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  順番が逆ですが 『 プロローグ 』 の前のお話です。(1年ほどさかのぼってます。)
  椎凪 : 耀の高校の美術の教師兼美術部顧問。
   耀 : 元気×2な女の子。椎凪と同じ高校の今回は1年生。椎凪と交際中。






「へ?こ…コレ着るの?」

高校の初めての文化祭。
1日目の昨日は一般公開されず生徒だけの催しだったから
大半は体育館で話を聞いたりちょっとしたイベントを見たりした。
でも今日は一般公開の日。

正門の前には美術部力作のアーチが飾られて美術部は大満足。
それだけで文化祭をやった気になったくらいだった。

オレ達のクラスの出し物はドーナッツ販売。
1学年2クラスしか売店が出来ないからクラス委員のくじ運の強さがモノを言って
その2クラスに入った。

……なのに何でオレが文句を言っているかというと……

売り子と呼び込み担当のオレの衣裳が……
今流行のメイド服だったからで…しかも超ミニにどう見てもゴスロリ入りまくりの服だ!!
そんなの着れる訳が無い!!!

「ヤダよ…こんな服…今ままで着た事も無いのに…」
「別にもっちーだけじゃ無いじゃん!他にも2人…もっちー入れて3人なんだし。
お客を呼び込むのはこれが一番なんだってば!」
「え〜〜〜!!!それでもヤダよぉ〜〜〜!!!」
「もっちーだけだよ。グズ言ってんの!ほらあの2人なんてやる気満々なんだから!
あたしとしてはあの2人よりももっちーの方が数段似合うと思ってるから!!!」
「何?それ……」
「もっちーのメイド服姿見たいよぉ〜〜〜〜〜!!!ね!お願い!!」
「……………」

そんなおだてにもオレは乗らず…唯々不貞腐れるばかり…

「あ!椎凪先生だ…」
こんちゃんが廊下を見つめてそう叫んだ。
「 !!! 」
オレは椎凪の名前に敏感に反応する…だって…

オレ達教師と生徒なのに付き合ってる恋人同士だからだ。
この事を知ってるのは兄妹同然に一緒に暮らしてる祐輔と
椎凪の知り合いの女刑事の瑠惟さんだけ…

誰にも…親友のこんちゃんにも内緒の事だから……

「また夏木先生と一緒だよ…ちぇ…イチャイチャしちゃってさ!」
「イチャイチャ?」
オレは初耳だったからビックリ!
「って言うか夏木の奴の方が椎凪先生に迫ってるって言うもっぱらの噂!
椎凪先生優しいからさぁ〜邪険に出来ないみたいだよ。
それをいい事に図々しいんだよね…あの女!」
「あの女って…一応先生なんだし…」

国語を教えてる夏木涼子先生…
椎凪と同じ位の歳の先生で…長い髪が似合ってて…綺麗な人。

「甘いよ!もっちー!!もう女生徒の間じゃ反感買い捲りなんだよ!知らないの?」
「え?そんなに?」

椎凪の事はあえて学校では感心持たないようにしてるから…全く知らなかった…
そんなになんだ…ふ〜ん…ふ〜〜〜ん…ふーーーーーん………

「ぎゃぁ〜〜〜ワザとらしく椎凪先生の腕にタッチしたよぉ〜〜!!!
まったく!!エロ女めぇ!!!」

「…………」

見れば結構仲よさ気で…見た目つり合ってて…普通の恋人同士に見える…
オレと椎凪よりも…ずっとまともな恋人同士に………


「オレ…これ着る!!」

そう言ってこんちゃんからメイド服を奪い取った!

「え?何?もっちーその気になってくれたの?」

「お客さんに…過剰サービスしてやる……」

オレは呪いの言葉を呟く様にそう小さな声で囁いた…
頭の中では椎凪の顔を想い描いて………




「祐輔!来てくれたんだ。」

「ああ…」
「和海さんも。」
「こんにちは。頑張ってますね!」

和海さんは祐輔の彼女。
中学からの付き合いで祐輔よりも1コ上で今は2年生。

「結構な売れ行きだよ。」
ドーナッツ屋のオレ達のクラスは大繁盛で買う為に待つ人までいる。

「それにしても…耀…お前スゲェ格好だな?」

祐輔が呆れた眼差しでオレを上から下まで見下ろした。

「そう?結構評判良いんだよ。ちょっと最初は恥ずかしかったけど…
お客さん呼び込むのにいい宣伝だもん。」
「良く学校が許すな…その格好…」
「ナンカね…文化祭とか結構ユルイんだって。この学校イベント大好きらしいよ。」
「校長先生が大らかな方で…保護者も最近皆さん協力的なんですって。」
「流石副会長!学校事情に詳しいね。」
「そんな…でも耀さん本当似合ってますよ。可愛いです。」
「和海も似合うんじゃね?今度着てみれば?」
「!!」
和海さんが一瞬で顔を真っ赤にした。
「祐輔!過激発言だよ!和海さん免疫無いんだから…」
「耀も似た様なもんだろうが…」
「そんな事無いもん。あ!一緒に写真撮ろうよ!携帯持ってるんだ。ね?」

