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「チッ!」

突然乗ってたバイクのエンジンが止まった。
ガス欠でも故障でもない。

ガソリンは満タンで毎日の整備点検は怠ってない!

今まで順調に走っててなのになんで止まる??


仕方なく1度降りてバイクを点検する。
と言っても夜道で月明かりでそんなに見えない…
仕方なくライターで照らすが微々たる明るさだ…

これは押して帰るパターンか?

「マジかよ…」

家までは約2km…バイクの大きさは400cc…重さはざっと200kg…
しかもこの先ちょいと上り坂…

せめて坂を上った所でエンストしてくれ…まったく…

「ってゴチてても仕方ないか…はあ〜〜帰ってじっくり調べてやる。」

「ナア〜〜」

「ん?」

「ミャ…」

「は?何だ?猫?ってでも何処にいる??」

鳴き声はすれど姿は見えずで…とりあえずその場で辺りを見回したが発見できず。

「気のせいか?」

それかただ通りすがっただけなのか…暗くてわからないし…

「さて…と…根性入れて押すか。」

いつまでもここで足止め喰らってても仕方ないし…

「ナア〜ナア〜ナア〜〜〜〜〜!!」

「は?」

さっきよりもどう見ても自分の存在感強調しまくりの泣き方だ…

「だから何処だって…」

仕方なくオレはその声の発生する場所を探して歩き出した。
別に放っておいて帰っても良かったんだけど気になる事も確か。

「どこだ〜〜もう1回鳴け。」
「ニャ…」
「………あのなぁ…」
「ナア〜」

「もう少し分かり易い所にいてくれないかな?」

足元を一生懸命探してたらちょっと離れた歩道の植えられた植樹の枝に
真っ白な仔猫が枝にしがみ付いて乗っかってた。

「降りれなくなったのか?まったく…ドジだな…」

何とか手の届く枝の高さで手を伸ばしたら仔猫の身体に届いた。

「よっと…じっとしてろよ…」

手の平の中に身体が乗って足は腕をまたぐ様にしがみついた。
そのまま静かに枝から下ろして地面に近い所まで腕を下げた。

「ほら。もう大丈夫だろ…」
「…………」
「ほら……降りろ!」

軽く腕を振っても必死に引っ付いて離れ様としない…

「おい…降りろって…」

「ニャ…ニャアーーー」

離れない……首を摘んで引っ張っても離れない…
手足1本1本引き離そうとしても爪を立てて腕に食い込む。

「いてててて痛いって………何だよ!お前!」

「フーーーー」
「何?オレに喧嘩売ってんのか?ん?」

オレの右腕に背中向きで引っ付いてる仔猫を覗き込んで話し掛けた…
ぎゅっと目を瞑って必死にしがみ付いてる。

「このままじゃ連れて帰っちゃうぞ。猫!」
「ナァ〜」
「知らないぞ〜お前の事猫鍋にして食っちゃうかもしれないぞ。」
「…………」
「ってわかんないか…はあ…どうするか…参ったな…」

別に動物愛好家でも猫が好きな訳でもないが…
こんな仔猫を力ずくで腕から叩き落とすほど酷い人間でもないと言うだけで…

「お前家は?どっかで飼われてんじゃないの?飼い主の所に帰れよ。
オレもこれからバイク押して帰んなきゃいけないからお前にあんまり構ってられないんだよ。」

「ナァ〜」

「お!」

そう鳴くと今までどんな事しても離れなかった仔猫が何とも上手に
オレの腕をトコトコと軽やかに歩いて肩に乗った。

「何?一緒に行く気?」
「ナァ」
「ナァって……はあ〜〜どんどん遅くなる…
仕方無いまた明日ここに来るか…じゃ今夜はウチにお泊りだぞ。猫!」
「………」
「シカトかよ…ったく…オレはこれからこの重いバイクを押して家まで帰るんだぞ…
お前何グラムだよ!その分重くなっただろうが…もう……ん?」

猫が片足に力を入れてオレの肩を何度か押す。
何だかそれが何か言ってる様で…何気なくエンジンを掛けると…

ドルンと快適な音がしてエンジンが掛かった!

「うお!掛かった!やった!!良かったぁーーーー!!これで押して帰らなくて済む。」

何となく視線を向けた仔猫の顔が自慢げに見えたのは気のせいか?

「お前のお陰か?なんて…な!よし!とりあえず帰るぞ!猫!」
「ニャ!」
「しっかり掴まってろよ!」

一応気を使って走り出す。
ホントいつもの速度に比べたらノロノロで…それでも猫にはキツイ様で…

「いてててて…爪!食い込んでる!首に!!」


仕方なく片手で猫を押さえて安全運転で家に帰った。