05

  順番が逆ですが 『 プロローグ 』 の出会いのお話です。(1年ほどさかのぼってます。)
  椎凪 : 耀の高校の美術の教師。(まだ耀にその事はバレてない。)
   耀 : 元気×2な女の子。椎凪と同じ高校の今回は1年生。(椎凪が教師だと知らない。)






「……耀くん…」

「……ン…」

誰かがオレを呼ぶ…オレは更に布団に潜り込む。

「おはよう。耀くん…」
顔の布団だけ退かされて… 眩しい…
「…ん…おはよう…祐輔…」
起こしに来るのは祐輔くらいだから…

「彼氏の名前間違えないでよ…耀くん。 結構凹むんだけど…」

「…!?…」

彼氏?それにこの声!!

「椎凪っっ!!」

思いっきり跳び起きた!!
「おはよう耀くん。」
ニッコリと優しい笑顔だ…
「あ…おはよう…椎凪…え?オレなんで??」

オレはパニック!!!
ただでさえ寝起きは寝ぼけるのにいきなり椎凪の笑顔なんて…

「昨日オレの所に泊まったでしょ?忘れた?」
顔を覗き込まれた。
やだ…オレ… 顔変じゃないよね?
「………」
オレは無言で首を振った。
「じゃあ昨夜の事…覚えてる?」
「ゆ…昨夜?」

慌てて昨夜の記憶を辿る… え?昨夜…
椎凪と一緒にご飯食べて…キスされて…そのまま…………記憶無いっっ!!!

「可愛かったなぁ…昨夜の耀くん… オレの腕の中で…」

椎凪がオレの目をまっすぐ見て笑いながらそんな事を言うから…

「え?え?ええっっ!?」

かっ… 可愛かったって…え?腕の中でって??どういうことぉ?

「オ…オレ…もしかして…椎凪…と?」

「 ニ コ ッ  」

「ええーーーーっっ!!!」

だ…だってオレ全然覚えて無いよーー!!か…身体だって変な所無いし…
ってそうだ…オレシャツの下…何も着てなかったんだっっ!!

「え?ホントに??オレ椎凪と?」
「………ニコ。」

椎凪はただ笑うだけ… 一体どっちなの?

「キスで寝られたの耀くんが初めてだよ。くすっ…そんなに気持ち良かった?」
「え?」
「昨夜はオレの腕枕で一晩中眠ってたよ。 全然起きないから逆に大丈夫かなぁって
思ったくらい…耀くん1度寝ると起きないんだね。
オレそんなに安心して眠れる相手なんだ…嬉しいよ。」
「え?………腕枕で…眠っただけ?ホントに?」
「本当だよ。残念な事にまだ完全に耀くんはオレのものじゃないんだ。」
「……何だよ…『 オレのもの 』  って…」
「褒めて欲しいなぁ…こんな格好の無防備な耀くんの事…
何もしないで我慢してたんだから。」
「こんな…格好?………!!!!」
椎凪にそう言われて何気に自分の姿を見下ろすと……

「 !!! 」

いつの間にかシャツのボタンが お臍の辺りまで外れてる!!!
ちょっと屈むと…裸の胸が椎凪に丸見えで…

「うわっ!!」

慌てて掛け布団で身体を隠した!!

「ヒドイっ!!椎凪っ!!オレが寝てる間にこんな…」
「誤解だって…自然に肌蹴たんだってば!」
「ウソだぁっっ!!!!」
「ウソじゃないって… ホントに指一本触れてないよ。眠ってる耀くんで遊んだって
つまんないもん。ちゃんとオレの相手してもらわなきゃね。」

自分で言って焦った! ちゃんと相手って…あの…やっぱり…あれだよね…

「おはよう。耀くん…ちゃんとオレの名前言って!」
「おはよう…椎凪…ン!」
チュッっと おはようのキスされた。
「おはよう。オレの耀くん…ご飯食べよう。」
「……うん…」