そう言って3人で一緒に写真を撮った。

「ねぇ…写真撮らせてもらっていい?」

後ろからそう声を掛けられた。
見れば私服の他校の生徒が他のメイド服のクラスメイトと待ってる。
「あ…はい!じゃあ祐輔またね!」
「ああ…でも耀…」
「ん?」
「気をつけろよ…お前隙だらけなんだから。」
「もうここ学校だよ?大丈夫だってば!」

ほんと祐輔は心配性なんだから。





「1−5でドーナッツ販売してます ♪ ♪ 残りわずかですのでお早めに!」

正門の近くでこんちゃんと一緒にチラシを配りながら呼びかけてた。
もうお昼も過ぎて来校者もピークを迎えてる。
あと…数時間で今年の文化祭も終わりだ…


「あれ?望月さん?」

「 !!! 」

ぎくっ!!この声は……
振り向くと…案の定我が部活の美術部顧問の椎凪先生が立ってた。
オレの彼氏と言わない所がミソだ。

「あ!椎凪先生!!」

こんちゃんは椎凪の事がお気に入りだから上機嫌。
こんちゃんだけじゃない…ウチの学校の女子生徒の大半は椎凪に好意的…

「スゴイ格好だね?でも可愛いや。」

ニッコリと笑ってるけど…何気に嘘笑いだ…
本当はオレがこんな格好で人前にいる事が椎凪にとっては許しがたい事だって言うのは分かってる。

だから…椎凪は今超不機嫌のはず…

でも…そんな事知らない!
だってこれはクラスの催し物の為だし…浮気者の椎凪なんか知るもんか!

「…………」
だからオレは無言を決め込んだ。

「あ!先生…午前中夏木先生とイチャイチャしてたでしょぉ〜〜〜
ダメですよ!1人の女性と親しくしてちゃ…先生は常に1人でいなきゃいけないんですから!」
「え?何それ?イチャイチャなんてしてないけど?」
「午前中2人で廊下を仲良く歩いてたじゃ無いですか!
ね?もっちーも見たもんね?」
「え?…うん…」
オレは何だか適当に返事をした。

「!!…へえ…そう…でもあれは一般公開するのに最終的に
校内見回ってただけなんだけどね。
たまたま一緒に回る相手が夏木先生だっただけで…」

「そうなんですか?じゃあ今回は許してあげます。」
「ありがとう。」
ニッコリと椎凪が笑った。
「行こう…こんちゃん呼び込みしなくちゃ…」
「うんそうだね…ラストスパートだ!!じゃあね先生!」

そう言ってこんちゃんだけ椎凪に手を振って…
オレは椎凪を最後まで見もせずに…
こんちゃんの腕を引っ張ってサッサと椎凪から離れた。

「……………」

椎凪はしばらくその場に立ってたみたいだったけど…




「…疲れたぁ〜〜〜〜履きなれない靴って疲れるね…」
「お疲れもっちー ♪ ♪ 完売だってさ!」
「良かったぁ!!!」

閉店1時間前に全てのドーナッツを売り切って今年オレにとって
初めての高校の文化祭が終わった。

「あたしちょっとバスケ部の子と約束してるから行ってくるね。」
「うん。じゃあ先に教室行ってるね。やっとこの服脱げるよぉ…」

こんちゃんと中廊下で別れてオレは1人階段を上ってた。
その時持ってた携帯が震えた。

予想はしてたけど…やっぱり椎凪だ…

『 美術室の準備室で待ってる 』

どうしよう…シカトしちゃおうかな…
だって…会えばきっと気まずくて喧嘩になりそうだったから…

もう今日はオレ…ヘトヘトだったし…

そんな事を考えながら足は美術室に向かってる…
なんでなんだかなぁ……不思議でしょうがない。



美術室には文化祭の為に今まで描いた絵が飾ってある。
見に来てくれた人いたのかな?
今回オレはこっちには手が回らずノータッチだったから…
今はもう誰もいなくてシン…と静まり返ってる…
美術室をぬけると静かに準備室の扉を開ける…
10畳ほどの部屋に椎凪が窓の外を眺めて立ってた。

