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「よう!」

「!!」

「お帰り!お疲れ ♪ 」
「東雲…君…」
「お帰りなさい。お兄ちゃん!」
「ただいま……」

みかげと2人兄貴の事を出迎えてやった。
オレを認識した途端露骨にやな顔された…でも今のオレにはそんなのどって事無い。

「どうだった?告られたか?」
「……君の差し金か?」
「まさか!ただの物好きだろ?」
「………」
「え?何?お兄ちゃん告白されたの?」
「え?いや…そう言うわけじゃ…」
「嘘つけ!」

オレはニヤニヤ笑いが止まらない。

「あなた達そんな所で話してないでこっちで話せば?」

玄関で立ち話してるオレ達に向かってみかげの母親がリビングから顔だけ出した。

「いや…もう帰るって。」
「お邪魔しました。」
「あら…そう?」
「時間考えろよ…」
超ムッとした顔で言われた。
「今日は特別 ♪ みかげそこの角まで送って ♪ 」
「うん…そこの角までなら良いでしょ?お兄ちゃん…」
「そこまでだよ。」
「うん。」
「じゃあな。モテ男 ♪ 」
「ふざけるな!」



「もうお兄ちゃんの事からかわないで!」

外に出た途端みかげがオレにお説教だ。

「何で?兄妹愛?」
「違う!これから先芫くんに会うのが大変になるでしょ!」
「………ホント口煩い保護者だよな。みかげの兄貴は…」
「じゃあもう私の事諦める?」
「まさか!障害がある方が燃える!」
「本当?」
「本当。じゃあ今度はみかげが帰って来たらゆっくりとデートだからな。」
「うん!」
「約束忘れるなよ。」
「……うん…」


確かホテルに行くって言う…あの約束の事だよね……ちょっとプレッシャーだけど…

でも出掛ける前に芫くんに会えて良かった…

芫くんがニッコリと笑う…いつもの…優しい笑顔…


「芫くん…」
「好きだよ…みかげ…会えない時もオレはみかげの事が好きだから…」
「うん…」

私はちょっとだけ背伸びをして…
家の近くの曲がり角で…また…芫くんとキスをした……


     芫くん……大好き…




「あ!え?花咲?」
「げ!東雲!」

次の日予備校で会った花咲に驚いた。
髪の毛真っ黒の化粧無しのピアスが1個に減ってる!

「お前どうした?」
「ウルッサイわね!」
「え?あ!吉泉か?」
「ぐっ!」
「へえ〜何?付き合うのか?」
「ちっ…違うよ!まずは見かけから直した方がいいんじゃないかって…」
「何?アイツの言う事聞くんだ?」
「べ…別にそう言うわけじゃ無いけど…吉泉はあーゆーチャラチャラしたの
あんまり好きじゃないかなって思ったから…」
「ふーん…そんなに好きなんだ?」

「好きって言うか…イイ奴だなって言うか…この前ここの帰りに電車で酔っ払いに絡まれてさ…
文句言ってもしつこく絡んで来て…周りの奴等も見て見ない振りで困ってたら…
吉泉が助けてくれてさ…」

「ふーん…惚れたんだ。」
「だから違うって言ってんだろ!イイ奴だって!」
「まあオレには関係無いけど…でもアイツと付き合うの大変だぞ。」
「何でよ?確かに真面目そうだけど学校じゃ結構女子に人気あんだよ。」

「違くてさ…アイツ極度の 『 シスコン 』 だぞ!」

「 え″っ!? 」

「だ・れ・が・シスコンだって?」

「あ!」
「お!」

すぐ後ろに引き攣った顔の吉泉が立ってた。

「変な事言い触らすなよ!」
「は?本当の事だろ?お兄様 ♪ 」
「君にお兄様なんて呼ばれたく無いよ。」
「諦めろ!4年後には現実だ。」

「………最悪だ…」




それからは殆どの月日が勉強に費やされた。
いくら飲み込みが良くても一夜漬けで受かるはずなんて無いから地道にやるしかない。

みかげはそんなオレに付き合って放課後の図書室や休日の図書館やら全部に付き合ってくれた。

部屋での勉強も何が楽しいのかずっとオレに付き合って…
勝手に私物を持ち込んでオレの部屋で寛いでた。

自分の勉強をしたり時々オレの為にワザと質問したり…
何度かそこまで付き合わなくて良いって言ったら…

『 これが楽しい ♪ 』 と言った。

オレとしてはいつも傍にみかげがいてくれて嬉しかったし…何気に勉強もはかどった。
多分会えなくて感じる余計な心配をしなくて良かったせいか…
それにみかげを抱きたい時にいつでもみかげを抱けたからオレは大満足だった。

何となくみかげが気を使ってくれてた様な気がしたがオレはあえてそんなみかげに便乗した。

2人で過ごす高校生活は確実に少なくなってるし…オレも段々余裕が無くなって来たし…

慌ただしくクリスマスも正月も過ぎて行く…



「何だか私の方がドキドキしてきちゃった…」

試験の前日…みかげが本当に落ち着きの無い顔でそんな事を言う…

「みかげが慌ててくれるからオレは逆に落ち着ける。」
「あ!なあに?それ!ヒドイ!心配してあげてるのに!」


そんなみかげを見てオレは自分を保ってる…

落ちたら…目もあてられない…

みかげのがっかりする顔は…出来れば見たくないもんな…



そんな気持ちなんてお構いなしに日付は替わる…