01





「はぁはぁはぁ……ンン…はう……」

ギシギシとベッドが激しく軋んでる。
いつものベッドならそんな音なんてしないけど
今はオレのベッドでしいながオレの事抱いてるから…
ずっとそんな音が鳴ってるんだ…

ちょっと激しくしたら壊れる!なんて言ってたしいなが
なんでこのベッドでしようなんて思ったのか…
聞いても答えてくれなかった。

「…あっあっ…し…いな…もうやめ…身体…変になる……」

しいなに抱かれるとオレは身体が溶けちゃう…
しいなはそれが半獣と交わる事だって言う…

「半獣と交わってるんだ…当たり前だろ…」
「……うぅ………あん…」

オレの背中越しにしいなの声がする…しいなは後ろからオレを攻める事が多い…

「でも…も…ほんと…頭も…おかしくなっちゃう……ああ……」

半獣と交わる事がこんなに激しくて…快感で…気持ちの良い事だなんて……知らなかった……
1度半獣と交わると半獣以外抱きたくなくなるって言ってたしいなの言葉が今ならわかる…

でもオレは人間の男の人は知らない…初めての相手が半獣のしいなだから……




「……っつ」

湯舟に身体を沈めると身体中がヒリヒリとした…
だってしいなってばオレの身体中に歯型とキスマーク…
それに…八重歯でオレの身体にマーキングって言って傷を付けるから…
それはやめてって言ってるのに止めてくれない…
実際その時になるとオレは訳がわからなくなっちゃうから
気付いた時は身体中スゴイ事になってる。

それから他にも人様には言えないヒリヒリする所がある……

「はぁ〜〜今日で丸3日…?うそだ……」
何が3日かと言うと…

バ タ ン ! ! 

「!!しいな!」
「時間掛かり過ぎなんだよ!」
いきなり浴室に入って来たしいながそう言ってオレの腕を掴んで立たされた。
「ちょっと!!」
その後グシャグシャと乱暴にバスタオルで身体を拭かれた。
「…ん…ちょっ…自分でできるって…!!やっ!!」
しいなの肩に担がれて連れてかれる…

「わっ!!」

ドサッと今度は寝室のベッドに投げ出された。
「え?また…」

オレはちょっと後ずさる…だって…もう3日もこんな事してるんだもん…

初めて2人で満月を迎えた…
話しには聞いてたけどここまでしいながハイテンションになるなんて思わなかったから…

「安心しろ今はしない。ちょっと出かけるから大人しく待ってろよ。」
「…何処に行くの?」
「野暮用!」
「………?」
曖昧なしいなの返事に見上げたまましいなを見つめちゃった。
「心配か?」
そんなオレを見てしいながすかさずそんな事を聞いてくる。
「 ! 」

しいながベッドの上でバスタオルに包まってるオレの目の前に四つん這いになって
オレの顔を何だか優越感一杯の顔で覗き込んでる。

「全然!!!」
見え見えの強気だ。
「なるべく早く帰る。」
しいなの顔は笑ってるし……もう…
「……ン」
舌を絡めるキスをしばらくの間してくれた…その後軽く触れるだけのキスを繰り返す…

「……ぁ…ン…や……」

たくさんキスされるとしいなと離れたくなくなっちゃうから半獣とのキスは始末に悪い……

「いい子で待ってろ。帰ったらまた相手してやる……」
身体はもう無理って思うのに耳元にしいなの声で囁かれると頷きそうになる…
「もう…無理だもん…」

「そんな事ないだろ?オレは感じて乱れてる耀がみたい…見せてくれるよな…」

「………しいな…」

ズルイな…しいなってば…いつも耳元で囁くんだもん…

「チュツ…じゃあ行ってくる。」

「うん…」

そう言ってしいなが寝室から出て行った。




「どう?初めての満月は?」
「3日間寝室に篭りっぱなしだ。」
「月齢16日か…あと2日はハイテンション?」
「ああ…」
「で?そんなお前が僕の所に何の用?」

亨がデスクのイスに座っていつものコーヒーを飲みながらオレを冷めた目で見てる。

「…そんな目で見んな!」

「捨てられた?しつこ過ぎて?」

「んな事あるかっっ!!!」

「じゃあ何?」
「………時間潰し。」
「 は? 」
「このまま一緒にいたら耀の身体壊しそうだからだよ…」
「何言ってるんだ?」
「自分を抑え切れなくて…耀を攻めまくるから…自主避難。」
「はぁ?」

