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  順番が逆ですが 『 プロローグ 』 の前のお話です。(1年ほどさかのぼってます。)
  椎凪 : 耀の高校の美術の教師兼美術部顧問。(耀の事は”ようくん”と呼ぶ)
   耀 : 元気×2な女の子。椎凪と同じ高校の今回は1年生。椎凪と交際中。(”オレ”と言う)





「寒…」

大晦日…
近所の結構大きめな神社で年越しを椎凪と一緒に過ごす為に神社の入り口で待ち合わせ。

「遅せえな…」

祐輔がボソッっと呟いた。

「あ…ごめんね祐輔…和海さん迎えに行かないといけないのに…いいよオレ一人で待ってるから…」
「こんなトコに耀一人置いていける訳ないだろ。別に大丈夫だから気にするな。」
「ありがと…祐輔…」

ホント祐輔はいつもオレに優しい…

「ごめん!待った?」
「遅せえぞっ!バカ椎凪!!」
「ごめん!支度に手間取っちゃって…」
「あ…」

椎凪は前こんちゃん達の前に現れた時の椎凪だった…
金髪に近い色に染めたちょっと長めの髪…ピアスが耳に光ってて…
瞳が青くて…どっから見ても椎凪には見いえない…

「じゃあオレ行くからな…耀帰ったらちゃんと支度しとけよ!」
「うん。ありがとう祐輔!」

そう言うと祐輔は人混みの中に消えて行った…これから和海さんを家まで迎えに行くんだ。
祐輔も2人で初詣。

何気に祐輔は和海さんの両親に気に入られてる…
まあ子供の頃から同じ道場だし祐輔の家族が亡くなったのも知ってるし…
それに椎凪にはあんな態度だけど結構和海さんの家族には気を使ってるらしいんだよね…

あの祐輔が…愛の力は偉大だ!!!



「支度って?」

「あ…えっと…明日親父の所に行くから……その…支度……」

「 えっっ!? 」

「……………」

椎凪がとんでもなくビックリしてる…当たり前だよ…椎凪には黙ってたんだもん…

「何も聞いてないよ…オレ…初耳なんだけど?」
「今…初めて言ったもん……」
「ええーーーーっっ!!何で?どうして黙ってるの?」
「だって…」
「だって?」

「前もって言うと椎凪が……」

「オレが?」

「心配してウルサイから…」

最後の方は一応気を使って小さな声で言ったんだけど…

「なっ!!!ヒドイ…耀くん…オレの事邪険にするの…」

「だから直前に言った方が良いと思ったの。」
「……明日からどのくらい行ってるの?」
「んー…一応3日くらいはいると思うよ。久しぶりだし…」

それに親父も結構な親バカぶりだから…すぐ帰るって言うとうるさいんだよな…

「……じゃあ冬休み…ほとんど会えないじゃん…」
「ごめん…」
「はあ……」

椎凪の肩ががっくりと落ちた。

「北海道だっけ?」
「うん…雪が凄いって…」
「だろうね…まあ仕方ないか……家族の事だもんね…わかった…いい子で待ってるよ。」
「何?いい子って?25の男が言う?」
「だから帰って来たらご褒美ね ♪ ♪ 」
「…え?……わかった…一応…考えとく…」

何だよ…ご褒美って…どうせオレからご褒美を貰うんじゃなくてオレから奪っていくんだろ…もう…



「それ…使ってくれたんだ…」

椎凪が来た時から気になってた…オレの真っ白な手編みのマフラー…
見栄えは最悪なんだけどね…

「うん!この時のオレじゃ無いと使えないからさ ♪ 
耀くんの友達に見られちゃってるしどう見ても手編みだから学校にもしていけないし…
残念だけど…誰から貰ったとか余計な詮索されるから…
でももう1つのマフラーは学校にしていくから ♪ 」
「…うん…ありがとう…」
「そのコート…似合ってるよ ♪ 」
「そう?ちょっとオレには大人っぽくない?」

椎凪がオレの誕生日にプレゼントしてくれたロングコート…

「1日でも早くそのコートが似合う女になれる様に ♪ 」
「……ちょっとプレッシャー…」
「そう?」
「でも椎凪…」
「何?」

「やっぱりその恰好目立つよ…」

「え?そうかな?」

すれ違う人が…特に女の人が椎凪を目で追ってる…
今日は帽子も被ってないから金髪に近い長めの髪の毛が夜の神社に映える…

しかも椎凪ってば背も高いし…とにかく目立つんだもん…

「今更だよ ♪ 」
「もう…」
「お参りが終わったらオレの部屋に行こうね。今年初めてのお泊りに初Hに…
ああ初キスもしないといけないし…」
「しないといけないって何??意味わかんない…」

って本当は分ってるけどさ…


それからしばらくして除夜の鐘が響き出した…

「今年が終わる…」
「うん…」

「オレにとって今年は人生最高の年だった…耀くんと出会えたから…」

椎凪がそう言って繋いでた手をぎゅっと強く握る。

「耀くんは?」

「え?」

「オレと出会えた良い年だった?」

「……うん…」

「あ!何?その間は?後悔してる?」
「後悔とかじゃなくてさ…高1でこんな経験していいのかなっていつも思うんだ…」
「いいの ♪ 相手が大人の男なんだから耀くんがそんな経験するのは当たり前なんだよ。」

「椎凪がオレに合わせてくれないの?」

横目で見ちゃった…

「耀くんに?なら未だに手を繋ぐくらいだよ!
オレそんなの欲求不満になって耀くんの事押し倒しちゃうよ!」

「………」

結局そうなるのか!

「今年もよろしくね!耀くん ♪ 」
「よろしくね…椎凪…」

お互い見詰め合ってニッコリと笑い合った。
オレだって椎凪と出会えて良かったって…思ってるよ…ただ…

椎凪がオレの学校の先生じゃなかったら…って…思う時もあるけど…

それは今更の事で…どうしようもない事だし…
それに…オレがその事を言ったら…椎凪はもしかして教師を辞めちゃうかも…

なんて考えちゃう…だからそんな事椎凪には言えない……


「さてさっさとお参りしてオレん家行こう ♪ 」
「下心ありすぎだよ…もう…」
「だってしばらく会えないし…でも朝ごはんはおせちにお餅で雑煮作ってあげる ♪
あと何か食べたいものがあったらリクエストに応えるよ ♪ 」
「ホント!?」
「うん!…耀くん?」

「今年も…バレずに過ごせるかな…」

オレはそれが心配…

「大丈夫だって!オレ運が良いから ♪ 」

「だといいけど…」

椎凪がオレの学校の先生だとわかった時から続く心配事…

「!!椎凪?」

椎凪がオレの肩に腕を廻して抱き寄せる。

「好きだよ…ずっと好き…何があっても…ね…」
「ありがとう…椎凪…」



優しくオレに笑いかけてくれる椎凪…


   いつまでもいつまでも…


      椎凪と一緒にいれたらいいな…