03

  順番が逆ですが 『 プロローグ 』 の出会いのお話です。(1年ほどさかのぼってます。)
  椎凪 : 耀の高校の美術の教師。(まだ耀にその事はバレてない。)
   耀 : 元気×2な女の子。椎凪と同じ高校の今回は1年生。(椎凪が教師だと知らない。)






「へ〜女の子だったんだ…」

「………」

夏休み…高校の登校日で制服姿だったオレをばったり会った椎凪に見られた…
膝上のミニスカート…サラシも 巻いてないからしっかりと胸の膨らみもわかる…
オレは何も言えず…出来るならこのまますっとぼけて逃げちゃいたかったけど
きっと直ぐに捕まるのは目に見えて たから諦めた。


「まぁ半分は信じてなかったけどね…
抱いた時の身体の感じが男には思えなかったし…」

タバコを吹かしながら横目で言われた。
抱いたってなんだっっ!!紛らわし言い方しないでよっっ!!

ばったり会った場所から直ぐ近くのファミレスに入った。
向かい合って座って…何で オレが 『 オレ 』 って言うのかも話した。

でも…椎凪の視線が痛いな……

「あ…ひどい…オレの言う事信じてなかったんだ…」
とりあえず強気な態度を前面に 押し出した。
「人の事騙しててそんな事言えるの?」
ちょっと睨まれた。
「ぐっ…だって…最初は…」
あっさりと敗北した…
「ナンパ断る口実?」
「…うん…」
「ま!仕方ないっちゃ仕方ないけどね…」
「………」

う〜〜なんか針の ムシロだよ…

「じゃあこれでオレ達が付き合うのになんの障害も無いわけだ。」

頬杖を付きながらニッコリと椎凪が笑う。
「や…それは…その…」
オレは今までの自分の態度を棚に上げて返事を渋ってた。
「何?何か他に問題でもあるの?」
「………」

そうなんだよな…今までだって散々デートだって してるし
キスなんか何回してるって…だから断る理由が無いんだよな…

それでもオレが椎凪の事 『 好き 』 って言って無いから
オレ達はまだ付き合って 無いって事で…それは男同士って事だったからで…

椎凪も何となく強引には言って来なかったって言うのがあったんだけど…
今その障害は無くなったって 事で…

「何でオレと付き合えないの?」
「え?何で?」
「そ!だって男同士じゃ無いんだからもう何も問題無いじゃん!」
「…えっと…」
オレは答えに詰まる…
「いないとは思うけど他に好きな奴がいるとか?」
「ううん…」

いないんだよな…これが…いたら堂々と断るのに…
ああっっ!!…いるって言えば良かったんだぁ…ってきっとすぐウソがばれるな…
椎凪相手に自信ない…

「じゃあオレの事がキライとか?」
「えっ!?」
そうくる?
「………」
「キライ?」
「う…あ…キライじゃない…よ…」

バカァっっ!!キライって言えば良かったのに!!

「じゃ好き なんだ!」
うわっ…もの凄い笑顔だ…
「え?いや…そーとは……」

オレはもうしどろもどろだ!
視線も椎凪から逸らして…って言うか合わせられない…

「だっ…だってさ…オレ誰とも付き合った事無いし…」
「それは嬉しいな!オレが初めてなんだ ♪ ♪ 」
「う…それにオレなんかと付き合ったって愉しく無いよ…」
「付き合って無い今でも愉しいよ ♪ ♪ 」

ああ言えばこう言われて…オレはいっぱいいっぱい!!

「…もう…どうせ見た目女なのに男だったから 物珍しかっただけだろっっ!!!
もう女だったってわかったんだからいいじゃんっっ!!他に…」

もうどうしていいかわかんなくて逆切れに近い文句を 言った!

バ ン ッッ !!!

ビクンッ!!