『オレの耀くん』って言われちゃた…
なんか椎凪に 言われると顔がニヤケちゃうのは……

なんでなんだろう…


「美味しい〜〜 ♪ ♪ 」

オレはニコニコで椎凪が作ってくれた朝ごはんを食べてる。

「たくさん食べてね。」
「うん。」
お味噌汁も野菜炒めもオレ好みの味付けで美味しい。
「幸せぇ〜 ♪ ♪ 」
オレは朝から大満足!!
「フフ…オレも幸せ ♪ ♪ あ!今日ちょっと午前中出掛けるけどここで待ってて。
でオレが帰ったら一緒に 耀くんの家行って着替え取りに行こう。」
「ふぇ?着替え?」
ご飯を頬張りながら思わず聞き返した。
「一週間分だからね。ま!洗濯すればいいから そんなに必要じゃ無いか…」
「一週間って…」
「昨日約束したろ?一週間ここで過ごすの。」
「……オレ…OKしてないもん…」

オレは素直 じゃない…もう椎凪に勝てるはずないのに…
でもさ…だってさ…一週間も椎凪と一緒にいたら…きっと…オレ…

「…はぁ…往生際悪いなぁ…」

往生際悪いって…だって今踏ん張らなきゃ…オレの貞操の危機だもん!!
夕べは何とか何事もなかったけど…

「もう諦めな…耀くんはもうオレの ものなんだから。」
「!!」

椎凪が…いつもと違った瞳でそう言い切る…オレはもう何も言い返せない…
本当は夕べから覚悟を決めてなきゃい けなかったんだ…
椎凪がズルイ男じゃなかったから何もなかっただけで…
普通なら眠ってる間にバージン消失だ…

でも…やっぱり怖いよ…

「………」
「そんなに重くならないでよ…オレだってちゃんと耀くんの事考えてるから…」
「…椎凪…」
「大丈夫。オレそこまでケダモノじゃないし…」
椎凪がちょっと困った顔でそんな事を言う…
「……うん…」
そう…椎凪はオレに優しい…

「理性がもてばだけど…ね。」
「……椎凪のバカ…」

もう…がっかりだよ…椎凪…



「……う〜〜ん……」

椎凪の部屋…やる事も無くボケ〜とソファに座ってる。
独身の男の人にしては綺麗な部屋で…オレは絶対女の人が掃除に来てると思う!
だって椎凪モテそうだもん…

きっと椎凪はオレの事は好きなんだと思う…でも…それは遊び相手の1人でって事で…
オレ1人かと言うと疑問だ…

あんなに優しくされて…恋人って言ってくれてるのに…オレはまだ半信半疑…

それって…椎凪に悪い事してるのかな …………

                 この部屋…なんだか椎凪がいるみたいだ…




「ここが耀くんの家かぁ… オレん家からそんなに遠く無いじゃん。」
「どうぞ。」

椎凪と2人オレの家に帰って来た。
オレの着替えを取りに戻ったんだけど…それでいいのか? オレ…?

「耀くんの所も親がいないわりには綺麗にしてるじゃん。」
「親父が時々業者の人寄越すの…」
「あ…そうなんだ…」
「!!…そのくらい自分でやれとか思ってるだろ?」
そんな眼差しだ。
「ううん…耀くんじゃ仕方ないかなぁ…って…」
「すっごい失礼!!!」
「図星でしょ?」
…た…確かに…
「耀くんの部屋見たいな。」
「え?オレの部屋?いいけど…見たって面白く無いよ…」
「いいの。」


「何か耀くんらしいね…」

椎凪がオレの部屋を見渡してそう言った。
「え?そう?」
一体どんな所が?
「さっぱりしてて…女の子らしく無い所がさ。」
「…そう…?どうせガサツで男っぽいよ!」
自分でもそう思ってる…

「ますますオレ好み ♪ ♪ 」

「………ドキン…」

椎凪の笑顔… 見るだけでオレはドキンってなる…

「……あ…」
「耀くん…」
「…ン……」

腰に腕を廻されて抱きしめられて…椎凪がオレにキスをする…

「…やった…耀くんの部屋でキス出来た。」
「…だから部屋見せてって言ったの?」
「うん。オレ最近そう言うのにこだわる様になってさ。オレ耀くんの初めて 全部欲しいから。」
「オレの初めて?」
「耀くんの部屋でキスしたのってオレが初めてでしょ?」
「……!!!…」
「そう言う事…じゃあ下で 待ってるね。」
「……うん…」

オレはしばし放心状態…椎凪って大人の男の人なのに時々子供みたいな事をする…
大き目なバックに着替えを詰め 込みながら…思う…
オレ…何してんだろ…本当に良いのかな…もしかして…ううん…もしかしなくても…
椎凪の所に泊まるって事は…ちゃんと覚悟を決め なきゃいけないって事で…


