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「風間〜たまには付き合えよ〜」

「悪い!しばらく無理だ。」

「何だよ最近付き合い悪いぞ!」
「悪い!今度付き合うから…」
「そんなに猫が可愛いか?」
「……ハハハ…」

オレは笑ってごまかした。

仕事終了後危うく同僚に捕まりそうになって何とかかわした。
オレが猫を飼い始めたのはあっという間に部署内にバレた。
大体携帯の待受画面を真白にしたらあざとい奴が気付いて突っ込まれた。
男が猫の待受画面なんてウチの部署にはあんまりいないらしい…

「家に着くのは7時くらいか…」

初めて真白を1人で置いて来たからオレは仕事も手につかず…早く家に帰りたかった。


「おかえり〜ハルキ ♪ 」
「え?」

玄関を開けた途端真白の笑顔…
そんな事より何だよ…随分言葉がスラスラ喋れてるじゃん…

「ん ♪ 」
「え?あ……ただいま…チュッ!」
「フフ ♪ 」
「真白」
「ん?」
「随分スラスラ喋れてる様になったな。」
「テレビ…たくさん見たから。」
「だからってそんなにわかるものなのか?」

スーツの上着を脱いでネクタイを緩めながら後ろに立つ…浮いてる真白に話し掛ける。

「まえから少しは…わかってた…でもやっぱりむずかしい…
でももう少し時間がたてばハルキの言う事…もっとわかる ♪ 」

本当に嬉しそうに笑う真白…

「そっか…頑張ってるんだな…さて…先にシャワー浴びるけど…」

「ましろも ♪ 」

「………だよな…」

もう半分諦めてるオレ……



相変わらず服を脱ぐのは下手くそだ。

「ハルキ……」
「はぁ〜」

結局またブラのホックまで外してやった。

朝は嵌めてやって…一体何なんだか…

「いいかこっち向くなよ!」
「うん…でもどして?」
「どうしても!!一緒に入りたいなら言う事聞け!」
「……はい…」
「!!」

何だかその返事がちょっと気になって…

「ま…真白…別にオレは怒ってるわけじゃ…」
「うん……ハルキ…」
「ん?」
「おこるってなに?」
「え?………あ…んー……難しいな…」
「ふーん…」

昨日と同じで真白は自分の身体をコシコシと洗ってる。

「ハルキ。」
「ん?」
「ましろあらってあげる ♪ 」
「は!?」
「あらう ♪ 」
「ちょっと…ちょっと待て……わあっ!!」

自分の身体に泡をつけたまま振り向いた!

「だから…こっち向くなって…」
「?」

泡の下から見えてる真白の素肌…

本当に真っ白で…何気にボリュームのある胸にも泡がついてて…

半分泡で隠れてる胸の先に視線が釘付けになって……

「ハルキ…」

「!」

「これなに?」

「!!!」

そう言ってオレの下半身に手を伸ばした。

「わああああ!!!バっ…バカっ!!!」

オレは咄嗟に真白の手首を掴んだ。

「だってましろにはない?」
「………」
「?」
「無くていいんだよ!お前は女なの!オレは男なの!だからお前には無くてオレにはあるの!」
「おとこ?」
「そう!胸だってお前にはあるけどオレには無いだろ!」
「?………胸?」

そう言って自分の胸を見下ろしてる…そしてまたオレを見上げる。

「そうだよ!だから…」
「あらう。」
「………」

真白がスポンジでオレの胸を洗い出した。

「……くすぐったいから…」

その手を掴んで止めた。
人に洗ってもらうって言うのは加減次第でこんなにくすぐったいものなのか…

「ホント真白いいって…」
「ハルキましろのこといつもあらってくれた…ましろキモチよかったから…ハルキあらってあげる。」
「真白…」

そうだよな…真白オレが洗ってやると気持ち良さそうだったもんな…

「わかったけど…本当に…!?」
「あらう。」
「は?」

真白の掴んでる腕に力が入る。

「ま…真白?」

「ハルキ…ましろいや?」

「は?」

「一緒…いや?」

「真白……」

ワシャワシャワシャワシャ!!!

「なっ!!」

そんな不意を突かれて掴んでた腕の力が緩むと胸からお腹にかけてワシャワシャと洗われて…

「ぶっ!くすぐった……わっ!」
「ニャ!!」

笑ってオレがバランス崩れて真白が泡で滑って…
後に倒れる!

「真白!!」

咄嗟に浴室の壁に手を着いて真白の身体に片腕を廻したけど
ボディシャンプーの泡で真白の身体が滑る。

「くっ…!」

腕全体で抱き留めた。

「ハ…ルキ…」

「大丈夫か?真白…」

凄いエビ反りだ。

「オレに掴まれ…」
「?」

状況が飲み込めてない真白…ってかこの体勢…オレがキツイ!

「真白!来い!」
「ニャ ♪ 」

真白が腹筋で起き上がってオレの首に抱き着いた。

「はぁ〜〜」
「ハルキ ♪ 」

真白はオレが来いと言うと喜んで飛び付いて来る。

「ハルキ…」
「……」

掴まってる腕を緩めてオレと視線を合わせて来る…

「ハルキ…ましろと一緒…いや?」

「………嫌じゃない……嫌じゃないけど……」

「………ハルキ…」

「真白……なんで…」

「?」

「なんで「人」になりたいなんて思ったんだ…猫のままだったら…」

「ハルキと…」

「?」

「ハルキと一緒に…いたかったから…」

「真白…」

「「人」になって……ハルキの…だいじな人になりたい……」

「な……どう言う事だよ…」
「話せる様になって…ずっと言いたかった……」
「え?」
「ハルキ……」
「………」

なんだよ…なんでこんなドキドキ…

「…………」
「…………」

「真白?」
「えっと……?」
「は?」
「あれ?」

「もしかして…言葉がわからないのか?」

「……ハルキ…なんて言えばいい?」

「………な………」



そんな事知るかっっ!
そんなのオレが知りたいよっ!!!

結局肝心な事は…わからずじまいのまま…早々に切り上げて浴室を後にした…