「もう3日も耀を攻め捲くってんだぞ…人間じゃもたない…」

「……ふーん…お前が人間に気を使うか…なら時間潰しに提案をしてやろう。」

「ん?」
「お前にして欲しい相手が3人ほどいる。」
「 は あ !?」
オレはびっくりだ。

「皆大事なスポンサーでね。研究費はいくらあっても足りない。」

「人を人身御供にすんな!耀を飼い主に選ぶ前にちゃんとそう言う相手に飼われてやっただろ。
もうオレには正式な飼い主がいるんだからな…他の奴の相手する必要無い!」

「…まったく…誰も飼われろなんて言ってない。時間潰しにベッドの相手するだけだ。」
「涼しい顔で当たり前みたいに言うなっっ!!浮気なんか出来るかっっ!!」
「はぁ?お前の口から浮気なんて言葉聞くとは思わなかったよ。
これは相当心境に変化があったんだね。ちょっとデータ採らせなよ。暇なんだろ?」
「ヤだよ!」
「なんだい…まだ採血が嫌なのか?」
「まだって最初から嫌だったよ!」

「フン!お前随分態度が大きくなったね…そんなに今の飼い主が気に入ったのか?」

「………」

これ以上はコイツにはマズイと感じた…だから黙る。
『 S 』の雰囲気が漂って来たからだ…これ以上は絶対絡まれる…触らぬ神に祟り無しだ。

「まあいい…でもお前が使えないのは結構不便だよ。
お前を飼いたいと言う申し出が後を絶たないのに…」
「でもこれはちゃんと正式な手続きで成立してる契約だからな。誰にも文句は言わせない。
耀との契約が解消されるまでオレの飼い主は耀だ。」
「解消される日はくるの?」
「無い!」
「ほう…言い切る?」
「ああ…言い切れる。」

そんな話しをしながら何だかんだと亨の所で時間を潰した。



「……ん…ふあ……」

ベッドの中で目が覚めた…もう部屋の中は薄暗い…何時間眠ったんだろう…
「ふにゃ……」
掛け布団に包まってオレはまた寝る準備…だって…眠いんだもん……
しいなが出掛けた後着替えるのも面倒くさくて裸のまま眠っちゃった…

「ン…」

裸で寝るのがこんなに気持ちいいなんて初めて知った……
ああ…でも…しいなまだ帰ってないんだ…それがわかったら…何だか寂しい気持ちになった……
きっと寝ぼけまなこでおかしいのかな……

「くすん……寂しい……」

今までずっと1人だったのにほんの半月…しいなと一緒に暮らしただけなのにもう1人が寂しい……
違う…しいながオレの傍にずっといすぎなんだよ…だからいないと寂しく感じるんだ……


「……う〜〜」
ダメだ…寝てられなくて起き上がる。
「しいな……」
ポロポロと涙まで零れた…
「やだ…なんで?」

「耀?」

入り口の方からしいなの声がした。
「……しいな…」
いつの間にそんな所に立ってたの…?
「何だ?どうした?」
しいながそう言いながらベッド脇まで歩いて来た。
「ううん…何でもない……」
「泣いてて何でもないはずないだろう?」
「……夕方…だから?」
「は?」
「わかんない……」
「嫌な夢でも見たか?」
「違う…」
「耀…」
「!!」
「来い。」

呼ばれて膝で歩いてしいなの立ってるベッドの端まで行った…裸だったけど気にしなかった。

「……ン…ちゅっ……んん……」

深い深いキスをしてオレからしいなに抱き着いた。
しいなは裸のオレの胸を揉みながら舐める上げる……

「んあ…あ…あ…あ…あん…」

絶妙な力加減でしいながオレの胸の先を甘噛みした…

「…ひゃっ!!…ん…ああ…」

しいなの右手がオレの下半身に伸びて指先が優しくオレの中に入って来る…
オレは何も抵抗せずにしいなを受け入れた。

「あっあっあ…だめ…立って…られない……しいな……う…」

「ダメだ…立ってろ。」

「…ンン…!!…ふぁ!むりっ…!」
そう叫んでしいなに抱き着いた。
しいなの服を思いきり掴んで堪える。でも……

「はぁ……ううっ……あああ!!!」

大きく後ろにのけ反るオレの身体をしいなが簡単に抱き寄せる…
オレはそのまま力が入らなくて…ベッドの上に崩れ落ちた…
本当にオレの身体はどうなっちゃったんだろう…しいなの指先でこんな風になるなんて…

「…オレの身体に…何したの?…しいな……」

ベッドの上で裸のまま倒れて浅い呼吸で喘ぎながらしいなに聞いた。
「?」
「だって…おかしいもん……こんなの…」
「おかしくなんかない…」
ギシリとしいなが片手を着いてオレに近づく。

