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「これで大丈夫かな…買い忘れ無いよね…」
そんな独り言をブツブツと言いながら隣の駅にある大型のショッピングモールを後にした。
今日は新しい洋服と……下着を買いに来た。
だって…1週間後には芫くんとの久しぶりのデートなんだもん ♪
しかも……その時は…
「いやぁ〜〜〜恥ずかしい……」
なんて1人でバカをやってた…
「吉泉!?」
「え?」
呼ばれた方を振り向くとコンビニの店員さんが私を見てた…この人が呼び止めたの?
「やっぱ吉泉だ!俺だよ俺!大野!忘れちゃったのか?」
「え?大野君?」
良く見ると…髪の色もちがくて…
「コンビニの制服着てるからわからなかったよ…それに髪の毛の色も。」
「夏休みの間だけな。ちょっと冒険!元気だった?」
「うん。」
大野君は前の高校の時のクラスメイト。
そんなに仲が良かったとは言えないけど時々話したりはした…
ごく普通の男の子だったのに今はちょっと明るめの茶色い髪の毛で
髪型も前と違ってたからきづかなかった。
「ここでバイトしてるの?」
「ああ…まだ始めて2週間だけどな。吉泉は…買い物か?」
「え?あ…うん…」
私の買い物の袋を見てそう言われた…直ぐ目の前にそのお店があるんだから当たり前だよね…
「この辺住んでんの?」
「ううん…駅1つ先に行った所…今日は買い物でここに…」
「そっか…」
「大野君は?何でここで働いてるの?」
「俺も引っ越してさ…まさか吉泉の近くとは思わなかったけど…皆会いたがってたぞ。」
「え?そう?女子とは時々メールくらいはやり取りしてるんだけどね…」
「そっか…あ!今度落ち着いて会わね?何か懐かしいじゃん。」
「あ…でも…」
「前の学校のダチも呼んでさ。今時間無いから後で連絡するからさ。携帯持ってるだろ?」
「え?あ…うん…」
「ほら出して!通信でチャチャッと…さ ♪ 」
「…………」
何だか断るのも変で…大野君が仕事中って言うのもあって
成り行きでお互いの電話番号を交換してしまった…
ちょっとドキドキしてる…大丈夫だった…かな…?
お兄ちゃんに簡単に携帯の番号は教えるなって…言われてたのに…
それに…芫くんに知られたら…大丈夫なのかな?
「じゃあ夜にでも電話するから。またな!吉泉。」
「うん……」
何だか…いけない事…したのかな…?私……
その日の夜の9時過ぎに本当に大野君から電話があった。
芫くんとも電話のやり取りしてないのに…何だかとっても気が重くて…罪悪感…
って元クラスメイトなんだから…普通に。
「はい…」
『吉泉?』
「うん…」
『早速なんだけどさ前の学校の連中に連絡取ったら何人か集まれるって言うから
吉泉も女子に連絡取って集まろう。』
「うん…」
『じゃ決まったら連絡くれな。』
たったそれだけの会話だったけど…初めて携帯で芫くん以外の男の人と喋っちゃった…
♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪
いきなり携帯が鳴ってびっくり!
「誰?って…げげげ芫くん!!!」
相手の名前を見て驚いた。
どうして?何で?私が他の男子と話したのがわかっちゃった?
電話を切ってから5分もしないうちに掛かって来たから…
って早く出なきゃ…
「もも…もしもし?」
『みかげ?オレ…』
「どど…どうしたの?」
って…私何言ってるの?芫くんからの電話…嬉しいくせに!!
『今都合悪い?』
「ううん…大丈夫。」
『…あのさ…』
「うん…」
『夏期講習の後のデート…日にち延ばすから…』
「え?」
『今日話があって講習の終わった次の日にここの実力テストあるんだ…
講習受けた奴も受けれるって言うから…オレ受けようと思ってさ…
みかげの兄貴も受けるって言うし…』
「え…」
『会う日1日延ばせないか?』
「無理だよ…だって次の日から家族で出掛けるし…
親戚の法事も兼ねてるから3日間は帰ってこれない…」
『だよな…』
だからその前に会おうって…言ってたんだもん…
『仕方ない…みかげが帰って来てからだな…』
「うん…そうだね…」
ああ…本当はその前に会いたかったのにな…
『みかげ?』
「ん?」
『大丈夫か?』
「大丈夫だよ…子供じゃあるまいし…我慢できるもん。」
『もしかしてオレに会いたかった?』
「だから子供じゃ無いってば!」
嘘だよ…本当は芫くんに会いたかった…何だか…今は特に…
『ちょっと先に延びただけだ…この埋め合わせは身体で払うから。』
「もう!変な事言わなくていいから!」
『本当にごめんな…みかげ…』
「仕方ないよ…それに芫くん遊んでるわけじゃ無いんだし…これも2人の将来の為だもん。」
『ああ…そうだよな……みかげ…』
「ん?」
『好きだよ…オレはみかげだけが好きだから…』
「うん…私も芫くんの事だけが好き…」
『じゃあまた連絡する…』
「帰ったら今度は私から電話するね。」
『ああ…切るぞ。』
「うん…」
そう言うと何も沈黙も無いまま通話が切れる…
携帯の向こうからはもう切れてます!を知らせるツーツーと言う音だけが響いてる…
私と芫くんは会いたい気持ちを断ち切る様にすぐに電話を切る…
だって…そうしないといつまでたってもお互いに切れなくなっちゃうから……
やっぱり…電話は嫌い……
こんなにも芫くんに会いたくなっちゃったから……
芫くんも…私に会いたくなったって…思ってくれたかな……