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快 (kai) : 東雲家の長男で人気小説家。來海を溺愛。
來 海(kurumi): 快の元担当編集者。快と結婚。
悠 (yuu) : 東雲家の次男でホスト。
「も…快さん…ダメです…やめ…あ…」
「快さんじゃないだろ? 『 あなた 』 だって何度言えばわかる?來海…」
「だって…恥ずかしいし…ちょっと…やりにくいから…少し離れて!」
「新妻の手伝いしてやってるんだろうが。優しい旦那様に感謝しても邪険にされる覚えはねぇな…」
「だって…や…」
朝食の支度の最中なのに…快さんの両腕が私の身体に絡み付く…
啄む様なキスを唇…頬…耳たぶにプレゼントされる。
「あん……」
首筋に快さんのキスが…
「毎朝毎朝イチャイチャベタベタ…飽きないな!ヤリたいなら自分達の部屋行ってヤレ!
サービスでオレ達に見せるつもりなら別だけど?おはようお姉様 ♪ エロ兄貴!」
「きゃっ!お…おはようございます…悠さん!」
両手で私に引っ付いてる快さんを押しのけて義理の弟の悠さんに朝の挨拶。
「仲睦まじい兄貴夫婦を見せてやってんだろうが。愛情に飢えてる弟にな!」
「間に合ってるっての。大体何で此処で暮らしてんだよ?
2人でマンションでも借りて住めばいいのに。」
「親父の代わりに家を守るのは長男の役目だろうが!」
「ったく…その親父の建てた家をしっかりリホームしやがって…いいのかよ!」
「ちゃんと親父には了承得てる。それにこの家の維持費やら光熱費やら全部オレが
払ってるんだから文句もあるまい。しかもオレの愛妻の手料理まで食わせてやってるのに
文句があるのか悠?」
「無いですよぉ〜他にもイイもん聞かせてもらってるし ♪ 」
悠さんがニッコリ笑ってそんな事を言うんだけど…
「いいもん?」
何の事かしら?
「芫は?」
「まだ寝てんじゃね?」
「ったく夏休みだからって弛みやがって!」
「あ…でも快さん…芫君毎日予備校で帰って来た後も遅くまで勉強してるみたいですよ。
遊んでる訳じゃないんだから…」
そう…芫君頑張ってるのよね。
彼女の為らしいから何だか可愛いじゃないのよ ♪
「來海が作った朝飯が冷める。オイ悠!起こしてこい!」
「ああ?何で野郎の寝起き見なきゃいけねぇんだよ!ヤダね!」
「ああ?口答えか?悠…いい根性じゃねぇか?」
「ちょっ…快さん!そんな事で怒らないで!私が起こして来ますから!」
顔を会わせれば喧嘩ばっかりなんだから…
「でも芫君はあんまり2人と揉めないのよね…」
階段を上がりながらそんな事を呟いた。
コンコン!
