02





「飼われに来てやったぞ。」

「は?」


夕飯を済ませてシャワーも浴びて寛いでたら玄関のチャイムが鳴った。
玄関のドアを開けるとオレよりかなり背の高い男の人が立ってた。
フードを被っててサングラスかけてて目は見えない…大きめなコート着てて…怪しさ100%!!!

「ど…どちら様?」
恐る恐る上目使いに聞いた。
「ああ?自分で決めたくせにわからないのか?」
「え?自分でって?」

「どけ!」

そう言ってずかずかと玄関に上がって来た。
「ちょっと……」
何この人…?

「チッ!狭い部屋だな!」

「はあ?」
部屋の中を見回して…舌打ち?そりゃ2DKだけど…
「ああ?なんだこりゃ!!狭っ!!」
今度はユニットバスのお風呂を見てまた文句を言ってる。
「寝室どこだ?」
「え?あ…そこ…ってちょっと!!!」

ホント一体何!?
バタンと勢い良く寝室のドアが開けられた。

「なんだ?このちゃっちいベッドは!?ハリボテか?」

「は!?」

ド カ ッ !!

「こんなベッドじゃちょっと激しくしたら壊れんじゃねーの?」

ベッドに足をドカッと乗せてそんな事を言ってる…激しくって何を!?

「ちょっとホント君一体さっきから何?出てって!!じゃないと警察呼ぶよ!!って聞いてんの?」

いつの間にか携帯取り出して掛けてる!

「ああ?だから自分から飼うって言ったんだろうが!大学で話聞いたんだろ!」
「え?」
大学??

「………ええっっ!!き…君が!?」

あの真鍋教授が言ってた半獣?
あれから1週間経ってたから記憶の片隅に残ってたくらいだった…

「チッ!やっと分かったか!鈍い奴!!」
「ええーーーー!!!!ホントに?だ…だってこんな大人…」
「いい加減受け入れろ。ああ…オレだ!どっか部屋探せ!オレが気に入る場所だぞ……
ああそこなら良い…じゃあ今すぐ引っ越す!じゃあな!」
思わずそんなやり取りを呆然と見てた。
「何ボケッと見てんだよ。行くぞ!」

携帯をしまいながらオレに向かってそんな事を言う。

「行く?行くって何処に?」

もう訳分かんない!!??

「こんな狭っちい部屋で暮らせるかっ!オレに相応しい部屋に引っ越す!」
「は?オレも?」

何だかもっと訳分かんなくて目が点なんですけど………?

「当たり前だろ?お前はオレの飼い主なんだから。」
「か…飼い主?」

どうみてもそっちの方が飼い主みたいなんだけど……

「ちょっ…ちょっとストップ!!急にそんな事言われても困る…」
「ああ?口答えなんて許さない。」
「ええっっ!なんで?こっちが飼い主なんでしょ?だったら言う事…」
「オレに命令なんて100年早い!」
「はあ?」
「つべこべ言わずに黙ってついてくりゃいいんだよ!」
「わっ!!ちょっ……!!!」

ガバッと肩に担ぎ上げられた!

「やめ…!下ろして!!」

連れてかれる!!

「お前に白羽の矢が当たっんだ。おめでとう!」

「はあ?ちょっ… いやだぁーーーーー!! 離してっっ!!」

ドサッとスポーツカーの助手席に放り込まれた。
しかも頭から!だからもがいてるうちに彼がさっさと運転席に座って車が走り出す。
逃げる暇も無くて助手席に座った時はもう飛び降りる事も出来ない速さで走ってる。

「ちょっと何処に連れてく気?」
「言っただろ?新しい部屋だよ。」
「新しいって…こっちの気持ち無視?大体ホントに君あの真鍋教授が言ってた半獣なの?」
「ん!」
バサリと膝の上に紙が置かれた。
「何?」
「良く見ろ!」
「え?」
そう言われて改めて紙を見ると…
「出生証明書…飼育許可書?」
飼育って…
「特別許可証…所有権譲渡申請書…許可証…許可証…証明書…」
そんなのが何枚も…

「半獣が生きていくには大変なんだよ。だから誰かに飼われてた方が簡単なの。不本意だけどな…」

そう言った彼はちょっと暗い雰囲気になった様な気がした…

「でもオレは人に服従するなんて真っ平ゴメンだ。」

「え?」

「だから世間的にはお前が飼い主って事にしといてやる。
でも主導権はオレだ。覚えとけ!飼い主様?」

「!!…んぐっ!!!」

信号で止まってる間がっちりと顎を掴まれて突然強引にキスをされた。
思いきり舌を絡ませたディープなキス!!

「……ふぁ…ン…」

人とは違う舌触りで…何だろう…思わず彼の舌触りを堪能したくなる……って……ハッ!!!

「ちょっといきなりキスするなんて最低!!」
「クスッ!」
鼻で笑われた!!!

「感じてたくせに。」

「!!!!」

なにぃ〜〜〜〜〜!!!ムカつくっ!!

「あのねぇ……!!!」


言い返そうと思ったら信号が変わって車が走り出した。