04

  順番が逆ですが 『 プロローグ 』 の出会いのお話です。(1年ほどさかのぼってます。)
  椎凪 : 耀の高校の美術の教師。(まだ耀にその事はバレてない。)
   耀 : 元気×2な女の子。椎凪と同じ高校の今回は1年生。(椎凪が教師だと知らない。)






「え?」

オレはオハシをくわえながらそんな声を出した。
今オレと祐輔は家の近くのファミレスで夕飯を食べてる。

「だから今度の日曜から空手の 合宿で一週間オレいないっつってんの!」
「あ…え?」
オレは昼間の出来事で頭がいっぱいで…祐輔の話も上の空だ。
「毎年行ってんだろ?」
「あ…そっか…今までは親父達がいたのか…」
「耀一人で平気か?友達の所泊まるか何なら親父んとこ行ってるか?」
「え?…あ…一人で大丈夫だよ。ご飯は 買えば何とかなるしさ。
親父の所なんてうるさいからヤダ!それに友達の所泊まってもいいし…」

そう言った時椎凪の顔がふと浮かんだ…

ハッ!!!なっ何考えてんだ!!オレってば…
自分から狼の家に出向いてどうする!!危ない危ない!!


心の準備も定まらないままあっという間に祐輔の出発の日が来た。

朝早く玄関で見送って…リビングのソファで一人ぼーっとしてた…
今日から一週間オレ一人か…祐輔は空手の合宿って言っても
和海さんも一緒なんだよな… 同じ道場なんだもん…

和海さんはオレ達の1コ上の先輩で同じ中学だった。
祐輔とは子供の頃から同じ空手の道場に通ってて…
一体何があったのか祐輔が中2の時なんと祐輔から 交際を申し込んで
2人は付き合う事になったんだよな…
あの祐輔がどんな顔して言ったのか…とっても興味があった。
その後先に高校に進学した和海さんを追う様に
オレと祐輔も同じ高校を選んだって言うわけで…

「結構ラブラブなんだよな…あの2人…はぁ… ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ …ン?」

朝っぱらから携帯が鳴った。
見なくてもわかる…椎凪からだ…椎凪は 毎朝メールを送ってくる…
その日会える時はそこで約束して出掛ける。
今日は何だか椎凪からのメールにホッとしてる自分がいた…

「3時か…随分半端な 時間だな…
でもまいいか!椎凪に夕飯食べさせて貰おうっと!へへ ♪ ♪ 」

ご飯をおごってもらうのはいつもの事で椎凪は 『オレは年上で社会人で男だから!』
って言ってオレに払わせない。
確かに割り勘って言われたら困るけど…

『まさかその見返りに変な事要求するつもりじゃないよね?』

って疑いの 眼差しを向けたら

『まさか!オレはそんなセコい男じゃないよ!』

って言われた。
そんな言葉通り椎凪はその事を理由に何も言って来ない…


「え?今日は夕飯一緒に食べれるの?」

椎凪がキョトンとした顔でそう言った。
いつもは祐輔が帰って来る前に家に帰らなきゃいけなかったから
あんまり 遅くまで椎凪とは一緒にいれなかったんだけど
今日は祐輔はいないから気にする事も無いし…

「じゃあオレん家で夕飯食べる?オレ料理得意だから作って あげるよ。」
「えっっ!?椎凪ん家?なんか…怪しいな…」

絶対怪しいと思う!!

「そう?まぁ無理にとは言わないけど…オレ何でも作れるんだけどなぁ…
デザートだって OKなんだけどなぁ…」

わざとそんな言い方をしてるのはわかってたけど…オレは…

「ゴクリ…」

と喉が鳴った。


「いい?ホントに変な事しないでよ!!」

オレは何度も念を押す。
食欲の 誘惑に勝てず椎凪の家に行くくせにそんな事を言ってるんだ…
「はいはい…」
椎凪は呆れてるのと面白ろがってるのと色々だ。
「ホントに作れるの?」
椎凪を見上げて聞いた。
さっき2人でスーパーに寄って必要な材料を買った。

