01

  順番が逆ですが 『 プロローグ 』 の前のお話です。(1年ほどさかのぼってます。)
  椎凪 : 耀の高校の美術の教師兼美術部顧問。
   耀 : 元気×2な女の子。椎凪と同じ高校の今回は1年生。椎凪と交際中。
  祐輔 :  耀の幼馴染み。一緒に暮らしていて兄の様な存在。






「え?もっちー?付き合ってる人いないよ。」

「え?マジ!?」
「好きな奴は?」
「好きな…?んー…どうかな?今まで聞いた事ないけど…もともと 男子興味ないからねー」

ここは耀が通う高校の体育館に向かう中廊下。
耀の親友のこんちゃん事 『今野 美玖』  に同じクラスの男子2人…
竹中と塩沢が部活に向かう彼女を呼び止めてなぜか耀の事を根掘り葉掘り…

「あ!3組のアイツ…新城って奴は?」
「ああ…彼は身内みたいなもんだし… 2年に彼女いるし。」
「え?そうなんだ!だってよ。!」
「………」
「え?竹中君もしかしてもっちーの事?」
ニンマリと笑った。
「そうなんだよ〜コイツ望月に参っちゃっててさぁ」
そう言って目線だけ竹中の方を向いてニヤリと笑う。
「てっきり付き合ってる奴いるかと思ってたよ…」
「まぁあの顔と身体だもんねぇ〜なかなかのナイスバディなんだよ。ふふ…」
「!!!」
そんな言葉に何気に赤くなる2人。
まあ健康な男の子だから仕方ない。

「で?あたしにどうしろって言うの?」




「椎凪先生ここ上手く描けないんですけどどうしたら?」
「ん?ああここは筆の先を使って こう…」
筆を持ってる手に自分の手を添えて滑らかな曲線を描いた。
「ね?」
「わあ…凄いです。先生…綺麗に描けました。」
笑いかけられた美術部の 部員の女の子がホワンと赤くなる。

新学期から新しい顧問が決まってやっと再開した美術部の部活は
ここ最近真面目な部活動に励んでる。新しい顧問は自分の 事をわかってて
自分がどんな行動をとれば相手がどんな態度になるかわかってる。
だから優しい微笑みをニッコリと相手に向けるだけで
大体の相手は顧問の思うままだ。

「…………」

オレはそんな顧問を横目で眺めてる…オレは騙されないぞ!!

「今回は置いてある物だけどだんだんモチーフ変えて色々やって くから。
文化祭の正門飾る看板も製作するから来週から忙しいよ。」
「は〜い ♪ ♪ 」
「よろしくね。ニコッ。」

「は〜〜〜〜〜い!!!」

さっきより更に大きな返事だ。
人数少ないのにスゴイ。
でもこうやって見ると椎凪もちゃんとした先生に見えるから不思議だ。
2人の時とはエライ違い ………

今オレ達は美術部員として基本中の基本のデッサンの練習をしてる。
定番の花瓶やら彫刻やら美術室にあるものをデッサンして今はそれに色を付けてる。

「望月さんは?大丈夫?」
「 !!! 」
椎凪がいきなりオレに話し掛けた。

『望月さん』 だって…何か変な感じ…学校じゃ仕方ないんだけど…

「だっ…大丈夫…です…はい…」
「そう?くすっ」

何でそこで笑うんだよぉ〜〜〜もう!!

新学期が始まって早1ヶ月…
今の所オレと椎凪が 恋人同士だって事は誰にもバレていない…
それはオレと椎凪がずっと付き合って行く為には
絶対に守り通さなくちゃいけない事だから…

「 ………… 」

「 !!!! 」

椎凪が皆にわからない様にオレの耳元に囁いた!!
オレは一瞬で顔が真っ赤で心臓がドキドキで…もう皆にバレたらどうすんだっ!!!

