06

     * しいなは新月になると仔狼姿になります。人型に戻るのはいつになるか本人にも不明。
       葵 (♂) : 2ヶ月で人の7ヶ月〜1歳ほどに…






葵が生まれて約2ヶ月…
お座りとハイハイが出来る様になった…
もともと活発な葵は自由に這い回れる様になると自由気ままにリビングの中を動き回る…

半獣の血が流れてるせいか葵の腕の力は赤ん坊にしては相当なモノで
結構な時間ハイハイで動き回っても疲れを知らないのか
勝ち誇った様に途中ニヤリと笑ってる…
 
流石オレの子供!
でもオレを越えるのはまだまだだ…

だからオレは腕を組んで葵の前に立ちはだかって行く手を塞いでやる。
進路を変える方変える方に移動して邪魔をしてやる。

最初は方向転換していた葵も流石に何度も何度もそんな事を繰り返すと
余裕だった顔は途端に崩れて泣き出す。

それでもオレは抱っこせずに観察してるといつまでも泣き続けてる。

「しいなっ!!!また葵泣かしてっっ!!!」

葵の泣き声に耀がキッチンから飛んで来る。

「これも愛情だって。」
「どんな愛情だよっ!そう言うの大人気ないって言うのっ!!」

そう言って耀は簡単に泣いてる葵を抱き上げる。

「耀!甘やかすなっ!そのくらいどって事無いんだよ!
オレの足に噛み付くくらいの根性無くてどうすんだ!」

「葵はまだ赤ちゃんなんだよ!もう少し優しくしてよ!!」

「してるだろ?これも遊んでやってるんだぞ。」

「うそだ!からかってるとしか思えない!今の葵がしいなに敵う訳ないじゃんっ!」

「まったく…軟弱な…」
「これが普通なのっ!!ねぇ葵…お父さん大人気なくてごめんね。」

カ チ ン !

「………うー…」

そんな一声を出して葵が耀に抱き付きながらオレを横目で見る…
こいつぅ〜〜〜耀が庇ってくれてるってわかってるな…

そんな耀の言葉と葵の態度に腹が立ち…

「あっ!」
強制的に葵をベビーベッドに送還!!
「ちょっと…しい……あっ!!やっ!!」
強制的に耀をソファに押し倒した。
「ちょっ…しいなやめ…」
「2人にはお仕置きが必要だ。」
「ええ?何言って…ちょっと本当にやめて!!葵が見てる!!」

オレに押さえ付けられながら耀が抵抗を繰り返してる。

「耀…」
「……なに?」

「オレと葵…どっちが大事だ?」

「は?」

あの半獣の瞳でしいながオレに聞く…

「何言ってるの?」
「いいから答えろ。」

もう…どうしたんだろ?しいなってば…

「どっちも大事に決まってるじゃんっ!」

「今はどっちだ?」
「え?……あ…」

しいながゆっくりと顔を近づけて来る……

「耀………言え…今はどっちを愛してる?」

「………しいなを……愛してるよ……」

「だよな……オレは耀のダンナだもんな……ちゅっ…」

「……んっ……ちゅっ…」


しいながオレを押さえ付けながら長い時間キスをし続ける……




「……はぁ……」

やっと離してもらった時はオレはもう瞳がウルウル潤んでるのがわかる…

だってしいなの……半獣の舌触りは独特でキスだけでも頭が真っ白になるくらい痺れちゃうんだ…

オレが経験不足なだけかもしれないけど…
いつの間にかしいながオレから離れて葵のいるベビーベッドに歩いて行く。

葵は普段滅多に泣く事は無い…
ああやってしいなに意地悪されると泣いてオレを呼ぶんだ…

葵はちゃんとわかってる…

「ふふん ♪ お前とオレとじゃ耀と一緒に居る時間と愛情の深さが違うんだよ!
オレと対等に耀を取り合うにはまだまだだ。出直して来い!!いつでも相手になってやるぞ。葵!」

