02
順番が逆ですが 『 プロローグ 』 の前のお話です。(やっと2年生になりました。)
椎凪 : 耀の高校の美術の教師兼美術部顧問。(耀の事は”ようくん”と呼ぶ)
耀 : 元気×2な女の子。椎凪と同じ高校の今回は2年生。椎凪と交際中。(”オレ”と言う)
「もっちー大丈夫?」
「え?」
「なんか顔色悪いし覇気が無いって言うか生気無いって言うか…」
「はは…」
椎凪に散々吸い取られたからかな…
「体育大丈夫?」
「うん…頑張…あれ…」
廊下を歩きながらクラリと来て…驚いて心配するこんちゃんに保健室に連れて行かれた。
「貧血だね。朝ごはん抜いたんだろ。」
「はあ…」
保健室で状況を説明したらいきなりそう言われて怒られた。
「先生…新しい先生?」
「そう今学期からね。」
「何先生?」
「新垣健(aragaki takeru)先生。」
「男の人で保健医なんて珍しいよね。もしかして女子高生狙い?」
「僕は妻帯者!」
そう言って指輪を嵌めた手を見せられた。
「しかも新婚 ♪ 去年のイヴが結婚式 ♪ 」
「あら…惜しいなぁ〜」
「何が?」
「独身なら椎凪先生と良い勝負出来たかも知れないのに。」
「え?椎凪?」
「!!」
椎凪の名前を聞いただけでオレの心臓がドキリとなる。
「さ!彼女はベッドで君は授業出なさい。」
「はーい!じゃあもっちー後で迎えにくるね ♪ 」
「うん…」
こんちゃんはずっと手を振って出て行った。
「昼食えば治るよ。」
「はい…」
オレはベッドに横になって顔まで布団に潜ってた…
だって若い男の先生なんていくら保健室の先生でも緊張する。
「ダイエットって体型じゃ無いと思うけど。」
「け…今朝は…寝坊して…」
「夜更かしは身体に毒だし美容にも良くないよ。」
「はあ……」
「はい。応急処置!」
「え?」
目の前にチョコの包みが3つ。
「ちょっとは満腹感が味わえる。」
「はあ…でも良いんです…か?」
「ん?」
「お菓子……?」
「ああ…チョコは薬 ♪ どうぞ。」
「じゃあ遠慮無く…」
パクリと1つ口に放り込んでモグモグ…
「ふあ…美味しい〜〜 ♪ 」
幸せ ♪
「あ…えっと…」
「望月です…」
「ああ!望月さん。ちょっと出てくるけど大人しく寝ててね。」
「はい…」
新垣先生が出て行くとオレはベッドで1人…やっとホッとしながら目を瞑る。
祐輔には内緒にしなくちゃ…じゃないとまた椎凪とモメるだろうし…
どうしてあの2人ってあんなにすぐ小競り合いするんだろう…
もう…しょうがないんだから……
なんて事を思いながらウトウトし始めた…
やっぱり寝不足かな…後で椎凪に文句言ってやらな…きゃ……
そう思った瞬間息苦しさに目が覚めた!キスされてるっ!!!!
「……ううっ!!!ぷはっ!!何?」
「しー…耀くん静に!」
「し…椎凪?どうして?何で??」
いつの間にか椎凪がオレの上に覆い被さってる!!
「さっき廊下で今野さんに会ったの。そしたら耀くんが倒れて保健室で寝てるって言うから。」
「だからって…こんな真昼間の保健室で…誰かに見られたらどうすんのさっ!もう!!」
「すぐ行くから…だって心配だったんだから仕方ないだろ?何?貧血?」
「誰かさんのせいで寝不足の遅刻しそうの朝ご飯抜きだったの!!」
もう文句たらふく言ってやる!!
「なんだ…だからテーブルにおにぎり作って置いたあっただろ?気付かなかったの?」
「えー知らないよ!そんなの!!それにそんな余裕無かったの!」
「もう…だから本当は朝までいたかったのに…今度はモーニングコールしてあげる。」
「その前に前の夜にオレに無理させなければいいんじゃないの?」
元はそれが原因なんだし…
「それは無理だな ♪ そんなんじゃオレの気がおさまらないし ♪ 」
「ケダモノ!!」
「それだけ耀くんの事愛してるんだろ ♪ 」
パクリ!
「あ!それオレが貰ったのに!!!」
椎凪が折角貰ったチョコの残りの2つのうちの1個を食べちゃうから…
「何だよ!後で食べようと思ってとっておいたのに!!!椎凪のばかぁ!!」
「あげるからそう怒らないの!」
「え?……あっ!うぐっ!!」
椎凪がオレの顔を両手で押さえると強引にキスをした!
しかもすぐに甘い味が口の中一杯に広がって……
「……んっ……う……ん…」
チョコを口移しで食べさせられたぁーーー!!!
「……やぁ…!!」
「はぁ〜美味しかったね ♪ 耀くん ♪ 」
椎凪は満足気で自分の唇を舌先でペロリと舐めた。
「……もう…いきなりこんな事しないでよ!!」
オレは涙目だ!だって…チョコをこんな風に食べたのなんて初めてで…
「いつもより甘いでしょ?もう1個も食べてみる?」
「いいっ!!普通に食べるからっ!!」
「あ!」
そう言って椎凪が持っていた最後の1個を奪い取った。
「もう出て行って!保健の先生が帰って来ちゃうよ!」
「仕方ないなぁ〜…つまんないの。」
「つまらなくて良いんだってば!バイバイ!椎凪!」
「耀くん…」
「 !! 」
椎凪がベッドに両手を着いてオレにズイッと近づいて来た。
「耀くん…」
「なに……」
「浮気したら許さないよ…耀くんも……相手の男も…わかってるよね?」
「……う…浮気なんて…するはず無いだろ…誰とするんだよ…」
まったく…変な事言ってさ。
「保健の先生!耀くん隙だらけだから…襲われるかも。」
「保健の先生は新婚さんなんだって!それに保健って言ったって先生なんだから!
そんな事あるわけないだろ!それにそれって浮気じゃ無いじゃん!!」
「今の世の中何があるかわからないんだよ…用心してて損はないんだから…
じゃあオレ行くけど…休むのはこの時間だけだよ。どうしてもダメならもう帰りな。」
「大丈夫!お昼食べれば元気になる。チョコも食べたから少し楽だし。」
「オレが食べさせてあげたからだよ ♪ 」
「違う!チョコが美味しかったから!じゃあね!!」
「………じゃあね…ちゅっ!」
「 !! 」
椎凪がまた触れるだけのキスをした。
「もう!誰かに見られるって言ってるだろ!!」
「それだけ元気があれば大丈夫だね…また夜会いに行くから。
美味しい夕飯作ってあげる ♪ 」
「本当?」
「うん。あ…じゃあ今日はオレの部屋で待ってて。祐輔も空手の日だし。
2人でゆっくりしようね。じゃあね ♪ 」
椎凪がにっこりと笑って出て行った。
「へへ…椎凪の夕飯か……楽しみだな〜 ♪ 」
オレはさっき怒ってた事なんて忘れて…
夕飯のオカズはどんなんだろうって…それだけを楽しみにしながらまたベッドに潜り込んだ。