naitou&umi





外で食事を済ませて家に帰る…あれ?部屋の電気が点いてる…
そう確認すると…とたんに身体が重くなった…また…来てんのか…
カギの開いた玄関を開けると… Umiが「にゃあ…」と鳴いて出迎えてくれた…

俺とUmiは気が合ってる…
今時ダンボール箱で捨てられてるのを拾うなんて有り得ない…
なのに彼女は ダンボールの中から鳴きもせず…その黒い瞳で俺を真っ直ぐ見つめて…
俺の心臓を掴んだんだよな…なあ?Umi?
彼女を抱き上げて奥の部屋に入ると案の定… 見た事のある女が一人…
どう見ても勝手にシャワーを浴びて…人のシャツを思いっきり胸まで開けて着てる…

「あ!お帰り。」
俺の方をチラリと目だけで 見てビールを飲む…
「そこ…Umiの場所なんだけど?どいてくれる?」
横長のソファ…左の端は彼女の指定席。
「はぁ?何よ…たかが猫でしょ?その辺に 置いとけばいいじゃない。」
「あのな…Umiはここの部屋の住人。君はただの不法侵入者。君の負け!」
俺は上から見下した視線を浴びせて正論を吐いた。
「不法って…ちゃんとあなたからカギを貰ったのよ?私は。」
「俺から貰った?良く言う…人から勝手に巻き上げてったクセに…
スペアあるんでしょって言って 勝手に持ってっただろ?今日返せ。
返さなきゃカギ交換するだけだから…」
「何よ…冷たいわね…昔はあんなに激しく私の事抱いたくせに。それが恋人に言うセリフ?」
「恋人?恋人になった覚えなんて一度も無いけど…?大人の付き合いだっただろ?
最初にしつこくするなって言ったのは君の方だと思うんだけどな…」
タバコに火を 点けながらイヤミったらしく言ってやった。
とにかく俺はコイツには早く部屋から出て行って欲しかったからだ…
足元にはUmiが大人しく丁度いい間隔を空けて 立っている。
Umiも早く出て行って欲しいクチだ…

もう1年も前…知り合いと飲んでた店でたまたま隣の席に友達と飲みに来ていた
「長瀬 なつき」と 意気投合してそのままホテルに行った。
俺の知り合いから聞いたのか突然俺の部屋に尋ねて来ていつの間にか彼女気取り。
なつきの方が最初っから一線置いてる様な 事を言ってたし
すぐに飽きるだろうと放っておいたら…結局こんな事になった。
俺は今の所誰とも付き合う気なんか無いし…実の所本音の半分も人には見せないから…
どうやら気さくないい人と思われてるらしい…
でもいい加減面倒くさくなって来たし…ここまで図々しい女を見てると腹が立つ。
勝手なもんで自分が男に振られると 俺の所に来る。しかも…Umiまでもがとばっちりを受け始めたし…
「もう出てってくれない?そのシャツ着てっていいから。俺もゆっくりしたいんだよね。」
「じゃあシャワー浴びてきなさいよ。待ってるから。」
「……俺その気無いから。いいから早く帰って。」
そう言って冷蔵庫からビールを出してのみはじめた。
そんな俺を見て本気なんだとなつきが気が付く。
「わかったわよ!何よ!どうせ彼女もいないくせに!可哀想だから来てやったんじゃないっ!!
もう知らないわよ! バカにされてまで来てやるモンですかっ!
猫と仲良くやってればいいわっ!この変態!」
そう言ってさっさと自分の服に着替えて出て行く。
「カギ!置いてって ね。」
ニッコリと笑ってやった。
「……!!…フン!!」
怒りに任せてカギを思いっきり俺に投げつける。
でも届かずに足元に落ちた。
「はぁ…疲れる…」
足元に落ちたカギをUmiが前足で突く。
「そのカギ…捨てような。ケチがついた。」
「にゃあ」
Umiも同じ意見。
「おいで。Umi…」
そう言って 手を出すと軽やかに俺の腕を登って肩まで一気に上がった。
そしてソファまで来ると音も立てずにいつもの自分の場所に舞い降りる…


