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「げんちゃんステキ ♪ おうじさまみたい ♪ 」

「サンキュー ♪ 那美」

7月の初め…梅雨明け前の日曜日…
普段の行いがいいからかどっちかが晴れ男か晴れ女なのか…
いつもは雨の週末が昨日から晴れ続けてる。

とんでもなく結婚式日和だ。

そう言えばみかげが晴れ女だったか?
初デートの時そう言ってた気がする……


「快は?那美…」
「あっち…ママのところ。棹(たく)がにげた。」
「逃げた?ったく…相変わらず棹は好奇心旺盛だな…」

オレは自分の姿を鏡で確かめて新郎控室の入口のドアを見つめた。

「那美はそこにいろ。お前まで迷子になったら面倒だから。」
「うん……でもさぁげんちゃん。」
「ん?」
「かげちゃんはおひめさまみたいになってるの?」
「ああ…なってると思うけど。」
「なみはやくみたいな…」
「オレだって見たいの我慢してんだぞ那美!だから那美も我慢な。」
「えー!」


高校を卒業して6年…
建築関係の大学に入って無事に4年で卒業した後就職して今は一級建築士目指して
経験を積んでる真っ最中だ。

本当なら大学卒業と同時に結婚するはずだったがみかげが大学に在学中だったのと
オレが就職したてで一級建築士を目指すには2年は会社で経験積まないと駄目だったし
みかげの兄貴と快の奴に中途半端だと一喝されみかげの卒業を待って今日になった。

それまでの6年の間に快の所には子供が2人生まれた。

『 那美(nami) 』 に 『 棹(taku) 』 4歳と2歳。

違う意味で2人ともそれぞれ生意気盛りだ。
当然の事ながら快の奴は那美には甘く棹には厳しい。
まあオレも悠も通った道だ。頑張れ棹!

悠の奴は去年オレ達が驚く程の素朴な普通な女と結婚した。
ホストは大分前に辞めて仲間とカフェバーを経営してる。
相手は花屋を経営してて悠の店にはそこの花屋の花が飾られてる。


「芫クン!!」
「輅!!」

一番のやかましい奴が来た。

「みーくん!」
「あ!那美!おひさ〜 ♪ 」
「おひさ〜 ♪ 」
「変な挨拶覚えさせるなよ。」
「本当に結婚すんの?」
「は?」
「止めるなら今だよ。」
「アホか!誰が止めるか!親父達は?」
「あっちで先方の親と話してる。」
「そっか…」
「あ〜あ…ついに芫クンが結婚かぁ〜………でもさ…」
「ん?」
「カッコイイよ ♪ 芫クン ♪ 」
「サンキュー!」

今日のオレは何に対しても寛大でいられる…





みかげが父親に付き添われオレの方に歩いてくる…
顔はベールに包まれてはっきりとは見えないがきっと微笑んでるはず…

父親の手からオレにみかげの手が渡された…

オレの隣に真っ白なウエディングドレス姿のみかげが立ってる…

本当は今すぐオレの腕に抱きしめて…オレがどれだけ嬉しいかみかげに教えてやりたい…
でも…今は我慢して…後でゆっくりと教えてやろう……

オレはみかげにニッコリと笑いかける…
ベールに隠れてるみかげの顔がオレの方を見上げる…きっと微笑んでる…

あの時オレがあの場所にいなかったら…みかげがオレの腕の中に落ちて来なかったら…
あの出会いは無かったんだよな…

だから…あの出会いは奇跡に近かったんだよな…みかげ…





ついにこの日がやって来た!
あれから6年…あっという間と言えばあっという間だったけど本当に結婚するんだ…

私の隣には芫くんがいる…

高校の時よりずっと大人っぽくなって…男らしくなって…カッコ良くなって……

私…幸せ ♪

あの時私は何もわからずに芫くんの腕の中に落ちた…
もし芫くんがいなかったら私は大変な事になってた…
もしかしたら死んじゃってたかもしれない…

でもそんな物凄い時に物凄い確率で私は芫くんと出会った…

芫くんはずっと私を受け止めてくれるって言ってくれた…

だから私は芫くんを信じていく…


私!吉泉みかげは今日!

芫くんのもとにお嫁に行きます!!