「用意出来た?洗面道具は帰りに買って帰ろう。どうせこれから先も使うんだから。」
「……椎凪…」
「ん?」
「あのさ…」
「ん?」

「今回さ…もしも…椎凪と何にも無かったら…椎凪オレの事…嫌いになる?」

「え?」
「…………」
「…クスッ…耀くん気にしすぎだよ。それにオレそんな事で耀くんの事嫌いになんかならないよ。
大丈夫…こっちに来て…耀くん。」
椎凪がソファに座った ままオレに手を伸ばす。
「………」
オレはもじもじと椎凪に近付く。
椎凪の伸ばした手にオレの手を重ねた…そのまま引かれて椎凪の隣に座る。

「オレに嫌われるのイヤ?」
「………コクン…」
無言で頷いた。

「オレ…嬉しいよ…耀くん。」


ものすごく嬉しそうに笑う椎凪…

   そんな椎凪を見てオレは……椎凪ならいい……って思った…



「………ふぅ……」

洗面所の鏡の前…オレは歯磨きを終えて小さなため息を吐く。
「……覚悟…決めたもん。」
ドキドキする胸を押さえてリビング に行く…
椎凪は昨日と同じシャワーを浴びた後上半身裸でズボン姿だ…
いつもそんな格好なんだって。

「お!パジャマ姿の耀くんも可愛いね ♪ 初パジャマ姿だ ♪ 」
オレを見て椎凪が愉しそうに言う。
「ありがと…」

オレは椎凪をマトモに見れない…

「さてと…耀くんのご希望通り一緒に寝ようか。」

「…!!…ご希望通りってなんだよ!!もう…」

「ハハ…昨夜は耀くんぐっすり寝ちゃたからな。
今日は寝るまで耀くんと色々話しでもしようかな。」
「話し?」
「そう!オレの事どう思ってるかとか…」
「え?」
「 ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ 」

その時椎凪の携帯が鳴った。
でも椎凪は出ようとしない。

「いいの?」
「いいのいいの!さ…寝るよ。」
「……うん…」

オレは何となく気になりながら椎凪の携帯をしばらく眺めてた…


「…へぇ…面白いお父さんだね…」
「面白く無いよ…自分勝手で調子いいんだから…オレがどれだけ振り回されたか…」

オレと椎凪は夕べと同じ… 2人でベッドに入ってる。
オレは仰向けで…
椎凪はオレの方に横を向いて頬杖をついてずっとオレの話しを聞いてる。
いつの間にか話しに夢中になってて…

「でもだから今の…この耀くんがいるんだもんね…」
椎凪がそっとオレに手を伸ばして頬に触れる。
「椎凪…」
「耀くん…好きだよ…」
「…オレだけ?…オレ1人だけ?」
キスをしようとする椎凪にそう聞いてた。
「!!…クスッ…耀くん1人だけだよ…」
椎凪がそう囁きながらオレに キスをする…
「……ん…」
また昨夜と同じ 『 大人のキス 』 だ…
「今日は寝ちゃダメだよ…」
「…わかってるよ…イジワルだな…」
「クスッ…ごめん…」

椎凪がオレを抱き抱えながらオレの首筋に唇をそっと這わせる…

「…は…ぁ…」
どうしていいかわからなくて椎凪の首に しがみついた。
「……ンッ…あ…」
勝手に声が洩れる…勝手に声って出ちゃうんだ…初めて知ったよ…

「…耀くん…」
「椎凪…お願い…優しくして…オレ怖い…」
「大丈夫…優しくするから…」
「うん……」

もうあれこれ考えるのは止めた…
パジャマのボタンがいつの間にか外されて椎凪の手が胸に触れる…

「!!…ンア…」

身体がビクンと跳ねた。


ピンポ〜ン♪♪ ピンポ〜ン♪♪ピンポ〜ン♪♪ ピンポ〜ン♪♪ ピンポ〜ン♪♪

チャイムが物凄い勢いで連打された!!!

「!!」

「え?なに?」

オレはびっくりで…

「…ったく!!」

椎凪がそう呟いて起き上がった。
「椎凪?」
オレは訳がわかんなくて…

「ごめん耀くん…ちょっと待ってて…」

そう言って寝室から出て行っちゃった…

「え?椎凪??」

一体…何がどうなっちゃったんだ?