「……なに?」

理由なんて無いはずなのに…オレはそんな事を椎凪に聞く。

「耀くんに会いたかったから…いけない?」

ほら…椎凪ってば怒ってる。
冷めた言い方をしながら窓をそっと閉めた。

「学校じゃ他人のフリって言ってあるだろ?こんな所誰かに見られたら…」

「じゃあ何で来たの?シカトすれば良かったのに?」

「…………椎凪が…待ってるって言うからだろ…」

オレは椎凪から視線を逸らして不貞腐れながら答えた。


「耀くん…怒ってるの?」
「なんで?怒ってるのは椎凪の方だろ?」
「なんでオレが怒るの?」
「だって…オレがこんな格好してるから…」
オレはメイド服のスカートをぎゅっと握り締めた。
「なんで?可愛いじゃん…その格好。
きっと他の男共のいい目の保養になったんじゃないの?」
「ほら!やっぱり怒ってるじゃん!
仕方ないだろっ!クラスでそう決まっちゃったんだから……あっ!!」

グイッと椎凪に腕を掴んで引っ張られた!
そのまま椎凪の腕と胸に抱きかかえられる。

「ちょっ…やだ…やめて…椎凪!ここ…学校…」
「知ってる…だからだよ…」
「え?」
「今日耀くんは此処で…初体験!」
「え?何の?」

…何の初体験なんだ???だってもうオレは椎凪と…

「あっ!!!やだっ!!!」

椎凪がいきなりスカートの中に手を入れて来た!!

「やっ!!椎凪ふざけないで!!やめっ…」

慌てて椎凪の手首を掴んだけどビクともしない…このままじゃ…

「ホント…ふざけないで…椎凪!!ここ学校で…皆まだ中にいる…んっ!!!」

椎凪を見上げた途端キスで口を塞がれた!!
そのまま押されて…準備室の角に追いやられて…背中が壁にぶつかって止まった。

「……ううっ!!!ンッ!!!」

すごい強引に舌を絡めてくる…
キスぐらいなら…まだ許せる…でも…今の椎凪は違う…本気で…

「やあっ!!椎凪!!ここでなんてヤダっ!!!」
オレは顔を逸らして逃げた。
「どうして?」
「だ…誰か来ちゃう…から…人に見られる…!!!!」
「こんな所誰も来ないよ…ここはねどの場所からも死角になってて特にこの角は
どこからも見られないの…声も3階の校舎の隅で外には漏れないし…安心して…」
「ばっ!!安心なんて出来ないっって!!やめっ…!!ダメ椎凪!!!」
「しぃー…だったらそんな大きな声出さないの。本当に誰か来るよ。」
そう耳元に囁かれてオレは思わず動きが止まって黙ってしまった。
「お利口さん。」
「…あっ!!」
その一瞬の隙を突いてスカートの中の椎凪の手が素早くオレの下着を下げた。
「ホント…やめてってば…」
どうもがいても椎凪から逃げられない…もう……
「愛してるよ…耀くん…」
「…んっ…」

また…舌を絡ませるキスを延々とされた…もうオレは息も絶え絶え…
ずっと抵抗し続けてるから…段々力が入らなくなってきた…

「…ううっ!!」

椎凪の空いてる片手がオレの足の間からスルリとオレの身体に入って来た!!
オレはビクリと身体が仰け反って…

でも…仰け反った身体は簡単に椎凪の口で押さえ込まれた…




「ハァ…ハァ…お願い…椎凪…やめ…うっ…」

涙が頬を伝って落ちた…
何の涙なんだろう?嫌だから?怖いから?……感じてるから?

オレの両手は頭の上で椎凪の片手に壁に押さえつけられて…万歳の状態だ…
いつの間にそんな事になったんだろう…

メイド服はどこも脱がされて無いのに…
服の上から触られただけでなんでオレこんなに感じまくってるんだ…

ああ…違う…
さっきから椎凪の指がオレの身体中で動き回ってるからだ…
片手でオレの腕を押さえて…口はオレの相手をずっとしてて…
なのなんでそんなに繊細に…器用に指を動かせるんだろう…

本当にいつも不思議でしょうがない…

どうしよう…もう…立ってられない…
身体から力が抜けていく……椎凪……気が付いてる…?