「…何?それ?少し君の 性格…反映させてない?」
内藤さんが納得いかないと言った顔でオレを見た。
「えー?そうかな?オレとしては内藤さんって絶対女の人に慣れてて
冷めてる感じが するんだけどな…」
「それって…もろ君でしょ?俺は女性には優しいんだよ。」
「うーん…でも隠れて…結構女性経験豊富なんじゃないですか?」
「…まさか… 椎凪君には俺はそんな風に映ってるの?なんか心外だな…」
「絶ーー対!上手くやってる!オレの勘って当たるんですから。」
張り込みの車の中。
いつの間にかオレから見た内藤さん像を本人を目の前にして語ってみた。
内藤さんは全然違うって言ってたけど…慎二君同様…内藤さんは掴み所が無くって謎の人。
だから興味が湧く。課の中の評判も良いし…仕事も真面目で早いし…要領が良い…
それに慎二君からも祐輔からも一目置かれてるってのがなお興味をそそる…
「本当に彼女いないんですか?」
思いっきり疑いの目で問いただした。
「いないよ。残念でした。」
そう言ってクスッっと笑う内藤さん…上手く逃げられた気がする…

家までの帰り道…椎凪君が言った事…あながちハズレでは無いんだよな…
俺の部屋には明かりが点いてる。
カギの開いた玄関を開けると…
「お帰りなさい。」
Umiを抱いた「純香」が出迎えてくれた。
「来てたのか?」
「うん。はい。カギ…ありがとう。」
「別に持ってていいんだぞ?急に会いたくなったら勝手に 上がって待ってれば良い…」
「ううん…悪いから…」
「そう…」
俺はそれ以上は言わなかった。
彼女は「吉永 純香」22歳。OL。
3ヶ月前の雨が 降った日…このマンションの入り口でビショ濡れで立っていた。
話しを聞くと親が事故で亡くなって…
夜一人になると…時々どうしても耐えられないほど孤独になるそうだ…
そして…フラフラと街を彷徨って…気が付いたらここに居たって言うわけだ…
とりあえず部屋に入れて着替えさせた。
ちゃんと俺は刑事だと最初に言って安心させたし… 部屋ではUmiが彼女の相手をしてくれた。
そのお陰で彼女は笑ってくれた…
それから一人で辛い時はここに来れば…と言う事になって…時々訪ねて来ると言うわけ。

「もう…失恋から立ち直った?」
「え?…なんだ…本気にしてたの?」
「ええ?嘘だったの?ヒドイ!これでも結構心配しててあげたのに…」
「そうなんだ… 俺そんなに落ち込んでたかな?」
「んー…ちょっといつもと違かった…」
「そっか…そう?くすっ…」
「やっぱり…まだ立ち直れてないんだ…」
「さぁ… どうかな…」
「じゃあ…今度は…私が慰めてあげる…」
純香が照れて…顔を真っ赤にして俺にそう言った。
「本気にするから…からかうんじゃないよ。」
「からかってなんか無い…あの時は…内藤さん…私の為に…私の事抱いてくれた…
だから…今度は内藤さんの為に…私…内藤さんに抱かれてあげる…」
「今日は… 優しく抱けないよ…きっと…それでもいいの?」
「うん…いいよ…大丈夫だもん…」


そんなに…男を知らない純香を…俺は抱いてる…

「…んっ…あっ…ああ…」
初めて会った時…一人の寂しさを忘れさせて欲しいからと…俺に抱きついて来た…
俺は迷わず…純香を抱いた…その時はそうしないと…純香は…耐えられなかったと思ったから…
純香を抱いたからって…恋人同士になったわけじゃない…
それはお互い承知の上…純香もそれは納得してる…

失恋…失恋か…失恋って言うのか?

「ハァ… ハァ…やっ…んん…」
俺が初めてでは無かったけど…俺の相手をするには…純香はこう言う事に慣れてない…

配属された時から…気にはなってた…
でも…それが恋愛感情なのか…ただの妹を見てる様な感情だったのか…
自分でも分からなかった…傍に居れれば…それで良かったはずだった…
なのに…新城君と付き合いだして…

「…ああっ!!…うー…な…内籐…さん…内籐…さん…ハァ…」
純香の限界が近い…
「もう少し…頑張って…純香…」
純香の耳元で囁いた。
「あっ…ああっ…う…ダメ…もう…ハァ…」
「そう…じゃあ…」
俺は純香の身体を自分の方に引き寄せて…純香の身体の…奥を攻めた。

「あああ……!!あっあっ…」

純香が…大きくのけ反って…俺に廻していた両腕がゆっくりと離れて…
ベッドの上にパタリと落ちた…



「少しは…役に… 立てた…?」
照れながら…俺を見上げてそう尋ねる。
「もちろん。」
俺はそう言って純香にキスをした。
「ん…あ…初めて…キスして…くれた…」
「そう?」
「うん…ふふ…」
「なに?」
「何でも…ない…」
「そ?」

それからしばらく…俺と純香はベッドの中で…色々な話をした…
いつの間にか眠りに落ちて…初めて2人で朝を迎えた…