18





「一体なんなの?お前達は……」

亨が資料に目を通しながら亨の部屋に陣取ってるオレとトウマを交互に見て呆れてる。

「コイツが耀に手を出さない様にだ。」
「俺は耀に会いにと暇だから。」

「テメェ…人の飼い主に手ぇ出すなって何度言えばその軽い脳みそに記憶させられんだ?
耀に手ぇ出したら殺すぞ!昨日も耀に絡んだろ?耀の服からお前の臭いがしたぞ!」

「ゲー!!何!?地獄鼻?」

「狼姿ナメんな!今より嗅覚が利くんだよ!」
「へぇ…でも耀のほっぺからは俺の臭いしなかったか?」
「なにっ!?」
「柔らかかったなぁ〜〜耀のほっぺた ♪ ♪ 」
「テメェ…!!」
「オット!」

速攻トウマの顔面に一発入れたのに交わされた。
半獣同士じゃそんなもんだから仕方ない。

「まだ飼い主じゃ無いんだろ?もういい加減猶予が無いよ。」

「…………」
「残念だなぁ〜〜しいな?」
「やかましい!!犬っころ!!」

「何で契約しないの?」

「 !! 」

亨が研究者の顔でオレをジッと見てる。

「……オレは…耀には今のままでいて欲しい…
オレと契約して…今までの飼い主みたいに変わって欲しくない…それだけだ…」

「………」
トウマはびっくりした顔でオレを見てる。

「お前の口からそんな言葉が聞けるとはね…どんな心境の変化だ?」
「…目…輝かせてんじゃねーよ。変態!」
「どんな理由にせよ契約が行われないなら答えは同じ事だよ。」
「無くても耀はオレの飼い主になるって言ってる。」
「決まりは決まりだ。守らなくてはならない…半獣を守る為でもあるって事忘れたら駄目だよ。
確実に半獣を飼う事を人間にさせるた為なんだから。誰にでも飼えると思ったら大間違いだ。
それに今回はお前が選んだ飼い主なんだよ…こっちが選んだんじゃない。
それなのにこれじゃ文句言われても仕方ないだろう?」

「………」
確かに亨の言う通りだから反論の余地は無い……

「だからさっさと諦めろ。俺なら何の迷いも無く耀と契約結ぶからさ。」

「ホント黙りやがれ…馬鹿犬!!」

オレはそう怒鳴り付けて亨の部屋を後にした。

「どう思う?契約するかな?」
「するさ…じゃないと自分が他の飼い主の所に行く羽目になるからね。」
「しかし何でこんなに耀にこだわるんだ?」
「さあ…詳しい事は分からないけれどよっぽどなんだろうね。」
「聞いてないのか?」
「話したがらない。ま…僕はそんな事に興味ないし。
僕が興味あるのは初めて自分が選んだ飼い主にあの子がどう対応していくのかだ…
自分以外の第三者に飼い主が横取りされるかもしれないと言う状況も初めてだろうしね。」
「俺に感謝してるか?真鍋」

「……別に。当然の事だろう。」

「ったく!!あーつまんねぇ!」
「じゃあつまる事でもすれば?」
「そう言う話しじゃないだろっっ!!」



「ん?」

オレの目の前の廊下にいる人達が左右に避けていく…なんで?
理由はすぐ分かった。

「しいな…!?」

しいなが廊下のど真ん中を堂々とオレに向かって歩いて来たから…

「迎えに来た。」
「迎えにって…まだ午後の講義が…」
「そんな事より大事な事だ!」
「え?ちょっと…」
手を繋がれて引っ張られるまましいなについて行く…でもしいなってば…

「しいな…凄く目立ってる…」

周りの視線が痛い…

「半獣の飼い主なんだもっと優越感浸っていいんだよ。
ここにいる連中はどんな事しても半獣を飼えないんだから。」

「…しいな…」
そんな事言ったて…
「どうしてオレがいる所わかったの?」
「匂い。」
「え″!?」

匂いって…オレそんなに匂う?思わず自分の身体をクンクンと嗅いでしまった…
そしたらしいなが呆れた顔で見てた。え?違うの?

「それもあるけど後は気配。」
「気配?」
「耀が本当の飼い主になったらもっとはっきり耀の居場所がわかる。
耀もオレの気配を感じられるはずだ。」
「本当?」
「本当!契約ってのはそう言う事だから。」
「……しいな…」

一体どうしたんだろう…なんだか様子が変だ…

「どこ行くの?」

「デート!」

「え?」

そうしいなが宣言した通り行く所行く所巷で話題のデートスポットばっかり。
一応サングラスをかけてはいるけど頭の耳としっぽは隠そうとしないから
どこに行っても注目の的……

室内のアミューズメントパークに映画に食事にショッピング…
オレが気に入ったそぶりを見せるといいって言うのに全部買うし…何なんだ?


「しいなこんなに買って大丈夫なの?」

「こう見えても半獣は金に困らないんだよ。国からの保護もあるが今ままで契約した飼い主が
契約が終わる時惜しみなく謝礼金を出すからな。」
「え?謝礼金?」
「まあ飼い主や半獣によって金額は違うがオレは最低でこれくらいは貰える。」
そう言って人差し指を1本出した。
「?10万?」
「ドアホ!桁が違う!」
「え?100万?」
頷かない。

「ええっっ!!1000万?」

「ああ最低な時でな。」
「じゃ…じゃあ最高は?」

「上限無しのカード!使用制約無し!」

「ええっっ!?」
それって使いたい放題って事??
「当然支払いはオレじゃ無い。」
「えーーーーっっ!!」

「あのなその代償にオレがどんだけ飼い主に好き勝手やらせてると思ってんだ!
このオレがだぞ!!当然の権利と報酬だ!」

…ウソだ…絶対超デカ俺様態度で飼い主の人を良いようにこき使って命令して
言う事聞かせてたに違いないよ!オレはその場面が手に取るように分かる!!

「あ…でもさ…契約が終わる時ってどうするの?」

「オレが飼い主の耳元に契約の終りを告げる。」

「それだけ?」
「ああ…それだけだ…」
「何だか呆気ないんだね…」

「半獣の瞳と言葉は人間のモノとは違う…
だから人間はその魅力にとり憑かれて…半獣を求めるんだ……」

「…そう言うものなの?」

「ああ…何なら耀の耳元に囁いてやろうか?」

「え?なんて??」

「…くすっ……内緒だ。」

「ええ!?」