「耀くん中華好きなんだね。大丈夫任せて!飛び切り美味しいの作ってあげる。」

椎凪が繋いでた手を自分の方に引き寄せてオレを呼ぶ。

「 ちゅっ 」
「…ん…」

辺りには人がいなくて…オレは背伸びして椎凪とキスを した。

「…ん!?」

ポツリと顔に何か当たった。
「そう言えば雷鳴ってたっけ…」
「椎凪…余裕やってる場合じゃないよ!!」

さっきから空を見上 げたまま立ってて動こうとしない…
夏の夕立だ…あっという間に大粒の雨が落ちて来た。

「椎凪!!」
「……濡れていこうか…耀くん…」

椎凪が 優しく微笑んでオレを見る…

「………………やだ!!」

オレはハッキリきっぱり断った!当然だろ?

「!!……耀くんっっ!!!ムード無いっっ!!」

椎凪はオレが女の子だってわかってもオレを耀くんって呼ぶ…
最初に男だと思ってて『耀くん』って呼んだのが気に入ったのと
『くん』で呼べば他の人がオレを男だと思ってちょっとは 手を出さないだろうって…

そう言うものなのかな??



「ちゃんと拭くんだよ。」
「わかってるよ…」

オレはタオルで濡れた髪を拭きながら椎凪の部屋の隅に立ってる。

「何でそんな端っこにいるの?」
「だって…」

結局あの後チンタラ歩く椎凪を引っ張ってやっと椎凪の住んでるマンションに辿り着いた。
ワザとゆっくり歩くから椎凪のマンションに 着いた時は全身ずぶ濡れで下着まで濡れた…
だから椎凪の部屋でシャワー浴びる羽目になって…
今オレの脱いだ服は乾燥機付きの洗濯機で回ってる…
1時間は乾かない…だから…今オレは椎凪のシャツを借りて着てると言う訳で…
しかも…シャツの下は…オールヌードと言う訳で…椎凪の傍に行けるはずも無く…

「何もしないよ。」
「そんなのわかんないだろ…」
何でこんな事に…
「コレ狙ってずぶ濡れになったんだろ…」
「まさか…たまには濡れるのも いいかなぁ〜〜ってさ ♪ 」

椎凪もシャワーを浴びて…しかも上半身裸のままだ…
ちょっと小麦色の肌で筋肉質でも無くてだからって痩せてるわけでも 無い…
祐輔よりも背が高くて…がっしりしてて…

大人の…男の…人なんだよな…

「そんなに見つめられると照れるんだけど。」
「…!!み…見つめて 無いからっっ!!」
「そう?おかしいな…背中にメッチャ視線感じてたんだけどな。」

椎凪が約束通り夕飯を作りながら余裕でオレと話してる。

「部屋… 綺麗だね…」
唐突に切り出した。
「そう?オレ家事全般得意だから。」
「…女の人が片しに来てんじゃないの?」
オレは思いきり疑いの眼差しで椎凪を 見た。
「ハハハ…オレ女の人此処に連れて来たの耀くんが初めてだよ。」
「ウソだぁ!!女の人と付き合ったのオレで何人目?」
「え?耀くんが初めてだよ。」
「またウソつく!!」
「ウソじゃないよ。今まで彼女なんて必要なかったから…」
「必要なかった?」
「そう…」
「!!!」

椎凪が振り返って オレの方に歩いて来た。
オレはびっくりして壁際に逃げた…って失敗だったとすぐに後悔した。
椎凪が両手を壁に付いてオレを捕まえた…やっぱり…

「耀くんの為に恋人の場所空けといた。」

「はぁ?」
「だから耀くんはオレにとって初めての彼女!!フフ ♪ ♪ 嬉しい?」
「べっ…別に…」
「またまたぁ…照れちゃって!」
「照れてないです!!大体こんな年下相手に嬉しそうに言うなっ!!」
「だって嬉しいんだから仕方ないじゃん。もう少しで 出来るから待っててね。ちゅっ」
「ンッ!」

またオデコにキスされた。



「……うわぁぁぁ…」

オレはテーブルの上から目が離せない… だって…だって…
テーブルの上にお店で出て来るのと同じ料理が並んでるんだもん!!

