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今朝目が覚めたら飼い猫が女の子になってた。

しかもそれはオレが猫に愛情表現をし過ぎたからなんだそうだ…何でそうなるんだ?
しかも真白と愛し合えって事になって…

途中放棄は認められず最終的に真白と愛し合わなければ真白は自分の国に帰ってしまうそうだ…

そんな事が朝っぱらからあって…オレの思考回路はショート寸前で…
仕事が終わってやっとの思いで自分の部屋に帰って来たと言う訳だ…


「はあ……」

ドサリと大量の紙袋をリビングの床に置く。

「あー服だけでも出しとかないと皺になるじゃないか…」

自分のネクタイを緩めてどっこらしょと言う効果音が聞こえてきそうな動きで紙袋を持ち上げた。

「真白しまうからその中から洋服取ってオレに渡して。」
「ニャ ♪ 」
「!!……何してる?真白…」
「ニャ?おかえりだから。まだしてない。」

そう言ってオレの正面に回って首に腕を廻してワクワクした顔と瞳でオレを見つめる。
猫だった時の真白と同じ茶色の瞳で……

「………ただいま……チュッ!」
「ニャン ♪ 」

朝と同じ様に真白の頬に触れるだけのキスをした…
それだけでも真白は嬉しそうな声と笑顔だ。

「ほら下りて…」
「ハルキ…」
「ん?」
「どしてこうなる?」
「は?」
「こう?」

真白が笑ってる自分の顔を指差して言う…

「ああ…んーーー勝手になる。」
「?」
「嬉しいって…わかるか?」
「うれ…しい?」
「それ…嬉しいって事。」
「うれ…しい……」
「ほら…それ頂戴!」
「ん……」

結構な枚数をクローゼットに掛けて自分のスーツの上着を掛けてやっと終了…

「はあ…真白ご飯食べたのか?」
「ごは…ん…たべた。」
「そっか…オレは…後で食べるか……先に風呂入りたい…」

どうにも自分で作るのが億劫で…ああ…なにか買って来れば良かったと後悔した…

着替えを持って浴室に向かう。
ワイシャツを脱いでベルトに手を掛け………

「ん?」

「ニャ ♪ 」

「……………なっ!!何だよお前ここで何してる?」
「?」
「………」

ちょっと待て……

「ましろも ♪ 」
「なっ!!ダっ…ダメ!!!」
「?」
「ほら出ろ!!」
「ハニャ?」

クルリと後ろを向かせて洗面所から追い出した。

「あ…や…ハルキ…」
「後で使い方教えてやるから…そこで待ってろ!」
「ハルキ…」
「待ってろよ!」

真白を外に押し出してそう言い含めてドアを閉めた。

「ハルキ!!」

「…一緒になんて入れるかっつーの……」

そのまま背中で寄りかかってドアを押さえる。
ここには鍵なんて無いから…

バ ン !! バ ン !!

「!!」

背中のドアが思い切り叩かれた!

「ハルキ!いっしょ!ましろもいっしょ!!!」
「だからダメだって!もう一緒には入れないんだよ!!」
「いっしょ!!ハルキ!!ましろも!!!」

ずっとドアを叩きながら叫び続けてる。

「ダメだって言ってるだろっ!真白!!言う事聞け!!」
「……………」

やっと静かになった…
だって…仕方ないだろう……大人の…女の子と一緒になんて入れるわけ無い…

オレだって…複雑なんだから…
猫だった真白とのお風呂タイムはオレにとっても特別な時間だったんだ…

「……ふぇ……」

「ん?」

「 フニャアアアアアアアアアアア!!!!!!! 」

「うわっ!!何だ?」

「 ニャアアアアアアアアア!!!! 」

「真白?」

ビックリして慌ててドアを開けた。
目の前の床で涙をボロボロ流しながらヘタリこんでる真白がオレを見上げる…

「真白………」

「…………」

「 !! 」

真白がジャンプしてオレに飛びついて抱きついた!!

「ハル……キ…!!」
「……真白…」

「ニャ……どして…」
「ん?」

「どして…せなか…おす…ましろいやっていった……いっしょ…っていった…」

「真白…」

「にゃあ〜〜〜グズッ…」


ああ…オレ…また真白を傷付けたのか…

でもな……オレだって………


「はあー……わかった…一緒に入ろう…」
「ハルキ!」

オレに引っ付いてた顔を上げて途端に明るい顔をになる。

「あーあ…スゴイ事になってるぞ…顔…」
「!」

頬を伝ってる涙を手の平で拭ってやりながら思わずクスリとなる。

「ハル…キ…」
「ん?」
「これ…なに?」
「ん?」

真白が自分の涙を指で拭ってオレに見せる。

「ああ…「涙」だよ…」
「な…みだ?」
「そう……涙…」

そうか…真白は涙も知らないのか…

「どして?」
「泣くと出る。」
「なく…?」
「さっきみたいに辛い事や悲しい事があると出る。」

まあ他でも出るけど今はこの説明で十分だろ…

「…………」

真白はちょっと理解してないみたいだ…

「オレに背中押されるとココ変じゃない?」
「!」

オレは真白の胸の心臓よりちょっと上を人差し指で触れた。

「……へん…?」
「それが悲しい……辛い…かな…」
「かな…しい…つらい……」

そんな事を真白に説明しながら何でだか落ち込む…

「ほら…」
「ニャ!」

洗面所に置いてあるティッシュで真白のハナを拭いた。

「ハルキ…?」

「色々覚える事が一杯だな…」


でも…そんなに色々覚えても…

オレが何もしなければ全て無意味な事なんじゃないかと思ってしまう…



真白…何で 「 人 」 になりたいなんて思ったんだ…

猫のままだったら…何も悩まずに…ずっと一緒にいれたのに……