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  順番が逆ですが 『 プロローグ 』 の前のお話です。(やっと2年生になりました。)
  椎凪 : 耀の高校の美術の教師兼美術部顧問。(耀の事は”ようくん”と呼ぶ)
   耀 : 元気×2な女の子。椎凪と同じ高校の今回は2年生。椎凪と交際中。(”オレ”と言う)





「もっちー大丈夫?」

「え?」

「なんか顔色悪いし覇気が無いって言うか生気無いって言うか…」
「はは…」

椎凪に散々吸い取られたからかな…

「体育大丈夫?」
「うん…頑張…あれ…」

廊下を歩きながらクラリと来て…驚いて心配するこんちゃんに保健室に連れて行かれた。


「貧血だね。朝ごはん抜いたんだろ。」
「はあ…」

保健室で状況を説明したらいきなりそう言われて怒られた。

「先生…新しい先生?」
「そう今学期からね。」
「何先生?」
「新垣健(aragaki takeru)先生。」
「男の人で保健医なんて珍しいよね。もしかして女子高生狙い?」

「僕は妻帯者!」

そう言って指輪を嵌めた手を見せられた。

「しかも新婚 ♪ 去年のイヴが結婚式 ♪ 」
「あら…惜しいなぁ〜」
「何が?」
「独身なら椎凪先生と良い勝負出来たかも知れないのに。」
「え?椎凪?」
「!!」

椎凪の名前を聞いただけでオレの心臓がドキリとなる。

「さ!彼女はベッドで君は授業出なさい。」
「はーい!じゃあもっちー後で迎えにくるね ♪ 」
「うん…」

こんちゃんはずっと手を振って出て行った。


「昼食えば治るよ。」
「はい…」

オレはベッドに横になって顔まで布団に潜ってた…
だって若い男の先生なんていくら保健室の先生でも緊張する。

「ダイエットって体型じゃ無いと思うけど。」
「け…今朝は…寝坊して…」
「夜更かしは身体に毒だし美容にも良くないよ。」
「はあ……」

「はい。応急処置!」

「え?」

目の前にチョコの包みが3つ。

「ちょっとは満腹感が味わえる。」
「はあ…でも良いんです…か?」
「ん?」
「お菓子……?」
「ああ…チョコは薬 ♪ どうぞ。」
「じゃあ遠慮無く…」

パクリと1つ口に放り込んでモグモグ…

「ふあ…美味しい〜〜 ♪ 」

幸せ ♪

「あ…えっと…」
「望月です…」
「ああ!望月さん。ちょっと出てくるけど大人しく寝ててね。」
「はい…」

新垣先生が出て行くとオレはベッドで1人…やっとホッとしながら目を瞑る。

祐輔には内緒にしなくちゃ…じゃないとまた椎凪とモメるだろうし…
どうしてあの2人ってあんなにすぐ小競り合いするんだろう…
もう…しょうがないんだから……

なんて事を思いながらウトウトし始めた…
やっぱり寝不足かな…後で椎凪に文句言ってやらな…きゃ……

そう思った瞬間息苦しさに目が覚めた!キスされてるっ!!!!

「……ううっ!!!ぷはっ!!何?」

「しー…耀くん静に!」

「し…椎凪?どうして?何で??」

いつの間にか椎凪がオレの上に覆い被さってる!!

「さっき廊下で今野さんに会ったの。そしたら耀くんが倒れて保健室で寝てるって言うから。」
「だからって…こんな真昼間の保健室で…誰かに見られたらどうすんのさっ!もう!!」
「すぐ行くから…だって心配だったんだから仕方ないだろ?何?貧血?」

「誰かさんのせいで寝不足の遅刻しそうの朝ご飯抜きだったの!!」

もう文句たらふく言ってやる!!

「なんだ…だからテーブルにおにぎり作って置いたあっただろ?気付かなかったの?」
「えー知らないよ!そんなの!!それにそんな余裕無かったの!」
「もう…だから本当は朝までいたかったのに…今度はモーニングコールしてあげる。」
「その前に前の夜にオレに無理させなければいいんじゃないの?」

元はそれが原因なんだし…

「それは無理だな ♪ そんなんじゃオレの気がおさまらないし ♪ 」
「ケダモノ!!」
「それだけ耀くんの事愛してるんだろ ♪ 」

パクリ!

「あ!それオレが貰ったのに!!!」

椎凪が折角貰ったチョコの残りの2つのうちの1個を食べちゃうから…

「何だよ!後で食べようと思ってとっておいたのに!!!椎凪のばかぁ!!」
「あげるからそう怒らないの!」
「え?……あっ!うぐっ!!」

椎凪がオレの顔を両手で押さえると強引にキスをした!
しかもすぐに甘い味が口の中一杯に広がって……

「……んっ……う……ん…」

チョコを口移しで食べさせられたぁーーー!!!

「……やぁ…!!」

「はぁ〜美味しかったね ♪ 耀くん ♪ 」

椎凪は満足気で自分の唇を舌先でペロリと舐めた。

「……もう…いきなりこんな事しないでよ!!」

オレは涙目だ!だって…チョコをこんな風に食べたのなんて初めてで…

「いつもより甘いでしょ?もう1個も食べてみる?」
「いいっ!!普通に食べるからっ!!」
「あ!」

そう言って椎凪が持っていた最後の1個を奪い取った。

「もう出て行って!保健の先生が帰って来ちゃうよ!」
「仕方ないなぁ〜…つまんないの。」
「つまらなくて良いんだってば!バイバイ!椎凪!」
「耀くん…」
「 !! 」

椎凪がベッドに両手を着いてオレにズイッと近づいて来た。

「耀くん…」
「なに……」

「浮気したら許さないよ…耀くんも……相手の男も…わかってるよね?」

「……う…浮気なんて…するはず無いだろ…誰とするんだよ…」

まったく…変な事言ってさ。

「保健の先生!耀くん隙だらけだから…襲われるかも。」
「保健の先生は新婚さんなんだって!それに保健って言ったって先生なんだから!
そんな事あるわけないだろ!それにそれって浮気じゃ無いじゃん!!」
「今の世の中何があるかわからないんだよ…用心してて損はないんだから…
じゃあオレ行くけど…休むのはこの時間だけだよ。どうしてもダメならもう帰りな。」
「大丈夫!お昼食べれば元気になる。チョコも食べたから少し楽だし。」

「オレが食べさせてあげたからだよ ♪ 」

「違う!チョコが美味しかったから!じゃあね!!」

「………じゃあね…ちゅっ!」

「 !! 」

椎凪がまた触れるだけのキスをした。

「もう!誰かに見られるって言ってるだろ!!」

「それだけ元気があれば大丈夫だね…また夜会いに行くから。
美味しい夕飯作ってあげる ♪ 」

「本当?」

「うん。あ…じゃあ今日はオレの部屋で待ってて。祐輔も空手の日だし。
2人でゆっくりしようね。じゃあね ♪ 」


椎凪がにっこりと笑って出て行った。

「へへ…椎凪の夕飯か……楽しみだな〜 ♪ 」



オレはさっき怒ってた事なんて忘れて…

夕飯のオカズはどんなんだろうって…それだけを楽しみにしながらまたベッドに潜り込んだ。