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マンションの入口に誰か立ってた。

年は真白と同じくらい…
真白とは反対の真っ黒な髪とオレと同じ様な浅黒い肌…

ちょっとキツメな瞳に勝気そうな顔…

ホンワカな真白のイメージとは真逆な印象だった…



彼女がかぶってた帽子を取ると…真白とは違う…真っ黒な猫の耳が…


真白と同じ様に……その子の頭にあった……



「君……」

「初めまして飼い主さん。あたしキララって言います。」

「え?…あ…あの…まさか…」

「そうよ。お察しの通り元は魔界の猫よ ♪ 」

「!!」
「どうしたの?」
「いや……」

堂々ときっぱりはっきりと魔界って言い切られた…ちょっとショック…

「ふーん…他の飼い主に初めて会ったけど…いい人そうね ♪ 」
「は?」

「ふふ ♪ チュッ ♪ 」

「なっ!!!」

いきなり頬にキスされた!

「今日は顔見に来ただけだから ♪ じゃあね。」

「………」

なんなんだ…訳がわからない…

「………フン!」
「………」

真白とすれ違い様にチラリと真白を睨んだ。

「……今のは一体何だったんだ……」




「え?」

「だから他の猫がオレに会いに来たって言ってるんだよ!」

そのまま米澤の部屋に駆け込んだ。

「何でだよ!」
「おかしいなぁ〜他の猫の情報は洩れないはずなんだけどな…」
「バレてんだろっ!個人情報漏洩だ!!」
「で?相手はなんて?顔見に来ただけ?」
「え?あ…いや…それが良くわからないんだよな…」

まさかいきなり頬にキスされたなんて言えないし…

「でも彼女にも飼い主…相手がいるはずだろ?」
「そのはずだけど…まあちょっと調べてみるわ。」
「頼んだぞ。」

とにかく自分の事が他人にバレるのも勘弁しろと文句を言い…
ひとまず米澤からの連絡待ちで部屋に戻った。

「………」

「真白?」

そう言えばさっきから真白は黙ったままだ…

「疲れたのか?」
「………」
「真白?」
「なんで…」

「ん?」

「なんでハルキあの人とする!」

「は?イテテテテ!」

真白がオレの頬を自分の手の平でゴシゴシ擦る。

「ダメだもん…」
「何が?って…痛いって!真白!」
「ましろだから…」
「え?」

「ハルキがドキドキするのはましろとなの!ずっとそうだったのに!ハルキあの人とした!」

「え?ああ…キスの事か?」
「キス?……そうキス!」
「あれは向こうがいきなり…」
「もうダメなの!じゃないとましろ…」
「じゃないと?」

「ここ変でやだ!」

そう言って自分の胸を押さえる。

「ここずっと変!ハルキがあの人とキスしてから!だからもうしたらダメ!!」

そう叫んでオレに抱き着いた…

「真白…」

「………」


オレにぎゅっと抱きついて…オレの胸に顔をうずめる真白……

それって…ヤキモチなのか…真白…



「真白…くっ着き過ぎ…」
「ンーー!!」

布団の中…いつも以上の密着度で…

「顔近いって…」

頬っぺたがくっ着く!

「………」
「もう機嫌直せよ…」
「…………」
「真白…」

「じゃあ…して…」

「は?何を?」

「真白にも…キスして……」

「!!」

またコイツは昼ドラか?

「ハルキ…」
「………チュッ…」

いつもと同じおやすみのキスを真白の頬にした。

「はいおやすみ。」
「………」
「何だよ…」

明らかに不満顔だ…

「……ンッ!!」

ガシッっと顔を両手で掴まれていきなりキスされた!!
覆いかぶさる様にされるから動けない…

「真…白……」

「ハ…ルキ…んっ…チュッ……」

「ふ……ん…ちゅ…」


だから…真白とのキスはオレには刺激的過ぎるって…

頭の中が真っ白になって…際限なく…真白の唇と舌を求めてしまう……

それを何とか意識を保つのが至難の技なんだよな…

このまま…何も考えず流れに任せてしまったら…

あっさりと…オレは真白を抱いてしまうんだろうか…


「真……白……」
「…ンッ…チュッ…クチュ……ふぁ……」

お互いが息もするのを忘れるくらいお互いの舌を絡め合う…

「真…白……」
「ハ…ルキ……」
「やめ……」

何とかオレの顔を掴んでる真白の手を掴んで離した。


「はぁ…はぁ……」

「ハルキ……」

「………」

その潤んだ瞳で見つめられるのは…今はちょっとキツイ…

「ましろずっと…ハルキのそばにいたい……」

「………」

「いたいよ……」

そう言うとオレの胸の上にいつもの様にもたれ掛かる…

「………」

「ハルキ……」


真白の気持ち…苦しいほどわかるけど……

オレは一体……どうするつもりなんだろうか……

未だに何も決められないまま…

でも…真白の頭に手を乗せてそっと撫でてる自分がいる……