16
マンションの入口に誰か立ってた。
年は真白と同じくらい…
真白とは反対の真っ黒な髪とオレと同じ様な浅黒い肌…
ちょっとキツメな瞳に勝気そうな顔…
ホンワカな真白のイメージとは真逆な印象だった…
彼女がかぶってた帽子を取ると…真白とは違う…真っ黒な猫の耳が…
真白と同じ様に……その子の頭にあった……
「君……」
「初めまして飼い主さん。あたしキララって言います。」
「え?…あ…あの…まさか…」
「そうよ。お察しの通り元は魔界の猫よ ♪ 」
「!!」
「どうしたの?」
「いや……」
堂々ときっぱりはっきりと魔界って言い切られた…ちょっとショック…
「ふーん…他の飼い主に初めて会ったけど…いい人そうね ♪ 」
「は?」
「ふふ ♪ チュッ ♪ 」
「なっ!!!」
いきなり頬にキスされた!
「今日は顔見に来ただけだから ♪ じゃあね。」
「………」
なんなんだ…訳がわからない…
「………フン!」
「………」
真白とすれ違い様にチラリと真白を睨んだ。
「……今のは一体何だったんだ……」
「え?」
「だから他の猫がオレに会いに来たって言ってるんだよ!」
そのまま米澤の部屋に駆け込んだ。
「何でだよ!」
「おかしいなぁ〜他の猫の情報は洩れないはずなんだけどな…」
「バレてんだろっ!個人情報漏洩だ!!」
「で?相手はなんて?顔見に来ただけ?」
「え?あ…いや…それが良くわからないんだよな…」
まさかいきなり頬にキスされたなんて言えないし…
「でも彼女にも飼い主…相手がいるはずだろ?」
「そのはずだけど…まあちょっと調べてみるわ。」
「頼んだぞ。」
とにかく自分の事が他人にバレるのも勘弁しろと文句を言い…
ひとまず米澤からの連絡待ちで部屋に戻った。
「………」
「真白?」
そう言えばさっきから真白は黙ったままだ…
「疲れたのか?」
「………」
「真白?」
「なんで…」
「ん?」
「なんでハルキあの人とする!」
「は?イテテテテ!」
真白がオレの頬を自分の手の平でゴシゴシ擦る。
「ダメだもん…」
「何が?って…痛いって!真白!」
「ましろだから…」
「え?」
「ハルキがドキドキするのはましろとなの!ずっとそうだったのに!ハルキあの人とした!」
「え?ああ…キスの事か?」
「キス?……そうキス!」
「あれは向こうがいきなり…」
「もうダメなの!じゃないとましろ…」
「じゃないと?」
「ここ変でやだ!」
そう言って自分の胸を押さえる。
「ここずっと変!ハルキがあの人とキスしてから!だからもうしたらダメ!!」
そう叫んでオレに抱き着いた…
「真白…」
「………」
オレにぎゅっと抱きついて…オレの胸に顔をうずめる真白……
それって…ヤキモチなのか…真白…
「真白…くっ着き過ぎ…」
「ンーー!!」
布団の中…いつも以上の密着度で…
「顔近いって…」
頬っぺたがくっ着く!
「………」
「もう機嫌直せよ…」
「…………」
「真白…」
「じゃあ…して…」
「は?何を?」
「真白にも…キスして……」
「!!」
またコイツは昼ドラか?
「ハルキ…」
「………チュッ…」
いつもと同じおやすみのキスを真白の頬にした。
「はいおやすみ。」
「………」
「何だよ…」
明らかに不満顔だ…
「……ンッ!!」
ガシッっと顔を両手で掴まれていきなりキスされた!!
覆いかぶさる様にされるから動けない…
「真…白……」
「ハ…ルキ…んっ…チュッ……」
「ふ……ん…ちゅ…」
だから…真白とのキスはオレには刺激的過ぎるって…
頭の中が真っ白になって…際限なく…真白の唇と舌を求めてしまう……
それを何とか意識を保つのが至難の技なんだよな…
このまま…何も考えず流れに任せてしまったら…
あっさりと…オレは真白を抱いてしまうんだろうか…
「真……白……」
「…ンッ…チュッ…クチュ……ふぁ……」
お互いが息もするのを忘れるくらいお互いの舌を絡め合う…
「真…白……」
「ハ…ルキ……」
「やめ……」
何とかオレの顔を掴んでる真白の手を掴んで離した。
「はぁ…はぁ……」
「ハルキ……」
「………」
その潤んだ瞳で見つめられるのは…今はちょっとキツイ…
「ましろずっと…ハルキのそばにいたい……」
「………」
「いたいよ……」
そう言うとオレの胸の上にいつもの様にもたれ掛かる…
「………」
「ハルキ……」
真白の気持ち…苦しいほどわかるけど……
オレは一体……どうするつもりなんだろうか……
未だに何も決められないまま…
でも…真白の頭に手を乗せてそっと撫でてる自分がいる……