03





「うそ!!」


連れて来られたのは駅に近い高層マンション………
億まではいかないだろうけどそれに近いと思う立派さだ…
今までいたアパートなんか一体何部屋入るんだろう。
地下の駐車場に車を止めた。
地下の駐車場ってそんなの初めてで大体車自体持ってないから…

「降りろ。」
「え?でも…」
裸足の足を見下ろした。
「チッ!」

ん な ーーーーーー !!! また舌打ちされた!!

「仕方ないじゃん!君が無理矢理連れて…うわっ!!」
ガチャリとドアが開いて今度はお姫様抱っこで担ぎ上げられた。
でもなんでだろ…心臓がドキドキ!!



エレベーターの中でお互い無言…

「あの…」
でもそんな空気に耐え切れなかったのと気になる事を聞きたくて話し掛けた。
「ん?」
「本当に一緒に住むの?」

「何度も言わせんな。お前はオレの飼い主になったんだ。今更放棄は許されない。
法律で半獣の飼育を勝手に放棄した場合実刑あるのみ!」

「ええっっ!!そんなに厳しいの?」

「そんな事も知らないのか?」
「だって…そんな事聞いてない…」
「じゃあ半獣を飼うって事がどんな事かオレが1から100まで教えてやる。身体で覚えろよ。」
「1から100?そんなに??それに身体で覚えるって?」
「そのまんまだよ。身体で覚えろ。」

クスッってまた鼻で笑われた…?なんだろ?


エレベーターが最上階に着いた…

「この階には4つ部屋があるだけだ。」

コツコツと彼の靴音が廊下に響いてる。
その音が何ともキリッとした音に感じて…こんな靴音にドキドキする……

「しっかりオレの首にしがみつけ。」
「?」

そう言うと背中に廻されてた彼の腕が外されたからずり落ちる身体を言われた通り
首に廻した腕に力を入れた…なのに彼はびくともしない…そんなに力持ち?
そんなに体格が良いとは思えないのに…

外した手で玄関のドアを開けるとまた背中に腕が廻される。

「もうしがみつかなくていいぞ。」

「え?あ…」
やだ…何いつまでもしがみついてんだろ…

中に入ると玄関先で下ろされた。
彼がさっさと廊下を歩いて先に行く…
突き当たりの部屋のドアを開けた…中を覗くと彼がすぐ入口で立ってた。

「うわぁ……」

勝手に声が洩れた…白に統一されたリビングに白い家具…それに広々とした空間…
アパートとは比べものにならない…

「まあこんなもんか。」
「…………」
それでも彼は不服そうだった。信じらんない…

「来い!」

「え?あ…」
強引に腕を引かれてまた廊下を歩いた。
次に入った部屋は20帖はありそうな寝室のど真ん中にどんだけの大きさのベッドだろう…
シングルサイズが3つ4つ入りそうなくらいの真っ白なベッドが置かれてた。

「うわぁ…すごいベッド……」

思わずベッドに近付いてしまった。
カチャリと音がして振り向くと彼が後ろ手にドアの鍵を閉めた所だ。

「ちょっと…何すんの?」

「早速半獣の飼い方を教えてやる。」

言いながら彼がサングラスを取るとサングラスの下から…
深い深いエメラルドグリーンの瞳が現れた。
心の中でわあ…と声を上げたほど綺麗な瞳だった。
次に被ってたフードを取るとぴょこんと動物の耳が現れる…
コートを脱ぐとこれまたしっぼが現れた。

「ふわぁ…本当に耳としっぽがある……」

「当たり前だ。半獣なんだから。」

無意識に彼に近付いてまじまじと見上げてしまった。
背も高い……

「犬?」

確か半獣は今の所犬型と猫型だけのはず…彼に生える耳としっぽは犬型に見える。

「違う。オレは 『 狼 』 だ。」
「狼?」
「半獣の中でも超レアなんだぞ。」
「へえ………」

「これから契約の手続きを始める。」

「え?手続き?何か書くの?」
「ああ…」
「どれ?」

「お互いの……身体に…だ…」

「え?」


真っ直ぐ新しい飼い主を見下ろして見つめた。
半獣には人間には無い能力が幾つかある。
その1つがこの半獣の瞳…相手に自分に好意を持たせる。
仔犬や子猫を見ると『可愛い』と思うあの感情をいつでも相手に抱かせる事が出来る。
これはどんな相手にも有効で特に女にはテキメンに効く。

「オレと交わるんだよ。」

耳元に囁いてやった。
「……?交わる?」
一瞬で相手の瞳が恍惚となって潤む。
「ああ…飼い主様…名前は?」
「…名…前?耀……望月耀…だよ…」

「…耀……最高の快楽をお前に与えてやる…」