02

  順番が逆ですが 『 プロローグ 』 の出会いのお話です。(1年ほどさかのぼってます。)
  椎凪 : 耀の高校の美術の教師。(まだ耀にその事はバレてない。)
   耀 : 元気×2な女の子。椎凪と同じ高校の今回は1年生。(椎凪が教師だと知らない。)






「どこまでついてくんの?」

お弁当屋さんからの帰り道…ずっと付いてくる…

「恋人の事送ってくの当たり前でしょ?」
「こっ…恋人なんかじゃない!! なった覚えも無い!」
「さっき申し込んだらOKしてくれた。」
「OKなんかしてないっっ!!」

お弁当が出来るまでの間に 『 オレと付き合わない? 』  って言われて…

「断ってもいないよね〜〜 ♪ ♪ 」
「無理って言ったっっ!!」
「オレは無理じゃないって思ってるよ。」
「オレは無理って思って るから!!だったらハッキリ言うか…!!!」

言いながら彼の方に向いた途端スッと手が伸びてオレの唇に彼の指が優しく触れた…

「言わないで… 言ったらダメ…」

「!!!!」

オレは心臓がドキーンって…
今までそんな事言われた事なかったし…された事もなかったから…

「好きだよ…」

…彼の顔が近づいて来たのもわかってた…キスされるのも何となくわかってたのに…
なぜかオレは逃げなかった…いつの間にか目もつぶってた…
彼の唇がそっとオレの唇に触れた。

その時初めてキスされてるんだと自覚した…今更なのに…

「…んっ…やっ…オレ…が…子供だからってからかわないでよ…」

オレは自分で受け入れたくせにそんな事を言って逃げた…けどすぐ腕を掴まれて捕まった。

「…ぁ…やン…ンッ……」

さっきとは比べものにならないくらい 激しいキスされた。
オレがいくら逃げても簡単に舌を絡められる…
相手は大人の男の人できっといろんな事に慣れて…
だからオレなんか簡単に相手のされるが ままだ。

「ね?オレ達恋人同士だろ?」

耳たぶを唇で軽く触れながら囁く。

「ち…がう…違うもん…」

オレは自分の意志とは関係なく身体が 震えて涙が込み上げた…
考えてみたらオレキスしたの初めてだ…これが…オレのファーストキス…
こんな強引でディープなのが…?

「…!!…ごめん… 強引すぎたかな?ごめんね…」

そう言って頭をぽんぽんって撫でられた。
ほら…やっぱり子供扱いだ…って…ハッ!!ここが道のど真ん中だと気が付いた!!
すれ違う人達の視線が痛いっっ!!

「…!!…かっかっ帰る!!」

そう言えばお弁当買いに来てたんだ。冷めちゃう!!

「あ!ちょっと… 名前は?」
「え?…あ…」

名前も知らない人とあんな激しいキスしちゃったの?
オレ…一体どうしちゃったんだろ…

「耀…望月耀だよ…」

何故か素直に教えてしまった。

「耀くんか…オレは椎凪慶彦…椎凪でいいよ。明日11時にあのゲーセンで待ってる。」

「…行かないよ〜だ!!」
オレは あっかんベーをしながら答えて歩き続けた。
「来るまで待ってるからね。お昼ご馳走するから一緒に食べよう。」

そう言ってニッコリ笑っていつまでも手を 振ってた。



「誰か行くか!!」
「ん?」

家に帰って祐輔と2人テーブルを挟んで買って来たお弁当食べてる。
祐輔とは元々お隣りさんで 小1の時車の事故で祐輔の家族が亡くなってから
うちの親父が引き取ってそれからずっと一緒に暮らしてる。
その父親もオレの高校入学が決まった後に北海道に 転勤が決まって…
それからは2人きりだ。祐輔はお兄ちゃんみたいでいつもオレに優しい。
年上の彼女もちゃんといてやっと同じ高校に通える様になったから よかった。

「そうだ…明日オレ出掛けるけど耀は何か予定あるのか?」
「え?あ…オレも出掛ける…」

って何処に?

「フーン…何処に?」
「え?あ…友達の所…一緒にお昼食べようって…」
「フーン…」
「祐輔は和海さん?」
「ああ」
「そっか…デートなんだ。」
「うるせー」

祐輔は和海さんの事言われると照れるんだよな…面白い。

だけど…オレ何で出掛けるなんて言ったんだ?
ウソはついてない…けど…オレ行くつもりなのかな? わかんないや…
あんなに強引にキスするくせにでも優しくて…オレの事一目惚れって言ってた…
こんなガキんちょのオレに…やっぱりからかわれてるだ!!

騙されないぞっっ!!



