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「え?ここで?」
「そう。」

芫くんが慣れた足取りでスタスタと建物の中に入って行く。
私は手を繋いでるから必然的に引っ張られて芫くんの後をついて行く……

土曜日の午後…昨日1週間ぶりに仲直りして約束通り……
2人の初めてをやり直す事になったんだけど…今入った建物は…どうみても…ラブホテル…
お兄ちゃんに知れたら卒倒モノだよね…でもなんで?

「みかげどの部屋がいい?」
「えっっ!?」
「明るい所が空いてる部屋だから。」
「………」
言われて壁に掛かるパネルを見るといくつかに区切られた部屋の写真…
「電気の点いてない部屋は?」
「使用中。」
「使用中?って……」

「してる真っ最中!」

「!!!」

ボワンと一瞬でみかげの顔が真っ赤になった。

「………」

「何真っ赤になってんだよ。オレ達だってこれから……」

更に真っ赤になったからそれ以上は言うのは止めた。



「どこがいい?」

「え?私が決めるの?」
「みかげに決めて欲しい。」
「何だか芫くんってあんまり自分で決めないよね?」
「オレが考えるととんでもない事決める確率が高いから。」
「え?」

「初デートだってオレが決めてたらココだった。」

「え?!」

「部屋もここ。」
「!!!」
指差した写真は真っ赤かのかなり怪しい部屋!!
「もう…」
ホントかな?

「 もっと大事な事を決める時はオレがちゃんと決める。 」

「……じゃ…じゃあ……」

私はノーマルな部屋を選んだ。



「わあ…綺麗……」

ノーマルな部屋だけど大きなベッドにソファにテレビに…
「わあ…広い浴室…ん?芫くん!」
「ん?」
「見て!浴室の壁がガラス張りになってる!!これじゃそっちから見えちゃう!!」
「ああ…見る為にガラス張りになってるんだよ。」
「ええっっ!!ウソ……」

さっきからみかげの顔がコロコロ変わって面白い。

「芫くんは普通だね。来た事があるの?」
「何度か…」
「何度?」
「……何度か。」
目をつぶって顔を逸らした。
「………」
…仕方ないけど…さ…

「浴びてくれば?」
「え?ヤだ!」
「見ないよ。」
「ウソ!」
「本当。楽しみは後にとっとく。」
「………」
「ラブホテルなんて最初で最後かもしれないんだから入っとけば?」
「?」
「本当ならオレの部屋が良かったんだけど今日は快の彼女が来てて流石に無理だったから。」
「?」
「今日はこの前と違うから…みかげ……」
「??」

芫くんが意味ありげにニッコリと笑った。



「見てない!?見てないよね?」

「見てないって……」

芫くんはベッドの上で浴室とは反対の方を向いて横になってる。
だから私はシャワーを浴びながら監査の目を怠らない。

最初で最後って言う言葉に揺れたのもあるけど…
やっぱり身体は綺麗にしておきたかったから…

ほとんど初めての時と同じくらいのドキドキが…ずっと続いてる…


「こっ…これは…!!」


「ん?」
「着てみちゃった…」
「へえ…なかなか…」
「似合う?」

芫くんが横になってるベッドの脇に立ってエッヘン!ってポーズをした。
洗面所に置いてあった真っ白なバスローブ。

着てみました!

