」

芫くんの胸と腕にぬくぬくしてた私に芫くんが遠慮がちに声を掛ける。




「 2人の初めてやり直したいんだけど。 」

       「 え !? 」