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『…ンア…ふわぁ〜〜』

次の日の朝目が覚めると耀がもうベッドにいなかった。
ついでにあの犬っころのキャリーバックも無い。

『チッ…』

この姿になると眠いわ起きれないわ…散々だ。
あんな犬ごときに遅れをとるとは……リビングに行くと耀の姿が無い。
コーヒーの匂いが漂ってるところをみるとキッチンにいるのか…

多分あの牛乳と砂糖たっぷりのカフェオレなんぞを作ってるんだろう。
ったく…お子ちゃまが!コーヒーはブラックだろ。

『 なっっ!!』

視線が捕らえた先にはあのお邪魔虫の犬っころがちゃっかりしっかりソファで!…しかも…

オレの!大事な!!お気に入りの!!!クッションで!!!!

         寝てやがるっっ!!!! 


『どきやがれっっ!!このバカ犬っっ!!!』

「キャン!!」
ソファから蹴り落としてやった!

「あっ!しいな!!また…!!」

耀が奴の泣き声を聞き付けてキッチンから飛んで来た。
この位で泣きやがって!フンッ!根性無しが!

オレは耀も犬っころも無視して当たり前のオレの場所に陣取る。
オレのモノに手を出すなんざ100万年早い!犬っころがっっ!!!

「しいな!!もう…」
『ずっとキャリーバックの中に閉じ込めとけ!目障りだ!』
「そんな事出来るわけないだろ!ストレスたまっちゃうもん。それに昨夜許してくれたんじゃないの?」
『それは昨夜の事だろ。』
「昨夜の…事だけ…?」

『ああ…機嫌直して欲しかったらまたオレに遊ばれるしか無いな。どうする?
オレはどっちでも構わないぞ。その犬っころの為に覚悟決めるんだな。』

とんでもなく腹黒い顔でニヤリと笑った様に見えるのはナンデ?狼の姿なのに……

「……いいもん。その代わり気持ち良い事してあげる。」

『はあ?』

そう言って耀がにっこりと笑ってオレを抱き上げた。



『………ふぁ…ぁ…』

ヤバイ…勝手に間の抜けた声が出る。

「気持ちいい?しいな。」

『…………は…ふ…』

返事は無かったけど鼻から抜けたため息?なのかな?がなにもかも物語ってる…
そんなに気持ちいいんだ……耳かき…

しいなが起きて来る前にトウマさんからオレの携帯に電話があって…
仔犬の事とオレの事を心配してくれてなんだけど…

昨夜の事としいなの仔犬への態度を愚痴ったらトウマさんが教えてくれたんだ。

『半獣の耳って敏感だから掃除されると身体から力が抜けて気持ち良いんだよ。
きっとしいなは他人にやってもらった事無いと思うからやってみれば。』

なんて言われて…そう言えば半獣の耳は敏感なんだ!!って前しいなも言ってた…
でもまさかここまで反応するとは思わなくて…
何故か笑いが込み上げてきて必死で堪えながらしいなの耳を掃除した。

だって…本当に気持ち良さそう……

目を瞑って…オレが綿棒をコチョコチョ動かす度にピンと伸びてるしいなの両手足が
ぴくぴくと動くんだもん!

「しいな反対ね。」

『…ん…』

オレにされるがまましいなは反対にひっくり返されて無抵抗でオレに耳を見せる。

……凄い効果…


「ねえ…しいな…」
『…ん?』

「オレが大学行ってる間…島崎さんの仔犬虐めないでね。」

本当はちゃんと『リアンちゃん』って名前があるんだけど…
(男の子なのに女の子みたいな名前なんだよな…)
オレが名前で呼んだらしいなが余計機嫌悪くなりそうだからあえて飼い主の名前で呼んだ。

『…………』

無言かぁ……

「帰ったらまた耳の掃除してあげるから…オレの胸の上で寝てもいいから……ダメ?」

もう大サービスだ。
オレの胸の上って言うのはオレが横になってその上にしいながオレの胸を枕に眠るんだけど…
その間オレはしいなに何をされても抵抗しちゃいけないんだ…

意地悪なしいなはオレのパジャマのボタンを直ぐに外して直接オレの胸に潜り込んで来るから…
オレの胸には小さな傷がたくさん付く……
それに…その…変な声まで出るから…ちょっと落ち込んだりもする…

でもオレが預かって来たんだから仕方が無い…諦めてしいなの機嫌取るしか…

『速攻帰って来いよ…オレは奴の面倒なんか見ないからな。』

「…!!うん。早く帰るから。ありがとうしいな!!」

『 !! 』

オレは横になってるしいなを抱き上げてちゅ〜〜〜ってキスをして思いっきり胸に抱きしめた。



「あ!ちょっと!」

「はい?」
大学が終わって家に帰る途中で声を掛けられた。

「君さ…島崎って娘から犬預かってるだろ?」

いきなりそんな事言われた。
相手は見た事の無い同い年位の今時の男の人だ。

「あの…」
オレが警戒しながら返事をすると…
「ああ俺その娘のダチ!引き取って来てって言われたからさ。聞いてない?」
「え?あ…何も…」
昨夜メールで仔犬の様子は聞かれたけどそんな事何も言ってなかったし…
「おかしいな…忘れてんのかな?連絡すんの。」
「ちょっと待って…連絡取ってみるから…でも帰るの明日って言ってたのに…」
「我慢出来なくなったんだってさ。急に会いたいから連れて来いって。」
「え…そうなんだ…」

オレは島崎さんに連絡しようと携帯を取り出した…

「 !!! 」

その時横から彼の手が伸びてオレの携帯を持ってる手を掴んで取り上げた!

「え?」
オレは訳がわからず…びっくりで…


「連絡なんてされっと困んだよな〜〜素直に犬渡してくれればいいんだよ。」