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「芫く〜ん ♪ 」
「みかげ…」

みかげが手を振ってオレ目掛けて走って来る。

「卒業おめでとう!」
「今日何度言うつもりだよ。」
「いいじゃない!おめでたい事なんだから!」

3月の初め…まだ寒さが厳しい中オレ達の卒業式が行われた…

「お!みかげちゃん ♪ 相変わらず可愛いね ♪ 」
「当たり前の事言うな!」
「まったくお惚気野郎が!」
「2人の将来に向かってまっしぐらか?」
「良く受かったよな…あの大学!」
「どんだけ勉強したと思ってんだよ!夏休みだって冬休みだって正月も犠牲にしたんだぞ。」
「ウソつけ!ずっとみかげちゃん膝抱っこで勉強してたんだろーが!」
「何で知ってんだ?」
「も…芫くん!そんな事してないでしょ!」
「焦っちゃって可愛いなぁ〜」
「……うぅ…」
「からかうなよ!」
「あ!」
ジタバタするみかげを後ろから抱きしめた。皆の前で。

仲間内でオレと高野以外は皆就職やフリーターだ…
まあ落第も退学もせず卒業できただけでも驚きだけど…

「や…ちょっと芫くん…」
「まったくここでイチャイチャできんのも今日までだな…」
「オレ達はどこでもイチャイチャできる!」
「もう!またそうやって変な事言わないで!」
「でもなぁ〜今度は四六時中みかげちゃんを見張ってる事も出来なくなるな〜」
「まあな…」
「まあその辺は後輩共に言っといたから何かあれば連絡入る。」
「え?」
「お前等の後輩じゃあてになんねぇな…」
「失礼な事言うなよな…まったく…」
「…………」

こんな他愛も無いコイツ等とのジャレ合いも今日で最後か…

「あ!そうだ!お前等ちゃんと払えよ!」

高野がオレ以外の連中に向かってそう言うと手を差し出す。

「チェ!覚えてやがったか…」
「当たり前だ!」
「ん?」
「賭けだよ!覚えてねぇ?芫!」
ワケが判らない顔してるオレに高野が振り向いてそう言った。
「え?………ああ!あん時の?」

そう言えばオレがみかげと付き合いだした頃いつまで持つかコイツ等賭けしてたんだっけ!

「俺だけが卒業までって言ったからな ♪ 」
「までじゃねーだろ!」
「これから先は未知の世界だろ?わかんねーぞいつ愛想つかされるか。」
「んな事無いって!」

縁起でも無い事言うな!




「皆いい人達だね…」

昔あの人達に助けてもらった事があったから…

「オフザケ野郎達だけどな…色々つるんで遊んだな…」

オレとみかげは誰もいなくなった校舎を2人である場所目指して歩いてる。

「楽しかった?」
「まあ…それなりに…な…」
「怪しい〜」
「だから昔で色々だって…」
「ふふ…」


みかげがニコニコ笑って先に行く…そして立ち止まったのは…

オレとみかげが初めて出会った場所…


「ここで初めて芫くんに会ったんだよね…」

言いながらみかげが階段の途中まで昇って振り向いた。

「みかげは気を失っててオレと初対面は保健室のベッドの中だったけどな。」
「びっくりしたんだから!目が覚めたらいきなりキスされてたんだよ!」
「みかげの寝顔に負けた。」
「だからって初対面の女の子の唇奪わないでしょ!」
「みかげは特別だったんだよ。」
「なんか強引な理由!」

「みかげ…」

「ん?」

「来い!」

「芫くん…」

見れば芫くんが階段の下で私に向かって両手を広げて待っててくれる…

「うん!」

私は芫くんを信じて…思いきりジャンプして…芫くんの腕の中に飛び込んだ!!

「…っと!」

ちょっとヨロめいたけど芫くんはしっかりと私を抱き留めてくれた…

「オレはいつでもみかげを受け止めてやるから…」
「うん…」
「だから…オレの腕の中からいなくなったりするなよ…」
「うん…」

私は芫くんの首に腕を廻してギュッっと抱きしめた。

「……ん…」

そんな私に芫くんがそっとキスしてくれた…

「ふふ……」

離れた後私はナゼか笑い出す…

「何で笑うんだよ?」
「わかんないけど…何だか嬉しいの…今度からここには芫くんいないのに…」
「浮気すんなよ…」
「浮気なんてしないもん!芫くんこそ大学で綺麗な人沢山いるんだから誘惑されないでよ!」
「いつも頭の中にみかげを想像してる。特にベッドの中での…」
「もうイヤらしいんだから!」
「みかげ…」
「ん?」
「このまま保健室行こうか?あの時みたいにオレが抱き上げたまま。」
「誰かに見られちゃうよ…」
「平気だって…今日は誰もいない…卒業式だってとっくに終わってるし…」
「……そこで…イヤらしい事しないでよ…」

流石に学校でそこまでの事は出来ない…でも…強引に芫くんに迫られたら自信が無い…

「わかった…じゃあキスだけ ♪ 」
「本当?」
「あの時と同じ様に……」
「……うん…」
「随分聞き分けがいいな…みかげ?」
「だって卒業式だもん…それに……芫くんとここで過ごす最後の時間だから…」
「ありがと ♪ みかげ…」


芫くんはそう言うとニッコリ笑って保健室に向かって歩き出した…

その後…誘惑に負けて…芫くんにされるがままになったかどうかは…ヒ・ミ・ツ・♪