『 愛してる… 』 って…



「え?今度の土曜日?」
「そうちょっと買い物に付き合って欲しいんだ。いいでしょ?」
「んー…そうだね… オレも文化祭の準備で忙しくなりそうだから…
きっと付き合えなくなっちゃうしな…いいよ。」
「じゃあ部活終わってからだから…夕方になっちゃうけどいい?」
「いいよ。」
「じゃあ終わったらメールするから。」
「うん。」

学校からの帰り道…こんちゃんに今度の土曜日に買い物に誘われた。
別にいつもの事だったから何も考えずにOKしたけど…
ナゼかちょっとこんちゃんの様子がおかしかった様な気がした…?
ああ…そうだ…それに土曜の夕方は椎凪も 一緒にいられるって
期待してるんじゃないかと思ったけど…あえてそこは後回しにして友情を取った。

でも…こんちゃんにはまだ椎凪の事は言ってなかった んだ…
その事を思うと…こんちゃんに申し訳ない気持ちが込み上げるけど…
相手が相手だから…正直に話す事が出来なくて…ごめんね…こんちゃん…



コ ン コ ン !

ビ ク ッ !!

夜9時を過ぎた頃部屋のベランダに面した窓ガラスがノックされた!
「へ?…な…何?」
オレはおっかなビックリで…祐輔を呼ぼうと思ったけど取り合えず自分で確かめる事にした。
ナゼかそうした方がいいとオレの直感がそうさせた。
恐る恐るカーテン を開ける…

「な…に…?」
中が明るいからガラス越しに外を見ても良く分からない…目を凝らして見てたら…

「やっほ!こんばんわ。耀くん ♪ ♪ 」

ひょっこりと椎凪が片手を上げて窓ガラスの向こうに現れた!!

「し…椎凪っ!!??」

オレは慌てて鍵を開けた…一体どうして??

「椎凪…こんな所で何やってるの???どうやって??」
「あそこの塀に登ってそこの屋根に移動してそこに足を掛けて…そんでココ!」
そう言って自分の足元を 指さす。
「人に見られたらどうすんのさっ!!もうやめてよね!!連絡くれたら玄関開けたのに!」
「だって彼に見付かっちゃうでしょ?オレは堂々と入って 来ても良かったけど。
耀くんは困るでしょ?彼に内緒にしてるんだから。」
「そ…そうだけど…」
確かに祐輔にもまだ話してないけど…だからってこんな事…
「ごめんね。迷惑だった?」
「ビックリしたよ。連絡くれればいいのに…」
「だって驚かそうと思ってさ。サプライズ!次からちゃんとメールする。」

次もあるんだ…きっとずっとあるんだろうな…って思った。

「会いたかったよ…耀くん…」

「あ…椎凪…ん…」

椎凪がオレに手を伸ばして抱き しめながらキスをしてくれる…

「入っていい?」



「ん…あ…あ…」

ギシギシとベッドが軋んでる…初めて…オレのベッドで椎凪に 抱かれた…

「声…出しちゃダメだよ…彼に聞える…」
「そ…う…だけど…だって…椎凪が…激しいから…んあ…あ…」
「だって…初めて耀くんのベッドで してるんだもん…嬉しくて…」
「ほら…やっぱり…椎凪の…せい…ンッ!!ああっ!!…んふっ!!」

声が出そうになった瞬間椎凪の口で塞がれて舌で黙ら された!
だから…こんなキスされたら…オレ…頭が真っ白になっちゃうって…やだ…

「…ン…ン…ンンっ!!ンッ…」

オレの身体は押し上げされっ ぱなし…オレとキスをしながらこんなに激しく動いて…
オレの身体の向きまで変えて攻め続けてる…
椎凪ってホントに器用だ!!って言うより…慣れてるのかな???



「…んっ…んぁ…あぁ…アッ………」

もう…どの位こんな事してるんだろう…
同じ家の中に祐輔がいるのに…いつオレの部屋に来てもおかしくないのに…

「…うっ…うあ…あっく…あ…」

後ろから攻められながら頑張って顔だけ椎凪方に振り向いた…

「ん?どうしたの?オレの顔見ながらイキたいの?」
「…ばっ…ちが……椎…凪…」
「ん?」
「祐…輔が…入って来る…かもしれない…のに…ハア…そのスリル…愉しんで…るだろ…」