「やだ…ハァ…ハァ…恥ずかしい…から…やめて…椎…凪…」

身体が震える…足を閉じたかったのに…
しっかりと椎凪の足がオレの足の間に入れられてる…

「恥ずかしくなんか無いよ…感じてる耀くん可愛いし…すごくそそられる…」
「……やんっ…あ…」

入って来た時と同じ様にスルリと椎凪の指がオレから離れて思わず声が出た…
やっと解放してくれるのかとホッとしてたら…

「…んっっっ!!ああっっ!!!!」

片足を抱え上げられたと思ったら…思いっきり下から押し上げられた。
椎凪が何の迷いも躊躇もなく真っ直ぐオレに入って来て…

初めて……立ったまま椎凪に抱かれた…!!

「…うあっ!!!っっ…あっ!あっ!あっ!!ンア!!!やっ…椎…凪…ヒド…イ…あっ!」

「……………気持ちいい?耀くん?」

いつもと違って椎凪がオレの真正面で動いてる…いつもはオレの上なのに…

「ばっ…か…そんな事…あるはず…ない…だろ…んくっ!!うぁ…あん…!!」

「オレの事…いつもより耀くんの身体の奥の方で感じるでしょ?
これで今日会ったオレ以外の男の事は忘れられるよね?ねぇ?耀くん……」

「あっ!ああっ!!ダメ…椎凪…オレ…」

片足はさっきから膝の所で椎凪の腕に持ち上げられてる…
だから片足は押し上げられる度に踵が浮いて…へたをすると宙に浮く…

押し上げられた身体が戻る度に椎凪が深くオレに入ってくるから…
なんなの…これ……こんなの初めて……

このままじゃあっという間にオレ……わけが分からなくなっちゃう……



「ハァ…そんなに…ハァ…乱暴に…押し上げないで…あ…」
「そうさせてるのは耀くんのせいだから…」
「…オレ?んっ…なん…で?」

「こんな男をその気にさせるような格好してるから……」

「んっ!!!!…あっ!あっ……うっ…あうっっ…………!!!」

意識的に…込み上げる声を自分で我慢した…
壁と椎凪に挟まれて…仰け反る事も許されない……

こんな自由を奪われて…抱かれるなんて……オレ…


「耀くん……最高…その顔が見たかった…」




「はぁ…はぁ…」

オレはぐったりと椎凪にもたれかかった…
頭は真っ白で…身体に力が入らなくて…ボウっとして立ってられなくて…
準備室の木のイスに椎凪がオレを座らせた。

オレは人形の様に力なく背凭れに凭れ掛かって荒い息を整えてる…

時計に目をやると此処に来てからまだ20分しか経ってない…
うそ…1時間は経ってるかと思ったのに…そんなに舞い上がってた?

オレまだ15歳…だよな…なのに…こんな事されて…いいの?いいの?オレ……

「大丈夫?耀くん…?」
「大丈夫…な…わけ…無いだろう?ハァ…ハァ…椎凪の…ケダモノ!!!」
「だってその格好の耀くんとしたかったんだもん ♪ 今しかないだろ?」
「だからって…こんな…学校で…するなんて…信じらんない…!!!!」
「何事も経験だよ!耀くん!またオレと初めて経験したね!
学校でしたのと立ってしたのと…2つも!!…フフ ♪ ♪ 」
「思い出し笑いなんて…しないでよ…ん?」

見れば椎凪がガサゴソとなにやら携帯を取り出してオレに向けてる?

「何してんの?椎凪…まさか…」

カシャッ!!

言ってる間に椎凪がこのオレを…感じすぎて動けないオレを携帯で撮ったっ!!!

「ちょっ…椎凪ヒドイ!!」
「え?何で?すんごく色っぽくて悩ましくて最高なんだけど。」
言いながら何枚も撮り続ける。

「やだよっ!!やめて!!」

「はいはい。十分撮ったからいいや。本当はイった時の耀くん撮りたかったんだけど…」

そんな怖い事言ってる!!!

「もう…椎凪は……呆れちゃうよ!!先生のクセに良く学校でこんな事出来るね!!」

「やだな…今更何言ってるの…耀くん!」
「え?」


「教え子と付き合った時点でもう何処で何をしようと同じ事なんだよ…」


そう言った椎凪はとっても冷静な瞳をしてた…
何だか…そんな椎凪を見て…本当はオレなんかよりもずっと椎凪の方が…

オレと付き合う覚悟してるんじゃないのかな……

なんて思ってしまった…


「でもオレも学校でしたの初めてなんだぁ〜〜♪ ♪ またしようね!耀くん ♪ ♪ 」


って椎凪ってば本当はただ学校でしてみたかっただけじゃないのかな?

そんな疑いを抱きながら…
何とか立ち直ったオレは後片付けの残った教室にヨロめきながら帰って行った。




高校初めての文化祭は……変態教師の椎凪のせいで…
 
                  とっても刺激的な最後で幕が下りた。