「なんだ…やっぱり来ないじゃん…」

約束の時間5分前…
オレはあのゲームセンターが見える建物の影からこっそりと 覗いてる。
しかもオレは30分も前から此処で待機しててあの男が来るのを観察してる…
でも未だにあの男は現れない。

「やっぱりからかわれたんだ… 危うく騙される所だった!
あーオレのファーストキスが…!!チクショウ……うー…」

オレは1人ブツブツと文句を言う。

「騙してなんかないよ。」

「 うわっ!!! 」

いきなり耳元で声がした!!
「もうちょっとわかりやすい所で待ってて欲しかったな。」
言いながらニコニコ笑ってる。
「なっ…なっ…なっ…何で?!」
「えー?だってまともに待ってたら来てくれないでしょ?案の定こんな所で待ってたし。」
「まっ…待ってなんか無いから っっ!!!」
「じゃあこんな所で何してんの?」
「そっ…それは……」
「それにファーストキスだったんだ ♪ ♪ やったね ♪ ♪ 」
「…………」
オレは顔が真っ赤!!
「かっ…帰るっっ!」
オレは背中を向けて走りだそうとした…その時ぐっと身体に腕が廻された。

「帰すわけないだろ。」
「あ…」

力ずくで引き寄せられた。

「ちょっと…」

オレは焦って慌てて振り向いた。

「…ンッ!!」

振り向いた途端いきなり…キスされたっっ!!

「は…ンア…やだ…」

逃げても逃げても口を塞がれる。

「あ…やぁ…!!」

「怖くないから…」
「!!」

「キスだけだから…逃げないで 受け入れて…きっとオレがわかるから…」

「?」
言ってる意味が…わかんない…
「…ンッ!!…うっ…」

腕に力がまた込められてさらに抱き寄せ られた。
片手で抱き寄せられて片手で顔を捕まえられて逃げられない。

思い切り舌を絡ませてくるから…息が…出来ない…
何がオレがわかるだよ… こんなの…わかんないって…それにどんだけキスするんだよ…

「…ン…ン…」

?!…なんだ?オレ…この男に合わせて舌…絡ませてる?ちが…

「あ…ンア…」

何で?何でこんな声出してんの?

「好きだよ…」

キスしながら何で喋れるの?おかしいよ…

「好き…」

「ン…やめ…て…」

あ…喋れた…

「 ちゅっ ちゅっ じゃあオレの事好きって言って… 」

軽いキスされ続けてる…

「言わない…言わ…な…い…ン…」

何とか踏ん張った!!

「じゃあ言うまでキスするから。」

「…!!…ンーー!!!」

またフリダシじゃないか!!ちょっと…待て!!!



「…ハァ…ハァ…」

「なかなかしぶといね。」

まったく残念そうじゃない言い方…

「簡単に…言うわけ…ないだ…ろ…」

もうオレは息も絶え絶え…あんまりにも激しいキスを延々とされて
腰が抜けて自分じゃ立ってられなくて…支えられてやっと立ってる。

悔しい…!!

「ズルイ…ぞ…大人の男が…力ずくで…いたいけな子供に…こんな…」
「耀くんいくつ?」
「?…15…」
「ふーん…オレと10違うんだ。」
と言う事は…この人25…?
「15じゃもう子供じゃないだろ?あーでも大人でもないか…?」
「オレにこれ以上変な事したら警察に訴えてやる…」
もう涙目でも構うもんか!!
「しないよ…クスッ…キスだけって言ったでしょ?」
「………」
キスだってまさかこんなのとは思わなかったよ…
「何であんないっぱい…キスするんだよ!」
もう文句言うしかオレの気が治まんない!!

「え?簡単だよ。耀くんをオレのモノにするため!」

「 !! 」

恐ろしい事ニッコリと笑って言うなっっ!!

「やっぱり腹黒な奴なんだっ!!オレもう帰る!二度と会う事無いからっ!!」
「じゃあ コレオレが預かってるからね ♪ 」
「え?」

そう言って片手に持ってユラユラと揺れるのは……

「あーーーっっ!!オレの携帯っ!!!いつの間に…」

オレは自分の服のポケットを慌てて探した…ってあるわけ無いじゃんっ!
アイツが持ってるんだから!!
さっきのどさくさに紛れて取られたっっ!!

「返せっ!!」

飛びついて奪い返そうとしたけど届かないっ!!
身長差20cm以上あるっっ!!余計悔しいっ!!

