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時間は午後11時45分…後15分で今日が終わる…

「……くそ…」

この時ほど…自分の半獣の身体が嫌になる時は無い…
いつもは亨の所に転がり込んでた…でも耀には………

「……はぁ…」

耀が寝たのを確かめて寝室に戻った。
腰掛けていたベッドから立ち上がって着ている服を全部脱ぐ…
裸のままベッドに膝を着いて眠ってる耀に近付いて行く…

裸で寝ろって言ったのに無視しやがって…
でも今はそれを構ってる暇は無い…


「耀…」

肩を揺すって耀を起こす…
「ん…?」
「起きろ…話しがある。」
「……え…?…んー」
耀は寝起きが悪い。
「耀!」
片手で耀の顔を持ち上げてオレと目を合わせた。
「…なに?さっきは寝ろって言ったのに…眠い…」
そう言って目を擦る耀を押し倒したい衝動に駆られたが思い止まる。

「大事な話しがある…」

「えー…大事な話し?だったら明日で…」

「明日じゃダメなんだよ…」

「ん?…なっ…何で裸なの!?ちょっと…来ないで!」
「ばか…何もしない。時間が無いんだ…」
「 ? 」
「……他の半獣は…月の満ち欠けに左右される事は無いんだが…
 『 狼 』 の半獣のオレは何故か大きく左右される…」

「え?」
何だか言ってる意味がわからない?

「……理由は未だに解明されてないからオレにもアイツらにもどうしようも無い…」

「アイツら?」
ああ…真鍋教授達の事かな?研究してる人達?

「とにかく…これから起こる事は耀にとってショックな事だと思うが…受け入れろ!
今までの飼い主には見せた事は無い…ああ…耀の大学の真鍋って教授は知ってる…
でも自分から見せたんじゃ無い…だから自分から見せようと思ったのは耀が初めてだ…」

「 え?何?何の事なの?わかんないよ?…!!! 」

しいなの手が優しくオレの頬に触れた。

「…耀なら…受け入れてくれるって…信じてる…」

「え?…あ!」

その時しいなの身体の輪郭がぼんやり光り出した!

「し…しいな?」
そんなに眩しい光じゃないけどだんだんその光が小さくなる…
「え?な…何?ちょっと…消え…る?しいな?」

その時間はきっと30秒も無かったと思うけど…
光がおさまってさっきのしいなの輪郭より大分小さな形が現れた。

「…え?」
うそ…
「ええっっ!!」
こんな事…
「えええっっ!!!」

有り得ない!!!
目の前には…しいなの代わりに小さな仔犬がチョコンと座ってた!!
ぴょこんとした耳に小さいのにフサフサのしっぽ。

「こ…仔犬?え?何?で…でも………可愛い〜〜!!!」

オレはどう見ても変だろう!って突っ込まれてもおかしくないのに
目の前のチビっちやいワンコから目が離せず抱き上げた。
そして思いきり抱きしめて頬っぺたで仔犬にすりすりした。

可愛い……

「え?何で?君どうして?あれ?このピアス…」

仔犬の両耳にピアスが1つずつついていた…
しいながいつも付けてるのと同じ…しいなの瞳と同じエメラルドグリーンのピアス…

「え!?…まさ…か…君…しいな!!??」

『………』

何だか仔犬なのにバツの悪そうな顔に見えるのは気のせい?
持ち上げて視線を合わせる。

「オレの言ってる事わかる?しいな…なの?」

コクンと仔犬が頷いた。

「ええーーーっっ!!うそ!!しいなって仔犬にもなれちゃうの?」

オレは驚きを隠せない。
だってさっきまで人の形してたしいなが本当の仔犬になっちゃうなんて…

「でも何で仔犬?」
『犬じゃない!!!狼だって言ってるだろ!!』
「きゃあ〜〜〜 ♪ 声まで子供の声だ!!って話せるんだ?」

オレはもう顔が緩みっぱなし!!
だってオレ仔犬とか子猫大好きなんだもん ♪

『下ろせ!』
そんな命令口調も子供だと笑って聞ける。
『何笑ってんだよ…』
「だってぇ〜〜しいな可愛い ♪ 」
『うるさい!』
「ねえ…どうしてこんな事になっちゃうの?」

『!!』

ドキン!! 耀がオレの視線に合わせてベッドに俯せに寝っころがって組んだ両腕の上に顎を乗せる。
何だよ…今までそんな格好しなかったくせに…このオレの前だと随分無防備じゃないか……

『何でだか新月のたんびにこの姿になるんだよ…』
「勝手に?」
『ああ…新月の日…午前零時を廻った瞬間さっきみたいになってこんなだ……クソ…』
「いつまでこの格好?」
『早い時は1日で戻る時もあれば2・3日って時もある…
最高10日の時はもう元に戻れないかと思ったけどな。』
「へえ…半獣って本当不思議なんだね…」
『だからオレだけだって…』
「ふふ…」
さっきから耀はニコニコだ。
『……何ニコニコしてる?』

「だって本当しいな可愛いんだもん。こんなしいなならずっと飼っててもいいな。」

『!!!…ふうん……』

「な…何?」

狼のしいながニヤリと笑った気がした…何でそんな風に見えるんだろう……

『なめんなよ。』

「!?」

そう言ったしいなが俯せで寝てたオレの胸に滑り込んで来た!!!

「あ!やっ!ちょっとしいな…やん…」

しいなが胸の上で暴れるから…思わず跳び起きちゃった。

「しいな!!」

ちょっと…に…肉球が…柔らかくてあったかくて…ってそんな事言ってる場合じゃ…

「しいな!やめないと摘み出す……んあ!!!」

座ってたオレの膝の上で後ろ足で立ってた狼しいながオレの胸の先を柔らかく噛んだ!!
前足は微妙な力加減で胸の周りを押してる…

「ん…ン…あ……」

今度はペロペロと舐め始めるし…

「はぁ…もう…やだ…」
『耀…』
「………」
いつの間にかしいなが胸の間から頭を出してオレを見上げてる…
「………」
オレは恥ずかしくて…
「ひどい…しいな…」

『……耀……ちゅっ』
「…しいな…」

狼のしいながオレにキスをした…

『こんな変な半獣…嫌か?』

「しいな…?」
『一緒に…いたくないか?』
「……この身体の事気にしてたの?…」
『…………』
黙ってる事が何もかも物語ってる…


「嫌じゃないよ……しいながこの姿の時は…オレがしいなを守ってあげるよ……」


そう言って狼の小さなしいなをギュッと抱きしめた…