って何得意気になってるんだか…

本当は2人共同じ位愛してるけどああ言う時はしいなを1番にしないと後々煩いから……
って…ホントしいなってば大人気ないんだけら…

でも…そんな事をやったり言ったりするしいなだけど…
暇さえあれば葵の相手をして一緒に寝て…抱っこして…可愛くて可愛くて仕方ないくせに……

ほら今だって…
耳とシッポがパタパタしてるし…

それに…今まで見せた事のない笑顔で葵を抱っこしてるじゃん。




未だに身長1メートルも無いチビのクセに新月になるとその立場は逆転する………


『………くぅ…』

葵が生まれて何度目かの新月…オレはいつもの様に仔狼姿になった。
この姿になるとナゼが眠気が襲って来てすぐにウトウトと眠りたくなる…
だからいつものソファでお気に入りの耀のクッションを枕に気持ち良く昼寝中だ。

そんなオレを初めての災難が襲うなんて……全く知る由もなく…

『 ソレ 』 は静にオレに近付いて来てたらしい…
オレは全く気付かずに気持ちよく眠ってた…

ぐ わ し っ !!! 

『 がはっ!!! 』

なんだっ!!いきなり首絞められたっ!!

「あー…」
『なっ……』
「 きゃは ♪ 」
『 ぐっ!! 』

葵がオレの首に腕を廻してぎゅうーーっと抱きしめてるっ!!

『……あお…い…げほっ!!』
「あーあー」
『オ…イ……』

スゲー馬鹿力っっ!!!クソッ…

他の奴なら遠慮なく蹴りの1つでも入れてやるんだが
相手が赤ん坊で葵じゃそんな事も出来ず…

その前に背中から抱きつかれてるから手足が届かない!

『く…そっ…』

仕方なく手足を踏ん張って思い切り後ろに飛んだ。

「 !! 」

オレを抱きしめたまま葵もそのまま後ろに倒れ込んで行く。

ゴ ン ッ !!! 

葵が受身も取らないまま後頭部を床に思い切り打ち付けた。
わかってはいたが今のオレにはどうする事も出来ず…

ってかその前にオレが窒息して死ぬっ!!!

「………うっ……わあああああーーーーーんんっっ!!!!! 」

『…ぜぇ……ぜぇ… 』

オレは喘いでそのまま葵と一緒に倒れたままだ…

「葵!?」

葵の泣き声が普通じゃなかったから慌ててリビングに飛び込んだ。
しいなが一緒にいるはずなのに…また葵に何かした……

「しいな!?」

飛び込んだリビングで葵が倒れたまま泣き叫んでてその隣でしいながぐったりとして倒れてる!?

「ちょっ…どうしたの?2人共??」

オレは仔狼のしいなと泣いてる葵を片手ずつ抱えて抱き起こした。

「ふえ……ふぅ…ひっく…」
「大丈夫?葵…しいな?なに?一体何があったの?」
『……ぜぇ…ぜぇ…げほっ……』

しいなはまだぐったりとしたままだ…

「しいな?」
『危うく……自分の子供に……締め殺される…所だった……』
「え?なに?」

その後やっと起き上がったしいなに事の一部始終を聞いてオレはびっくりで…

「自由に動ける様になったから…もう葵はヤンチャだな…ちゅっ ♪ 」
『ヤンチャで片付けんなっ!!危うくオレは死ぬ所だったんだぞっ!』

耀が笑って葵の頬にキスしながらそんな事を言うからオレはブチキレ!

「そんな簡単にそんな事にならないだろ?しいな相手に…」
『いや…今のはヤバかった…葵の奴加減って言うのを知らないから…』
「オレ相手にそんな事無いのにな…抱っこしてても普通にしがみ付いてくるし…ねぇ〜葵 ちゅっ ♪ 」
「あー」


葵がそんな返事をして耀がこれまたデレデレの顔で葵の小さな手にキスをする…

オレはそんな光景を何とも言えない気分で見つめてた…

流石半獣とでも言うのか…素手が凶器………



それからしいなはオレが一緒にいない時に葵の前で寝る時は葵のベビーベッドで寝てる…

きっとしいなとしては屈辱的な事この上ないと思うけど…

命には代えられないから仕方ないのかな……