「ダメ!ちょっと待って!…っと…」
「あ!何してんだよっ!!」
アイツが自分の携帯を出して勝手に赤外線で情報写してるっ!!
「これで耀くんの携帯番号ゲット!!っと…」
「ドロボーっっ!!プライバシーの侵害だぁっ!!」
オレは喚いて…でも無駄なあがき…
「オレのも入れといたからお互い様って事で。」
「いいもん… すぐ消してやるっ!!」
「いいよ…それでも…」
「…………」
「じゃあ返してあげるからオレの事 『 椎凪 』 って呼んで。」
「え?」
「だって今まで1度もオレの事名前で呼んでくれてない。だから!」
「なんで…そんな事…」
「なんでそんなに意固地になるの?ただ名前呼んでっていってる だけなのに?」
「…………」
オレは視線を逸らして不貞腐れてる…だって…なんかシャクにさわるじゃん…
「携帯返して欲しくないの?」
上から目線で 見られて言われた…ちぇっ…

「携帯…返して…椎…凪…」

「はい!」

元気良く返事してオレの目の前に携帯を下ろしてくれた。
オレは両手で 受け止めた。
…でもストラップはまだ椎凪が持ったままだ。

「……離してよ…」
「もう1回呼んで…」
「…えー?…………椎…凪…」
「もう1回…」
「…………椎凪…」
「なに?耀くん…」
「……オレの事…からかってるんだろ?オレが子供だから…」
離してもらった携帯を両手で握り締めてそんな事を 聞いてた…何でだろ?
「からかってなんか無いって…言ってるよ…最初っから…」
「ウソだ…」
「ウソじゃないよ。別に今すぐ信じてなんて言わないよ。
少しずつわかってくれればいいから…その為に沢山デートしよう。」
「……変な理屈……」
「そう?」
「それに男と付き合いたいなんて可笑しいよ。 椎凪オレよりずっと年上だし…
普通の女の人相手にすればいいんだ!何でオレ?からかってるとしか思えないよっ!!」
「言っただろ?男でも決めてたって… 一目惚れだって…」
「それもウソだ…オレなんかに一目惚れなんてするはず無い!」
「そんな事言われたって本当に一目惚れなんだから仕方ない。 歳も関係ない。
男でも女でも関係ない。以上!わかった?」
「……余計わかんない…」

大体誰とも付き合った事無いし…そう言えば好きになった奴も いなかった…
なのにいきなり年上の…大人の男で…出会って2度目でディープ・キス?
最初なんてロクに話もしてないのに……

もう信じらんないっっ!!

「ほらお昼食べよう!こんな所でいつまで話してても仕方ないから。
もっと別な場所で耀くんとお喋りしたいよ。」
「オレ沢山食べるよ。いいの?」
「いいよ。誘ったのこっちだもん。それにオレ年上だし彼氏だし。」
言いながら肩に腕を廻された!
「彼氏なんかじゃ無いからっ!!もうくっ付きすぎっ!! 離れろっ!!」
無駄だと思いつつ椎凪の身体を押し戻した。
「何食べたい?耀くん。」
まったく気にも留められてないっ!!
「無視すんなっ!! いいよそこのファミレスで!!」
「あ…なんか投げやり!!もっとムードのあるトコ行こうよ。個室がある所とか。」
「行くかっっ!!怪しすぎだろっ!! 犯罪だぞ犯罪っっ!!」
「同意の上じゃん。」
「同意なんかしてないっっ!!こっちだってばっ!!こっちっ!!」

何気に別な場所に行こうとする 椎凪を何とか健全なファミレスに連れて行った。


「はぁ〜〜疲れたぁ…」

今日は高校の登校日。
まさか高校生にもなって夏休みに登校日が あるなんて思わなかった…
どんだけ先生に信用されてないんだ…今時の高校生!!
そんなハメ外さないって…特にオレは…
なんて思いながら連日の椎凪との デートを思い出してる…
そりゃ…あんなキスしちゃったけど…あれ以降あんな激しいキスはしてないもん。
軽いキスなら…その…時々…ってあれは椎凪がいきなり するから…ブツブツ…

オレは椎凪に誘われると何だかんだと言いながら…デートしちゃうんだよな…
まあご飯につられてるのもあるけど…椎凪からは何て 言うか… 『 いやらしさ 』 が感じなくて…
あんなにキスされても…抱きしめられても…嫌悪感も無い…何でなんだろ??
まあ未だにサラシは撒いて男のフリはしてるけど…
…にしても暑い…
早く帰ってクーラーのきいた部屋で冷たいジュースでも飲みながらのんびりと…

なあんて思ってたら…

「耀くん?」

「え?」

この声って………椎凪?

呼ばれて視線を向けると……
目の前に驚いた顔で立ってる椎凪がいた…

何でそんな顔してるの…椎凪?オレ何か変?

ん?んん?んんんっっ???
あっ!!!変って…そう言えばオレって今…

制服着てるんじゃんっっ!!!!ヤッバーーーーーっっ!!!


オレは膝上までの短いスカートの制服姿で……
未だに驚いてオレを見てる椎凪とお互い見詰め合っていた。