「耀がオレを求めてるんだよ…オレをな…」

「………」

しいなが笑って…オレの髪を撫でながらそう言った…





「お前を求めてるのか?半獣を求めてるのか?」

トウマが真面目くさった顔でそう呟いた。
「ああ?」
「だってそうだろ?お前が好きとは限らない?」
「勝手に人ん家上がり込んで勝手な事ほざいてんじゃねぇよ。帰れ!犬っころ!!」
「うるさいなぁ…遊びに来てやったんだろ?耀は?」
「爆睡中。」

結局あの後散々耀を抱きまくったから……
あんな顔で見つめられたら理性が飛ぶのは仕方ない事で…耀にも責任はある…

だがちょっと反省したりしてる…

「でも別に構わないだろ?一緒にいる理由はどうだって?」
「………」

本当は一緒にいる理由はオレにとって大事なことだが…コイツには言いたくない。

「いつもはどうしてたんだよ?」
「?」
「やっぱり前の飼い主ともやりまくってたのか?」
「一晩位はな…でも飽きるんだよ…何でだか…つまんねーの…
だから亨に頼んで眠らせてもらった事もある。満月挟んで3日くらいな…
起きてても暇だし…飼い主と交わるのにも興味無かったし…」
「え?そんな事許されるのか?」
「オレだから許される。」
「………はいはい…」

?…トウマがもの凄く呆れた顔と態度だった…何なんだ?

「さてと!耀がいないんじゃつまんないから…」
「ああ…帰れ。」

「俺が起こしてこよう!」

「は?オイちょっと待て!!」

言い終わる前に奴が既にリビングを出てた。
オレよりもドアに近かった奴の方が早い。
何でこんなに焦るかと言うと耀が裸で寝てるからで…

アイツに耀の裸見せてたまるかっっ!

「オイ!トウマお前寝室入ったら殺すぞ!」

って既に入った後だった。くそ!!

「トウマ…」
ムカつき度200%で中に入るとトウマがベッドを見下ろして立ってた。
何故かオレに振り向いた顔はとんでもなく呆れてる…何でだ?

「何だよ?ってかお前…」

「お前の方こそ何だよ。痛々しくて見てらんねーぞ。」
「ああ?」
多分ベッドに寝てる耀を見てそんな事を言うんだろうが…
耀はぎりぎり胸が隠れる位置に布団が掛かってて…両腕は布団の外に出てる。

「かわいそうに…身体中歯型と擦り傷だらけじゃん。
それに3日間ぶっ続けで抱いてんだろ?倒れるぞ…」

「わかってる…だから今日はもうしないつもりだ…」

「今日は?つもり?無理だな…性欲の塊みたいなお前が我慢できるわけがない!」

「…………」
言い切られた。
「自分でもわかってるから大丈夫だよ!いいからお前もう帰れ!」
「やだね。絶対耀と話すんだからな!それに久々にしいなの料理食べたいし。
飼い主のいないオレに愛の手差し延べてくれよ。」
「お前だって我が儘言わせてんだろ?純血の半獣野郎!」
「俺だってそうなるまでどんだけ文句言わずに飼い主の言う事聞いて来たと思う?
しばらく飼い主無しで自由にいたいさ。それに次の飼い主は決めてる。」
「耀とか言うつもりじゃないだろうな?そうだったらマジ殺すぞ?
犬と狼でどっちが勝つかわかってんだろ?」
「クスッ…さあ…どうかな?せいぜい契約を解除されない様に飼い主を大事にしてやるんだな。
俺なら耀の身体に傷なんか付けない…」

「耀はオレのもんだっっ!!!」

「……耀は飼い主だろ?俺達は半獣で飼われる為に存在する。
半獣と人間の間に恋愛感情は存在しない。いくら俺達が人間を思ってもそれは伝わらないし…
人間が俺達に好意を持つのは半獣の能力のせいだ。」

「耀は違う。耀には半獣の能力は通じて無い。」

「それはどうかな?」
「はぁ?」
「本当にそう思うのか?だったら自分の意志で耀はお前と3日間も交わり続けたいと思ってるのか?」
「!!!」
「なあ?」
「………」
「わかってるじゃん。そう言う事だよ。まあ耀は多少今までの飼い主とは違うみたいだけど…」
「………」


オレはベッドでぐっすり眠ってる耀をじっと見つめてた…

確かに耀自身も今のこの状況を受け入れられずに不安定になってる…

      だから…泣いてたんだ……