もう単語でしか話せなくなってる…ナゼか涙も勝手に零れるし…

「まさか…そうなったらヤバイなぁ…って思ってるよ…クスッ…」

最後に笑ったのが何もかも物語ってるよ!!!もう…

「椎凪…の…ばかっ!!!…って… やんっ!!ちょっと…
加減…して…やだ…オレ…もう…ダメ…あっ…あっ…!!!」

椎凪の手で口を塞がれたけど…
頭の中が真っ白だったオレは何も 考えられなくて…
大きくのけ反って…自分の声を飲み込んで…

でも…椎凪の肌の温もりだけは…唯一感じられるものだった…





「もう…椎凪は……」

時計の針はもう10時半を過ぎてる…
オレの身体をあっという間に奪い去った椎凪はちょっと前にまたベランダから帰って行った。
オレは隠れる様にお風呂場に駆け込んで椎凪に抱かれた痕跡を洗い流してる… でも…

「もう少し考えてくれないかな……」

身体中に付いたキスマークを擦りながら呟いた。
確かに制服や体操着を着てれば見えない所に付いてはいるけど……
その数が問題だよ…何箇所付ければ気が済むんだ……
きっと背中から腰からお尻にだって付いてるよ…
やっとこの前付けられたのが消えたと思ったのに…
消えかけると 椎凪はオレの身体に付けて行く…ワザとかな???

「ふぁ…さっぱり。」

オレは安心して気を抜いていた。
リビングに入ると祐輔がソファに座ってテレビを 見てる。
「もしかして寝てたの?」
そんな顔だ。
「ああ…ここでな…」
「そっか…練習のし過ぎなんじゃ無いの?」
「………さあな………耀!」
「ん?」
キッチンに行こうとして立ち止まった。

「こっちに来い。ココ座れ。」

「……え?」

「いいから。」

「…………」

言い方からいつもと違うって言うの はすぐ分かった…
まさか…さっきまでの事…祐輔気が付いたの?

オレは内心ドキドキもので…でも呼ばれて行かないわけにもいかず…無言で従った。

「なに?」
言われた通りに祐輔の隣に座った。
「…………」
祐輔は無言でオレをジッと見てる。
「何?どうし……あっ!!!」
急に腕を引っ張られて ソファに押し倒された!
「ゆ…祐輔?」
「動くな。じっとしてろ!」
「でも……」
オレは心臓がドキドキ…
祐輔が体勢を変えてオレの上に四つん這いの 格好で乗って来た。
「祐輔…?…!!あっ!!ちょっ…!!!」
そしていきなりオレのパジャマのボタンに手を掛けて外し始めた。
「あ…やだ…祐輔!! やめてよ!!」
オレはボタンに手を掛けてる祐輔の手を咄嗟に押さえ込んで祐輔を見上げた…
「離せ!邪魔すんな。」
「だって…こんなの…ひゃんっ!!!」
2つほど外した パジャマの上着の間から祐輔が人差し指の指先で
鎖骨の下辺りからオレの胸の途中までなぞりながらパジャマを開いていく。
やだ…これじゃ…見えちゃう!!!

「………これ…キス・マークだろ?」

「………ひぇっ!!」

オレはもう心臓がバクバク!!ヤバイ!!バレたっ!!!
このキスマークが見付かるん じゃないかとドキドキしてたんだ…
祐輔がオレに何かしようなんて思うはず無いのは分かってるから
上に覆い被さったって何とも思わなかった…
昔は良く一緒に寝てたし…

「何でこんなのが耀の胸に付いてる?」
「それは…その…やんっ!!!」

モゴモゴ口篭ってたら下からパジャマの上着を捲られた!!

「腹にも…」
「きゃんっ!!」

後ろにひっくり返された!!パジャマのズボンも下げられちゃった!!

「背中にも腰にもお尻にも…多分腿にも付いてんだろ?
どう言う事か説明しろ!耀!!! 」

「…………祐輔……」

オレはもう半ベソ状態…だって…祐輔コワイ………怒ってる??