「だぶだぶ感が何とも…」
「もう!女優みたいだって言ってくれないの?」
自分としてはテレビドラマのワンシーンをイメージしたのに……
「え?そうだな…」

「!!」

芫くんが急に立ち上がって目の前に立った。

「!!」
私はびっくりで…

「さっきからはしゃいでどうした?緊張してる?」

「!!!」
バレた!
「だ…だって…」
「今日は痛くしないし辛くもさせないから…緊張すんな。」

「わっ!!」

言いながら私をお姫様抱っこで抱き上げてベッドに寝かせた…うー……ど…どうしよう……


「あ…あのさ!」
「ん?」
「こ…高校生がこんな所に来て…け…警察に捕まったりしないのかな?」
「しないよ。」
「じゃ…じゃあ……!!」

「シィ……」

芫くんの人差し指が私の唇にそっと触れて黙らされた。

「大丈夫だから。」
「……本…当?」
「本当。」

そう言って芫くんが優しく微笑んだ……




「…あっ…んっ…んっ……」

身体がとっても変……

「や…げ…んくん…やぁ……」

芫くんが唇と舌で私の身体を解してくれてる…
それがこの前とは比べものにならないくらいの優しい触れ具合で…

「はぁ…はぁ…ン…」

目をつぶったまま手探りで芫くんに手を伸ばしたらそっと手を絡ませて握ってくれた…

「みかげ……」

「ん…ぁ…」

耳元に囁かれて身体がピクンと跳ねた。



みかげの身体…今日はじっくりと目に焼き付けてる…
この前はそんな事すら気にせずにみかげを抱く事だけに気を取られてた…

攻めるだけ攻めて…みかげに辛い思いをさせた…

でも今日はそんな前の事は忘れさせてやる……


「あ……芫くん……」

みかげの右の胸に小さなホクロがあった…前の時は気付かなかった…

「こんな所にホクロがあるんだな…ちゅう ♪ 」

唇を強めに押し付けてちょっと吸った。

「ひゃ!!」
みかげの身体が驚くほど跳ねた。

「みかげ?」

「はぁ…はぁ…だ…め…身体が…勝手に…ンッ……」

芫くんの部屋じゃなくて良かった…だってこんなに恥ずかしい声が……

「みかげ…」

仰向けのみかげの身体に密着しながらみかげの唇まで這い上がった。
しっとりと濡れてる身体がオレの身体に密着してみかげの胸がオレの身体で押し上げられた。

「……ンアッ!!」

「こんなに…いい顔してたんだな…みかげ…」

「あっ…あっ…」

「声も……オレ…ホントにどうかしてた…」

「芫…くん…?あ!」

みかげの身体が緊張して力が入った。
オレがみかげの足の間に滑り込んで膝を立てさせたから…警戒してる…

「今日は大丈夫って言っただろ…力抜いて…」
「…はぁ…はぁ…うん…」

芫くんの言う通り身体から力を抜いて目をつぶった。



「……あ…」

あの時と同じ…熱いモノが身体に触れて……

「……ンア……あ…」

でもこの前みたいに一気に押し上げられる事はなくて…ゆっくり…優しく私を押し上げてくる…

前は痛かった圧迫感がゆっくりと私を刺激していく…だから…


「…は…ぁぁ……」

なんて声が漏れた…

「痛い?」

「……ううん…大丈夫…でも…まだ動かないで……」

自分の身体と頭で芫くんをしっかり感じとった……何度か深呼吸もした……

「もう…大丈夫…」

そう言って芫くんに微笑んだ。

「チュッ!」

触れるだけのキスをされて…それが合図だった……



「……ンッ!!…あっ!!」

激しさは…前と同じ…
最初は私に遠慮がちだった芫くんも私が慣れたのがわかると激しさが増した。

芫くんの身体が激しく動く度に私の身体もそれに合わせて揺り動かされる……

もう…ずっとそんな風に攻められて…頭の中がクラクラする…

でも…前と違うのは……芫くんが私を見ててくれてるって事……


「あの時も…ちゃんとみかげを抱いてた……でも…みかげを見てなかった……
だから今日はみかげの全部を見せて……」

「…げ…ん…くん…」

「全部……」
「……うん…」

恥ずかしいなんて気持ちは全然なかった…

どう動けばいいかなんて知らなかったけど…身体が反応するまま…

