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  * 葵 (♂) : 狼の半獣と人間とのハーフ。3ヶ月で人の1歳半ほどに…





「ん?」

葵が生まれて3ヶ月…人の歳で言うと1歳半くらいらしい。
歩くのも大分上手になってたまに早歩きもする。

チョロチョロチョロチョロ…素早い。

ダイニングテーブルの椅子に座ってコーヒー飲んでたら
気配を感じて振り向くと椅子から垂れたオレの尻尾をジッと見てる。

「何だ葵オレの尻尾がうらやましいか?」

「っぽ?」

ちょっとは喋れる様になった…まあ片言だけどな。

「まあお前の尻尾はまだまだお子ちゃまの尻尾だからな。」

しかも満月の時の数日間だけだもんな…難儀な身体だよな…お互いに。

「ぷう!」
「ふふん ♪ 」

ファサっとオレの尻尾で葵の顔を撫でた。

「ふう〜〜!!」

葵がプルプル顔を振る。

「ホレ!」
「んっ!ん!!」
「くっくっ ♪ 」

くすぐったがる葵が面白くて何度も何度も葵の顔を尻尾で撫でた。

腹痛てぇーーー ♪ ♪

がしっ!!

「ん?」

腹抱えて笑ってたら隙を突かれて葵に尻尾を両手でがっしりと掴まれた。

「オイオイ…」

一気に冷や汗が流れる…
葵が掴んだオレの尻尾をそのまま大きく開けた自分の口に持って行ったから…

ガブッ!!!

「 イッ………テーーーーーーーーっっ!!!」

ガシガシガシガシ!!!!

「……っつ!!!ばっ…葵やめっっ!!イテテテテテテテ!!!!」

オレはそのままコーヒーカップを握り締めて悶絶する。

「葵っっ!!!やめろ!!!離せっ!!」

「……ぷ〜〜」

噛むのは止めたがまだオレの尻尾は葵の口が咥えてる。

「そのまま離せ。」
「?」
「わからないわけねーだろっ!その口を は・な・せ!!」

惚けやがって…
仕方なく葵に手を伸ばすと…

ガシガシガシガシ!!!!

「うあっ!!!ぐっ…!!!」

また噛み始めやがった!
何だ?こいつ…わかっててやってやがんのか…

こ…これは無理やり離すと噛み切られる??マジか?
くそ…こうなったら…仕方ない……

「耀!!!」

「ん?」

呼んでちょっとすると耀がリビングの入口からひょっこりと顔を出した。

「これ…どうにかしろ!」
「え?」

キョトンとした顔でオレに近付くとやっと葵に気付く。

「あ…何?葵…何してんの?あ!しいなに遊んでもらってるの?良かったね〜 ♪ 」

「アホかっ!!!尻尾噛み付かれてんだよっ!!良く見ろ!」
「え?あ…本当だ…美味しいの?葵?」
「?」
「そんなんじゃ無いって!いいから離させろ。」
「え?なんで?離れないの?」
「離そうとすると余計噛み付く。」
「……しいな…」
「ん?」
「また葵に何かしたんでしょ?」
「は?」

オレはギクリとなる。
耀はオレが葵をからかう事をあまりよろしく思ってない。

それはオレがやり過ぎるからでそれで何度も葵を泣かせてるから耀は
その事に関して最近とんでもなく敏感だ。

『葵はまだ赤ちゃんなんだよ!!』

そんな事は無い!もう立派な男だろ!
オレと耀を取り合う程なんだから!!

「しょうがないな…葵!しいなの事許してあげて。」
「何だ!その許してあげてってのはっ!オレは葵に許してもらうことなんて何1つ無いぞっ!」
「だって…しいなが何かしたから葵噛み付いたんだろ。」
「スキンシップだ!」
「…まあいいけど…」

呆れんな!

「葵…離してあげて。」

そう言いながら葵を抱き上げるが尻尾は離そうとはしない。

「ダメみたい。しいな…」
「ダメじゃない!どうにかしろ!!あと1回マジで噛まれたら尻尾ちぎれる!」
「ええ〜…う〜〜〜ん…」

耀が必死に悩んで考え込む。

「ああ!」

何か閃いたか?

「葵〜ちゅう〜〜〜〜 ♪ 」

「なっ!!」

耀が葵に向かって唇をちょっと尖らせてキスを迫る。

「ちゅ〜〜〜 ♪ 」

あっさりと葵はオレの尻尾を離して耀に振り向くとオレの目の前で2人のキスを見せられた!!

「ん〜〜〜 ♪ 葵いい子だね〜 ♪ ちゅっ ♪ 」

何度も何度も触れるだけのキスを目の前で繰り返される。

「耀ーーーーっ!!!」
「ん?」
「そんなにしてやる必要なしっ!!!」
「え?あ…」

葵を押しのけて耀の唇を強引に奪う。

「うっ…んん…しい…だめ…葵が……ううっ…ンッ…」

たっぷりと舌を絡めて濃厚なキスをして耀から離れた。

半獣の瞳の能力は耀には効かないがこう言うキスは格段に耀に効く。
だからオレが離れると耀はフラフラと立ってられなくなる。

「ふぁ…もう…しいな…ヒドイ…葵だっているのに…教育上良くないよ…」
「これも教育!あっという間に大きくなるんだぞ…半獣は…」
「そうかもしれないけど…恥ずかしいだろ…」
「誰に?」
「葵…に…」

当の葵は向き合ってるオレと耀の間で耀に抱っこされたまま
オレ達を見上げてる。

「お前も自分の女とこう言うキスをしろ。」

「ちゅ?」

「そう。耀はお前の母親だがお前の女じゃない!耀はオレの女!!わかったか?」
「そんなのわかるわけ無いだろ!もう…ホント大人気ないんだから…しいなは…」

「オレのもんはオレのもんだ!」
「その前に父親だろ!もう…」

そんな文句を言う耀を捕まえてさらに濃厚なキスで攻める。

オレの目の前でいくら息子でもキスなんていい気分じゃないんだよ!
それをわからせてやる。


そんなオレと耀を床に下ろされた葵がじっと見てて…


耀を攻める事に気を取られてたオレの尻尾にまた葵の手が伸びてたなんて…

オレは知らずにいた……