「まさか無理矢理付け られた訳じゃ無いよな?」
祐輔の瞳がギラリと光った。
「ち…違うよ…無理矢理じゃない……」
「じゃあ誰に付けられた?誰かと付き合ってんのか?」
「……………うん……」

ああ…ついに祐輔にバレちゃった……

「いつから?」
「夏休み入ってすぐ…あ…付き合い始めたのは8月に入ってからだけど…」
「まさかオレが合宿行ってる間にこう言う仲になったんじゃねーだろうな?」
「え?……あ…んと…その…」
もうオレはシドロモドロ……だって…
「チッ!!図星か…」
「……うん…ごめん…」

って何で謝ってんだ?オレ??でも確かに罪悪感が無かったと言えば嘘になる。

「……ったく…で?相手誰だ? オレの知ってる奴か?」
「え?…あ…うん…多分…知ってる…」
「多分?どう言う意味だよ?」
「えっと…あの…」
ああ…どうしよう…なんて言えば いいんだ……う〜〜〜
「誰だよ?」
「…………」

「 耀!!!誰だっ!! 」

び く ん っ !!!

「………言っても……祐輔… おこ…怒らない?…ひっ…く…」

ダメだ…涙が…

「さあな…いいから言え!聞いてから考える。」
「じゃあ…ひっく…言わない…」
「耀っ!!!」
「だって…だっ…言ったら…祐輔…怒る…
今だって…怒っ…ヒク…てるもん……うっ…だから…言わない……」
「………!!……はぁ……」
「!?」
祐輔が思いっきり溜息をついた。
「怒らないから…泣くな……」
「!!」
言いながらオレを抱き寄せてくれた。
「耀が今泣くって事はお前自身もどうしていいかわからない相手なんだろ? 何でだ?
まさか他に付き合ってる奴がいる相手か?それとも妻子持ちか?」
「!!!…そんな…わけあるはず無い…だろ!!ちが…う!!ひっく…」
「じゃあ誰だ?」
「…………せ…」
「あん?なんだ?聞えない。」
「せ…んせい…」
「先生?何処の?」
「……うちの…学校の…」
「なっ…うちの?誰だ?耀が気にする様な男の教師なんていたか?」
「違くて…あ…新しく来た…先生……」

言っちゃった…

「新しく?ん?そんな奴いたか?」
「祐輔は教わって無いよ…」
「?…誰だ?」
「…な…先生…」
「は?」
「美術の…椎凪…先生…2学期からウチの学校に赴任してきただろ?」
「いたか?そんな奴???」
「もう…祐輔無関心すぎ…」
まあいつもの事だけど……


それから今までの事全部話した…
知り合った時の事… 最初は椎凪が先生だって知らなかったって事…

「なんだ…耀の事騙してたのか?」
「騙してたって言うか…オレがその事を知ったら付き合ってくれないって 思ったからだって…」
「………バレたら…退学だぞ?別れろ!そんな野郎オレは許さねぇ…」
「……え?」

椎凪と…別れる…?

「?…嫌なのか?」
「……だって…オレ…」
明らかにオレは挙動不審…オロオロと慌ててる…

「初めての相手だからって特別だと思うなよ。オレは別れろって言ってる。」

「……あ…や…やだ…椎凪と別れるなんて…出来ないもん…」

「耀!しっかりしろよ。良く考えろ!退学だぞ?相手の野郎だってクビになるんだぞ!」

「やだ!!オレ椎凪の事が好きなんだもん!!好きなのっ!!好き!!」

「耀っ!!」

「やだっ!!!」

「……………」
「う〜〜〜…」
また涙が止まらない…
「まったく…耀は意地っ張りだからな…1度言い出したらオレの言う事なんて聞かねーし…」
「祐輔……」
祐輔が溜息をつきながら 諦めた様に呟く。
「……そんなに…好きなのか?」
「……うん…」

自分でも…初めて気が付いた…
自分だけで考えてた時はここまではっきりと思う事が 出来なかったのに…

「……騙されてんじゃねーだろうな?」
「………違うとしか言えない…オレはそんな事無いって思ってるし…」
「……そうか……耀の気持ちは わかった。」
「祐輔……」
「とにかく絶対誰にもバレるなよ!わかったか?」
「うん…祐輔…」
「あ?」
「あのさ…あの………」
「何だよ?」