「さぁどうぞ!」
「い…いただきます!」

オレは遠慮しないで料理に箸をつけた。



「ふわぁ…美味しかったぁ!!」
「よかった ♪ 満足してくれて。」
「ウソじゃなかったんだ…」
「これからも耀くんの為に作ってあげるよ。」

「ホント?じゃあ今週ずっと作ってもらおうかな!オレ1人でどうしようかと思ってたんだぁ ♪ 」

「え?」

「…!!…あ…やばっ!!」

オレはつい 口が滑って椎凪には絶対喋っちゃいけない事を簡単に口に出しちゃった!

「耀くん1人ってどう言う事?」
「…え?いや…何でも無いよ…ハハハ…」

「耀くん!正直に話さないと今すぐベッド連れてくよ。」

「えっっ!?」

椎凪ならやりそうで怖い…だから仕方なく話すしかなくて…


「何でそんな大事な 事黙ってんの?
一週間も耀くん1人なんて危なくて帰せるわけないだろ!!」
「だ…大丈夫だよ…そんな大袈裟な…」

「何言ってんの!
今まで用心棒的な彼が いたから親がいなくても安心してたんじゃないか!
それを無防備のいつでも襲って下さい的な子ウサギちゃんが
1人でのほほ〜んとしてたらあっという間に変質者の 餌食だよ!!!」

「!!…な…なんか…エライ言われようなんだけど…」
「本当の事だよ。」
椎凪が真面目な顔で言う。

「一週間オレん家泊まりに おいで!これは彼氏の命令!!」

「えーーー!?ヤだよ…」
「なんで?」
「だって…だって…さ…」

「美味しいご飯作ってあげるから。お願い…」

お願いの瞳で訴えられた…ダメだ…負けそう…

「…じゃあ…変な事しない…?」
「…?!変な事…?」
「うん…オレを襲ったりしない?」
「………多分。」
「えーーそれじゃやっぱり止めとく!!」
「耀くん!!」
「やだもん!!」

「ふ〜〜ん…知らないよぉ…夜中に物音がして…
目を開けたら見知らぬ男が 立ってるかもよぉ…
それとか怪奇現象だって有り得る…ホント1人で大丈夫?」

「………ヒドイっっ!!椎凪!!そうやってオレを怯えさせてさっっ!!」

オレはちょっと半ベソ…

「だから…泊まりにおいでってば…優しくして甘えさせてあげる…
美味しいご飯たくさん作ってあげる…」

椎凪の手が伸びて 椎凪の指が優しくオレの頬を撫でていく…

「オレがいつも傍にいてあげる…ね…耀くん…」

椎凪の親指がオレの唇を優しく撫でてる…
それがくすぐったくて …気持ち良くて…ふにゃんってなっちゃう…

「…あ…」
なんだ?何でこんな声が出るの?
「……んっ」

椎凪がテーブルの向こうから身体を乗り出して…
オレの顎を軽く持ち上げてキスをした…

「…ンア…」

久しぶりに舌を絡めたキスをした…
オレはこのキスをされると身体から力が抜けちゃう…

「ふにゃあ……」

頭ではわかってるけど身体が言う事を利かなくなる…

「おいで…耀くん…」

椎凪がイスから立ってオレをお姫様抱っこで抱き上げた。
その間も舌を絡ませたキスを止めない…

ダメだ…このままじゃ…オレ…
そんな事を思っても抵抗なんて出来ない…ううん…しない……の?

そのままふんわりと椎凪のベッドの上に寝かされた…

「…椎凪…何すんの…」

聞きながら着てるシャツが気になった…だってオレ…シャツの下…裸だもん…

「ン?気持ち良いこと…」
「やだよ…オレまだ…したくない…や…」

椎凪を 見上げて…不安げな声で呟いた。

「…………しないよ…しない…しないから泣かないで…」

「え?……泣いてる?オレ?あ…ホントだ…」

手の甲で目を擦ったら涙で 濡れた。

「…キスだけ…させて…」

「え?…ンッ!!」

返事をする間もなく口を塞がれて…
首の後ろに腕を入れられて少し頭を持ち上げられた。

や…ちょっと…いつもと同じ舌を絡ませたキスなのに…

今してるのは…『大人のキス』だ…


「…ん…う…」

オレはそんなキスを受け止めながら…
…だんだん…頭の中が真っ白になって……意識が無くなった……