「芫君!おはよう。朝ごはん出来たから起きなさいって快さんが呼んでるから…」
シ ー ン …………
やっぱり遅くまで起きてるから朝辛いと思うのよね…
快さんってば何だか妙に私に気を使ってくれて食事は必ず出来立てを食べさせようとする…
「芫君?」
更に彼の部屋のドアを控え目に叩いた。
「……ん…わかった……」
中から芫君の寝起きの声がした。
「じゃ下りて来てね。」
「………」
とりあえず返事だけはした。
「うう……寝みぃ…」
毎朝毎朝朝ごはんの時間に起こされる…お陰でオレの睡眠時間は3時間だ…
ボテッっとそのまま布団に倒れ込んだ。
寝れる…今ならこのまま寝れる………
「はっ!」
ガバッ!っと跳び起きた。
「ヤベェ…また寝る所だった…」
「ああ?何だその間抜けな面は?顔洗ったのか?」
「……洗ったよ……」
「快さん…芫君は疲れてるんだから別に無理に起こさなくても…」
「どうせ來海が出掛けたらすぐ起きなきゃいけねぇんだから同じ事だ。
あったかい飯食えるんだから今起きた方が良いに決まってんだろ!」
「でも…」
「大丈夫だから…オレも助かってるし快の言う通り起きなきゃいけないから…」
「そうならいいけど…」
確かに助かってる…きっと1人じゃ起きられないし朝メシは抜きだ。
「じゃあ行ってきます。」
「ああ。」
「あ!快さん…」
「毎朝の事なんだからいい加減抵抗すんな!」
「でも……んっ…んん……あん…ちゅっ…」
「浮気すんなよ…來海…」
「するわけ…無いでしょ…もう……ンア…」
「寂しくなったら指輪見てオレを思い出せ……」
「淋しくなんて…なら…ない……」
快さんの唇が私の首筋を滑って行く…
腰に腕が廻されて…快さんの片手はしっかりと私の身体を撫で上げて…
今は服の上から優しく胸を揉まれてる……
もう…毎朝こんなんでこの時間を入れて出掛ける時間を考えてる……
「快さん……時間……電車…乗れなくなっちゃう…から…もう……」
「仕方ねぇな……ちゅっ…気をつけてな…」
「……はい……ちゅっ…」
「ったく…毎朝毎朝…ディープないってらしゃいのキスだよな。」
「快は彼女の事溺愛だからな…」
リビングにいても2人の朝の玄関での儀式が聞えてくる…そう…すでにアレは儀式だ。
まあ…でも3年掛かってやっと手に入れた相手だもんな…あの快が…だ!
溺愛も溺愛…良く今ま自由にさせてたもんだ…
「でも… 『 あの時 』 の來海ちゃんの声…なかなか悩ましいんだよなぁ〜役得!役得!」
「快にバレたら殺されるぞ。」
オレは用意された朝食の味噌汁を啜りながら悠に忠告だ。
確かに…同じ2階に寝室がある快達の夜のあの声が聞こうとしなくても耳に入ってくる。
多分彼女本人もまさかオレ達に聞かれてるなんて思っても無いだろうな…
ただ…相手が快じゃ声を我慢しろってのが無理な話で…
本当は気をつけてやらなきゃいけないのは快の方だと思うのに…
当の快はワザとオレ達に聞かせてるんじゃないかと思ってるのはオレも悠も同じだ。
幸せの押し売り…いや…形を変えたノロケか?
「…ウマ…」
何だかんだ良いながら快の嫁さんが作る料理は美味しい。
母親が長い事いないからこんな手料理久しぶりだ。
時々快や悠が気が向くと男料理を作ってたがオレは全く作れないから
殆んどが出来あいの物や弁当買ったりとかで済ませてた。
「來海の料理は美味いだろ。」
「ああ…」
「何バカって言うんだお前は?嫁さんにベタ惚れだな。」
「可愛くて仕方ねぇ…やっと手に入れた…3年だぞ…3年…」
「結構東雲家の男は一途なんだよな…チャラチャラしてるわりには…
そう言や芫?みかげちゃんはどうした?会ってんのか?」
「ここ最近会ってない…会う時間が無い!」
「はぁ〜〜受験生は大変だな〜恋愛もオアズケか?欲求不満なんじゃね?
毎晩來海ちゃんの悩ましい声聞いてさ!」
「はぁ〜?どう言う意味だ?悠…テメェ盗聴でもしてんのか?」
「そんな事するか!そんな事しなくても聞えて来るんだよ!この絶倫のケダモノがっ!
自分がいつも何してるか自覚無いのか?」
「來海は感じやすいからな…それに早く子供が欲しい。
妊娠すりゃあ仕事辞めるか育児休暇の間はオレの傍にいる。」
「かー歪んだ愛情だよな…相変わらず…」
「子供が出来たら全ての愛情をオレの子供に注ぎ込め!わかったか?オジサマ!」
「なら俺が色々あんな事やこんな事まで教えてやる。」
「良い度胸だな…悠…ふふ…」
笑いの間に指を解す音が聞える…
「イヤだなぁ…お兄様ってば…ははは…」
悠が後ろに逃げた…