「あの…怒って…る?」

「………怒ってねーよ。基本オレは耀に甘いんだよ。知ってんだろ?」

「………コクン…」

確かに今まで どう見てもオレが悪い時でも祐輔は許してくれた。



…耀に何かあったのはわかってた…耀はオレには隠し事が出来ないからだ。
耀の態度が明らかに 変だったし…なんで今まで黙ってたかと言えば
耀が相手に愛想をつかして別れると思ってたからだ。
それが1週間前昼寝してる耀の胸元にキスマークを見つけて からは話す機会を考えてた。
まさか…身体まで許すなんて思わなかった…しかもこの短期間で…だ!
相手が年上のせいだからか…オレは自分でも認めてる… 耀には甘い。

その代わり相手の野郎…覚悟しとけよな……



「おい!!」

「ん?」

結構強めな物言いで呼び止められて振り向いた。

「オレの事知ってるよな?話がある…ツラ貸せ!」

「…………」

こっちが返事をする間もなくオレに背中を見せるとスタスタと歩き出した。

「こっちの都合無視?」
「うるせーいいから黙ってついて来い!
他の何よりもこっちの方が優先されんだろうが。 『 椎凪先生 』 !!」
「………強引だな…  『新城祐輔』 君。」
「馴れ馴れしくオレの名前呼ぶな!気分が悪くなる。」
「あらあら…オレ君に何かしたかな?そんなに怒る事…」
オレは薄笑いを 浮かべて彼の後をついて行った。
「ああ…してくれたな。」
「え?何だろ?」

そんな事を言ってるうちに特別教室の校舎の中の特に使われていない 化学室に彼が入って行く。

「もうわかってんだろ?惚けてんじゃねー!テメェ…一体どう言うつもりだ?」
「え?何の事?」
「………耀の身体に付いてる キス・マークの事だよっ!!」
「……!?…キス・マーク?…何?君見たの?」
「ああ…昨夜隅から隅までな。」
「あれ見たって事は耀くんの裸の身体… 見たって事?」
「ああ…素直に見せてくれたぞ。オレと耀とはそんな関係だからな。」
「やだな…人の彼女の裸…勝手に見るんじゃねーよ!クソガキっ!!!」
「テメェこそガキ相手にしてんじゃねーよ!エロジジイ!しかも自分の教え子に手出しやがって!!」
「最初は教え子じゃなかったんだけどさ。…にしてもジジイは ないだろ?これでも25なんだけど…」
「耀の事は諦めろ!」
「なんで?」
「なんで?退学なんてさせねえ!」
「オレだってさせないよ。」
「なら別れろ。」
「だからなんで?」
「しつけーぞ!!」
「そっちもね。」

「………ピシッ!!」

っと彼から聞こえた様な気がした。

「これが最後だ!耀と別れろ!!」
「嫌だね!!耀くんはもうオレのもんだ!誰が諦めるか!
耀くんだってオレと別れたいなんて思ってるはず無いしな!」
「自惚れてんじゃねー!!」
「何?君ヤキモチ妬いてんの?でも確か君彼女いるよね?
まさか耀くんの事まで狙ってんの?」
「馬鹿か?んなわけあるかっ!!
耀はオレの妹みたいなもんだからだ!家族を守るの当たり前だろーが!!」

「ふ〜〜ん…シスコンのお兄様か?」

ビ シ ュ !!!

「わあっっ!!」

いきなり廻し蹴りが襲って来た!

「あぶねー……そっちこそ教師に暴行なんて停学もんだぞ!」
「テメェに教師語る資格ねー!!」
「だからなんでだってば…」

「問答無用!!!」



「!………はぁ…はぁ…祐輔…何処?椎凪…」

2人がいない…
ちょっと 考えればわかる事だったのに…祐輔が黙ってるはずないのに…
体育館裏にはいなかった…教室の方にいるはずないし…
だとしたら特別教室の方かな… そう思って必死に走ってる。

ガ タ ッ !! ガ シ ャ ン !!