芫くんに抱かれるまま……自然に任せてた……



「はぁ…はぁ…みかげ…」

「……はぁ…はぁ…芫くん…」

2人ともクタクタで動けなくなったのは時計の針がここに来た時から2時間ほど進んだ頃だった…


「好き…」

「芫くん…」

「好きだ……」

ベッドに横になったまま私を後ろから抱きしめて言ってくれた…

「……うん…」
「身体大丈夫か?」
「…うん…ちょっと怠いだけ…体育だってこんなに運動しないもん…」
「あのな…みかげ…」
「ん?」

「こんな時に体育の話しなんて比較に出すなよ…現実に引き戻される…」

「だって……」

「もう少しこのラブラブな余韻に浸ってたいんだけど……」
「でも…時間とか…平気なの?」
「みかげ!」
「?」

まったく…みかげはこう言う雰囲気が理解出来てない……

これだけは教育が必要なのか……


「今度は一緒にシャワー浴びるか?」

「え″っっ!!」

「何で明らかに嫌がるんだよ。時間気にしてるんなら2人で入った方が早いだろ。」
「そうだけど…恥ずかしい!!」
「ガキの頃は兄貴とだって入った事あるだろ?同じだろ?」
「いつの話ししてるの?ホントに小さな頃だよ!それにお兄ちゃんと芫くんじゃ違うもん!」

「!!!」

「?どうしたの?」

「……いや…」


自分で言いながらみかげが兄貴と一緒に風呂に入ってるのを想像して何だかムカついた!

バカだ…オレ…




「ちょっ…もうくすぐったいってば…芫くん…あ…」

お互い正面は向かないって約束で一緒にシャワーを浴びてる…
ほとんど強引にみかげの手を引っ張って浴室に連れて来た。

今までなら浴室だってシャワー浴びながらだってやりまくってたけど…
みかげ相手じゃそうもいかず…後ろから抱きたい衝動を必死に抑えた。

だから胸を触るくらい許して欲しいんだけど…

みかげがそんな事に気が廻る筈も無く…もの凄く邪険にされてるオレ。


「ホント…逆に2人で入った方が時間掛かる!!」
「みかげ…」
「なに?そんな声出したって…」
溜息混じりに私の名前を呼んだ。

「2人でシャワーなんてもう当分無いんだぞ?
ホテルに来る以外あり得ないんだからな…わかってるか?」

「恥ずかしいから私はそれでもいいもん!!!早く出ようよ!!芫くん先に出てね。」

「 ………… 」

ホントみかげってば……

「 !!! 」
「抱きしめるくらいいいだろ?」
後ろからみかげの胸の前で交差するように腕を絡めた。
「…………」
振りほどかれないのが返事だ。

肩越しからみかげの身体を見下ろした…
かなり大きいとは言えないが小さくも無いみかげの胸が見えた…

色白で…ズベズベな肌で…柔らかい……

「芫くん…」
「ん?」
「私達が結婚するまでって…すごく長いよね…ずっと先…」
「……そうだな…」
「…その時までずっと一緒にいれるかな…」
何気にみかげがオレに体重を掛けて寄り掛かる…
だからオレはしっかりとみかげを受け止める。
「いれるよ…きっと…」
「そうだよね…きっとそんな日が来るんだよね…」
「ああ……」
「芫くん…」
「ん?」

「あ…熱くて…クラクラする……」
「え?うそだろっ?!大丈夫か?」
「ちょっと…辛い…」


どうやら極度の緊張と疲れとシャワーの熱でみかげが湯中りしたらしい!!!

速攻上がってみかげの頭を冷やす。



「ごめんなさい…でも今回は半分は芫くんの責任でもあるんだからね…」

ちょっと不貞腐れた顔が可愛い。

「反省してるから…気分良くなったら帰ろう。」
「うん……」

「………また記念のデートが看病か…」

「それを言わないで!!!もう芫くんの意地悪!!」



今までのただ身体を重ねた相手とは違うみかげとの行為は…

オレにとって新鮮で色々な事を教えてくれる……

優しくする事…気を使ってあげる事…相手の気持ちを考える事……

今までの相手には思いもしなかった事ばっかりだ……


「みかげ…」

「ん?」


「好きだよ…」


そう言って…

横になってるみかげの淡いピンク色の唇にそっとキスをした………