椎凪が目の前のテーブルを思いきり叩いた!
オレはいきなりの事でびっくりして… 黙っちゃった…

「オレそんな男じゃないよ。」

今まで見た事の無い…暗くて重い…椎凪の瞳…そんな瞳で見つめられた。

「………」
「耀くんオレの事そんな男だと思ってたんだ…ヒドイな…」
ワザとらしくテーブルに肘をついて嘆いてる…掌で顔まで覆って…
「な…何だよ…オレを悪者に しないでよ…」

「あのね言っただろ?一目惚れだって…男でも女でも決めてたって。
オレは耀くんの全部が好きなの。その顔も声も喋り方も性格も姿形 全部ね!!」

「………」
オレは自分でもわかる…顔が真っ赤だって…

「オレは耀くんが好きで耀くんもオレの事が好きなんだから
だからオレ達付き合うんだよ ♪ ♪ わかった?」

「…うん…」

なんか…勢いと雰囲気で丸め込まれた気がするけど…ナゼか納得した。
きっと本当はずっと前から椎凪の事が好き だったんだ…
初めてゲーセンで抱きしめられた時から…
オレの方が椎凪に一目惚れだったのかもしれない…
だからいきなりキスされても嫌じゃなかったんだ…

椎凪は遊びかも知れないけど…
オレはまだ椎凪がこんなガキのオレなんかの事本気で相手にするはず無いって思ってる。

「じゃあ今から正式にオレ 達恋人同士だからね。」
「…うん…」

椎凪が嬉しそうに笑う…
オレはちょっとだけ胸の奥がチクリとなる…オレは本気で椎凪の事好きなのかな…
きっと好きは好きなんだと思うけど…

「好きだよ…やっと恋人って認めてくれた。これからよろしくね!」
「あ…」
「チュ…」

顔を椎凪の手で 押さえられてお店の中だったのにキスされた!!!

「フフ ♪ ♪ 」
「…もう…」
「嬉しいなぁ…」
椎凪はニコニコだ。
「その制服って?」
「あ…旺華南高…」
「ヘェ…なんか制服姿の耀くんもいいね。生足でそそられる ♪ 」

「…!!…椎凪オレが女だってわかった途端ヤラしい…やっぱりウソ だったんだ…」

「え〜嫌われると思って今までずっとそう言う事言うの我慢してたのに…
恋人にそそられちゃだめ?」
「今まで我慢してたって… 男だと思ってたオレにもそう感じてたの?」
「当然でしょ?男だってオレは構わないもん ♪ 」
「…………」

だよね…だよな…男の…人なんだもんな…
大人とか関係なく…そうだよな…そう言う事考えるのもおかしくないよな…
オレはいきなりそんな事に気が付いて…ドキドキしてきた…

「大丈夫。いきなり押し倒したりしないから。」

ニッコリ笑顔で言われたっっ!!

「あっ…当たり前だろっっ!!!恐い事言うなっっ!!」
「可愛いなぁ耀くんってば ♪ 」
「オレにやらしい事したら即別れるからなっっ!!」
「キスはいやらしい事じゃないんだ。良かった!」
「…する場所に よるからっっ!」
「細かいなぁ…耀くんってば…」
「慎重って言ってよ!オレそんな軽い奴じゃないからっっ!!」

「軽いんじゃなくてオレに抱かれる 勇気が無いだけでしょ?」

「…!!!」

テーブルに片肘付いてバカにした眼差し向けられたぁ!!

「そ…そうやってオレがガキだからって バカにすんなっっ!!」
「バカになんかしてないよ。まぁ気長に待ってるから!」
「待ってなくていいからっっ!」
「それは直ぐにでもオレに抱かれても 良いって事かな?」
「そうなる前に別れるから!」
「え〜交際初日で別れ話?」
「そうならない様に1日でも長く続けば良いね!」
あっかんベー付きで 言ってやった!
「フフ…大丈夫!オレ達はずっと付き合うから…」
「…夢のまた夢だね!」
「きっと相性いいよ。」
「なんの相性だよ!ホントヤラ しいなっっ!!」
「全部だよ…今にわかるよ。」

そう言ってまたニッコリ笑った…


その日…初めてオレに恋人が出来た…
10歳年上の素性の 良くわからない男…仕事は自由のきく仕事なんだって。
それも何となく怪しいんだよな…
知り合って2週間ちょい…なのにキスは何百回もしてる…(多分…)
椎凪が暇さえあればするから…軽いキスから頬に…オデコに…頭に…

椎凪の方がオレよりかなり背が高いから腕を廻されると逃げられ無いし
頭なんか狙われ放題…
最初は反抗してたけど段々面倒くさくなって…されるがままになった…
祐輔が知ったら…驚くだろうな…今のところバレてはいないと思うけど…
祐輔勘が鋭いからなぁ…いつかバレちゃうよな…きっと…

そうなる前に自分から言った方がいいかな…
なんて考えながら言えない自分がいて…

このあと更に言えない事が待ち受けていようとは…

オレはその時夢にも思わなかったんだ…