「え?」
化学室から音が…
「逃げ回ってんじゃねー!!」
「だって当たったら痛いもん ♪ ♪ 」
「ふざけんな!」

「!!…祐輔…椎凪…」

飛び込んだ化学室で祐輔と椎凪が争って……
ん?ちょっと違う!椎凪が上手くかわして逃げ切ってる…
うそ…あの祐輔の攻撃…椎凪かわしてる…の?
って…ハッ!!感心してる場合じゃ…

「や…やめて!2人とも止めて!!」

「耀くん!?」

「!!!」

オレは2人の間に飛び出した。



「…うっ…ひっく…」
「ごめんね…耀くん…もう泣かないでよ…もう乱暴な事しないから…」
「…ほ…ほん…ひっく…本当?」
「うん…だから泣かないで…オレ耀くんに泣かれると どうしていいかわかんなくなる…」
「……う…椎凪…」
「耀くん……」

「………」

どうやって分かったのか耀がいきなり飛び込んで来て… オレとあいつの間に割って入った。
しかも……あいつに抱きついた……オレじゃなくて…この変態教師野郎にだっ!!!
今はしっかりとあいつが 耀を抱きしめて頭まで撫でてやってる…

スゲーーームカつくっっ!!!

…んだが………くそっ…わかってたが…こう言う事なんだよな…


「はぁ……」
オレは深い溜息を吐く。
「……祐…輔…」
「いいか…絶対バレるんじゃねーぞ!!バレた時はもうオレにもどうしようもねー…
耀は退学でお前は教師クビだ!」
「………うん…」
「……ったく…何で初めて付き合う相手がこんな変態教師なんだよ…
しかも自分の学校の教師だなんて… 信じらんねー……」
「でもそれが現実なんだよ ♪ ♪ 」
「テメェが言うなっ!!!ホント腹立つっっ!!!!!!」
「大丈夫。絶対バレない様に 頑張るから。」
「当たり前だ。」
「祐輔…じゃあ…許して……くれるの?」
「……言っただろ?オレは耀には甘いって…仕方ねーだろ…」
「ありがとう。祐輔!!」

「オレは別に誰に許してもらわなくたって構わないけどね。
耀くんさえオレの事好きでいてくれるなら。」

「ああ?」
「もう!椎凪はっ!!余計な事言わないでよっ!!」
「だって…」
「……………」

子供かっつーの…コイツ…

「大体愛し合ってる2人の間に割って 入ろうなんて…馬に蹴られて死ねっつーの!
しかもオレと耀くんの仲裂こうなんて無駄な事すんなっつーんだよ…
オレと耀くんはもう心も身体も 離れられないんだよ!!
わかったか?お兄〜〜様!!へへ〜〜〜♪ ♪ 」

!!!もう椎凪ってば…アッカンベーまでしてるっ!!

ぶっちーーーーーンン !!!

「なぁにぃ〜〜〜っっ!!」

「椎凪!!何言って…やめ…」
ほらっ!!祐輔が怒った!!
「それにもしバレて2人共ここ追い出されてもオレが耀くんの事お嫁さんにするからご心配なく!!」
「はぁ??」

何言ってやがる…この馬鹿男???

「オレは耀くんを愛してるから!!!グイッ!」
「え?」
「!!!!」
「…んっ!!んんっ!!!」

椎凪がオレの顔をがっしりと両手で挟んで強引にキスをしたっ!!
祐輔の目の前で!!学校で!!

「…フッ…んっ…んぐっ……んっんっ…」

もの凄いディープ・キスだっ!!なんで?どうして???

「…はぁ ♪ ♪ フフ…ね?わかってくれた?オレの愛情の深さ!」

「 「 ……………… 」 」

もうオレも祐輔も違う理由でワナワナと震えてる………

「もう!!椎凪のバカッ!!いきなり何て事するんだよ ーーーーっっ!!! 」

祐輔の見てる前で……こんなこんな…

「……テメェ……上等だ……生きて帰れると…思うなよ……」

バキボキと祐輔が指を解し始めた。

「え?君は分かるけどさ…耀くんまでなんで????」
「当たり前だろっ!!時と場合考えてよっ!!椎凪のバカ!!」
「ええ?おかしいな??何で??」
「今度は逃がさねぇからな…覚悟しやがれ…耀の許しも出た事だし…」
「え?ウソっ!?どうしてさ??? え?ホント?耀くん???」

「1回殴られた方がいいよ…椎凪。」

「ええ〜〜〜!!!そんな…ヒドイ耀くん!!わあああ!!ちょっ…待てって…やめ…」


また椎凪と祐輔の戦いが始まった。
今度は椎凪も逃げ回るだけじゃ祐輔につかまると思う…


      でも…今回は…オレは黙って観客になる事に決めた。