07

     * しいなは新月になると仔狼姿になります。人型に戻るのはいつになるか本人にも不明。
       葵 (♂) : 2ヶ月で人の7ヶ月〜1歳ほどに…






葵に加減無しで首を抱きしめられて危うく死にそうになったオレは
仕方なく新月で仔狼姿の時はオレが葵のベビーベッドで昼寝する羽目になった。

半獣の血が半分流れてる葵は普通の赤ん坊とは違って運動能力が桁外れに高い。

新月でこれじゃ満月の時はどうなんだ?まあオレの比では無いと思うが…


『ン?』

気持ち良く葵のベビーベッドで眠ってたら気配がして目が覚めた。
見れば葵がベビーベッドの前で座り込んで見上げてる。

フン。ここなら届かないだろう!チビめ!なんて見下した眼差しで見てると…

『ん?』

葵がハイハイでベッドの下まで移動する…

「あー…」
『何だ葵?』

葵がオレを呼ぶ。

『なっ!!』

人を呼び付けて何をするのかと思えば両手を床に着いてヨロヨロと立ち上がろうとしてるっ!!

『………』

ここは…とんでもなく凄い場面なんじゃないのか!?

「あう……あ…」

もう少し…何とも頼りなさげの時間掛かり過ぎの…あーイライラするっ!!

『オオッ!!』

数分間の奮闘の末……立った!!!

『あっ!』

立った瞬間すぐによろめいて倒れそうになったからオレとした事が思わず声が…
その瞬間葵がよろめきながらベビーベッドの柵を掴んで踏ん張った!

『!!…はぁ〜』

オレはホッと一息…

「あー」
『全く…やっと立てたか…』
「………」

葵が柵の間からキョトンとした顔で見てる…

ペロン!と柵の間から葵の鼻の頭を舐めてやった。

『ご褒美だ』
「……あぅ…」
『クスッ…』

その後耀を呼んで葵の立ってる姿を見せてやると
葵を抱き上げてクルクル回って顔中キスしまくって頬擦りしまくってた。

オレは最初の嬉しさもちょっと消えてナゼか腹が立つ…

『!!』
「しいな…葵凄いね ♪ 」

耀がオレを抱き上げてお互い向かい合う。

「ん〜〜チュッ ♪ 」

耀がオレにキスをする。

「機嫌直った?」
『別に……』
「そう?」


しいなはオレが葵に夢中になると機嫌が悪くなる。

それは葵の事が憎らしいとかじゃ無くてオレを葵に取られた気持ちになるから…

大人げ無いけどしいなはそんな自分の気持ちに気付いて無い…

それにしいなは…葵と同じ様にオレに愛して欲しいんだ…


「ふふ…しいな…」
『何ニヤニヤしてんだ…』
「ううん。」

オレは仔狼姿のしいなをギユッと抱きしめる。

葵とは違う柔らかさと小ささで…

「好きだよ…しいな…」
『知ってる…』
「あー」
「ん?」

葵がオレを見上げてオレを呼ぶから葵も抱き上げた。

「葵の事だって好きだよ。」
『オレの次にだけどな!』

「……ふぁ… へ ぷ し ゅ っ ! ! ! 」

『 !! 』
「あ!」

葵が何とも言えないタイミングでくしゃみをした。

……しいなに向かって…

『 あ〜お〜い〜〜〜!! 』
「……?」
「しいな…怒らないで…ワザとじゃないんだから…」
『いや…これはオレへの挑戦だ。』
「しいな…」


本当大人げ無い……



そんな事があった後…

立てる様になった葵は楽しいらしく何度も何度も立ったり座ったりを繰り返し
ハイハイで部屋中を這い廻り…本当にタフだ。

ジ ィ ー ー ー ー 

『ン?』

視線に気付いて目を明けると葵がまたベビーベッドの柵に捕まってオレを見てた。

『………』

オレは寝起きでぼーっと葵を見てた…
だからスッと柵の間から葵が手を入れたのも気付かなかった。

ム ン ズ !!!

『 ? 』

伸ばした手がオレの尻尾を掴んだのもぼーっとしながら見てた。

グ イ ン !!

『イッ!!!』

「あー」

『バッ…葵っ!イテッ!!』

グンっと尻尾を引っ張られて ド カ ン ! と柵に激突した!

『イテテテテ!!!バカ!葵離せっ!!』
「うー」
『!!!』

また加減無しで引っ張ってるっ!!

どうやら葵は柵の間からオレを引っ張りだそうとしてるらしい!無理だっつーのっ!!

そんな細い隙間から出れるかっ!!ってそんな事葵に判るはず無い!!

『よ…耀ーーーーーっっ!!!』

早く…来いっっ!!ってか来てくれっっ!!尻尾が……チギレるっっ!!


「何しいな?」

耀がやっとリビングに入って来た。
何じゃ無いっっ!!


「ん?あっ!葵!ダメだよ!!」

耀が葵に気付いて咄嗟に抱き上げた。

『ぐあっっ!』
「あ!!ごめん…しいな…」

葵がオレの尻尾を掴んだままだったのに葵を抱き上げるから
オレまで引っ張られて柵の頂点で引っ掛かった。

『…っ……』

しこたまお尻を柵の角にぶつけた!

「あ…葵しいなの尻尾離して!」
「あう?」
「あう?じゃないの!しいな痛いって!」
『いいから…早くしろ…』

「葵っ!!」

耀に怒られてやっと葵が尻尾を離した。

『…フグっ!』

ベシャリとマットの上に落ちてオレはしばらく動けなかった…

「大丈夫?しいな…」
『大丈夫な…訳あるか…尻尾チギレるかと思ったぞ…………葵〜〜〜!!』
「………」

葵は自分が何をしたかなんて全くわかって無い!

「は…早く元に戻るといいね…しいな…そうすれば葵に遊ばれる事無いよ…」
『…………』
「もう…葵ってばヤンチャなんだから…フフ…ちゅっ ♪ 」


『 だ ・ か ・ ら ぁ 〜〜〜 !! ヤンチャで済ませんなっっ!!!』



しいなの受難はまだまだ続く……頑張れ仔狼パパ!!