01

  椎凪 : とある資産家の御当主様。数ある会社を取りまとめてるグループの経営者の1人。右京の知り合い。
   耀 : 右京の腹違いの妹。草g家に狙われていてずっと逃げ回っている。椎凪に捕まって監禁!








気が付いたら見知らぬ部屋の大きなベッドの中に居た…
途切れ途切れの記憶を辿ると…確かバイトに行こうと外に出た途端数人の男の人に囲まれて…
変な薬かがされて…

その後目が覚めて…ハッキリしない頭のまま色んな事された気がする…

多分…シャワーを浴びさせられて…身体を…お医者さんらしき人に…色々調べられた…
その後また薬で眠らされたらしい…

「…………だるい…」

頭も身体も重い………でも…ここ…どこ?一体どうなっちゃったんだろ?どう言う事?

顔に触れようとして気が付いた!
両手が一緒に枷に嵌められてて自由が利かない…え?なんで??オレ…

恐怖が身体を占める…なんで?オレこれからどうなる……



ガ チ ャ !

「 !!! 」

急に入り口のドアが開いて男の人が2人入って来た。
若い…男の人…多分20代後半くらい…ちゃんと背広を着て…会社員に見えるけど…

「……あ…あなた達…誰?ここ何処ですか?」

震える声で聞いた…良く自分でも声が出たとビックリした。

「目が覚めたか。」
「あの…一体オレをどうするつもりなんですか…」
「オレ?」
1人の男の人が怪訝な顔で呟いた。
「身分を偽る為に男で生活していたらしいです。」
傍にいた別の男の人が落ち着いた声で説明する。
「ふーん…」

オレはさっきより心臓がドキリとなる…
この人達…オレの事……


「どうして自分がここに連れて来られたか分かってるか?」

………フルフル…
無言で首を振った…

「…くすっ…分からないはずないだろう?今まで何で逃げ回ってたんだよ?」

「…!!」

身体がビクリとなった。

「まともに生きていけないくらいひっそりと隠れて生きてきたんだろ?
しかも男のフリまでしてたなんて健気だよな。」

「…………」

オレは何も言えなくて……黙って俯いてた。

「お前自分がどのくらい価値があるか分かってるか?」

「…な…何の事ですか?」

「惚けても無駄だよ。全部調べさせてもらった。
お前の名前は 『望月 耀』 19歳。母親は 『望月 晴香』 半年前に死んだ。」

「………」

「父親は草g家54代当主 『草g 定輝』 こっちも大分前に死んでるけどな。」

「……そんな人…知りません…」

「20年前お前の母親は草g家に使用人として働いてた。
そこで定輝に手を付けられてお前が生まれたってわけだ。」

「だから…そんな人も…そんな家の事も知らない……」

もう心臓が止まりそうなくらいドキドキ言ってる…痛いくらいだ。

「じゃあ何で逃げ回ってる?草g家の奴らに捕まらないためだろ?」

「 !! 」

「草g家にとってお前は存在してはならない人間なんだもんな…
草g家の汚点とでも言うのか…分家ならまだしも本家のしかも草gの現当主が
使用人に手を出して孕ませるなんて在り得無い事らしい…
変な所で考え方が古くて世間体を気にする。
まあオレにしてみりゃ何様だって感じだが…」

「…………」

「草g家がどんな家か知ってるよな?政財界で絶大な権力を握ってる。
あらゆる方面でもその影響力は強い。」
「……オレには…関係…ない…だから…」
「関係なく無いだろう?あいつらはお前の存在を無かった事にしたいんだからな。
草g家の汚点のお前を…」
「…………」
「母親は草g家とは縁を切りたかったらしいのにな…ほっといてやればいいものを…
見つけ出して…闇から闇へ…か?あいつらならそんな事も簡単だっただろうよ。
だからお前はろくに学校にも通えず中学を卒業後は高校へも行かず逃げ廻ってたってわけだ。」
「…なんで…そんな事あなたが知ってるの?」
「オレの家は草g家とは古くから付き合いがあってな。右京…今の草g家の当主様とも交流がある。
ああそうか…お前右京とは異母兄妹になるんだな。でもアイツには似てないな…」

「…………」

目の前が真っ暗になった…ついに…捕まった!
こんな日が…来て欲しくないとずっと願ってたのに……

「オレを…どうするの?あの人達に…引き渡す……の?」

身体が震えて涙まで込み上げた。
オレ…殺されちゃうの…かな…
オレ…そんなに存在してちゃいけないの……

「引渡しはしない。」
「…え?」

思わず顔を上げて彼を見上げた。

「出てろ。」
「はい。」

そう言われてもう1人の男の人が出て行った。

「さっきも言っただろ?お前は自分の価値を分かっていない。」
「え?」

言いながら彼が背広を脱いでネクタイを外し始めた。

「あいつらにとっては目障りな存在なお前でもオレにとってはそうじゃない。」
「……?」
「右京はお前の事を気に掛けてる。」
「え?」
「ただおおっぴらにその事は表沙汰にできないらしくてお前の事を探して欲しいとオレに頼んで来た。」
「………」
「話を聞いた時はビックリしたがこんなウマイ話乗らない手は無い。」
「え?」
「お前はオレと草g家を繋ぐこれ以上無い道具だからな。」
「……道…具?」
「ああ…」
「 !!!…なっ…何…?」

言いながら彼が近付いて来てニヤリと笑った。
ネクタイはいつの間にか外されてた…

「お前が女で助かった。」

「…え?」

枷が嵌められてる手でまだうまく動けない身体を引きずってベッドの上を逃げた。
その時気が付いた…右足に足枷まで嵌められてる…なんで?
しかも着せられた浴衣の下は…何も着けてない…裸だ!!
オレは頭の中がパニックで…やだ…どうしたら……どうしよう……怖い…
これから何をされるのか…その時わかったから…

「やだっ!!来ないで!!来るなっ!!!」

這う様にベッドの上を逃げた。
でも思うように動けなくてあっという間の捕まってベッドに腕を押し付けられた。

「…うっ…いや…やめて…お願い…やあ…!!」
「やめるわけないだろう…お前はやっと見つけ出した大事な道具なんだからな。」

彼が強引にオレの顔を手で掴んで自分の方に向かせながら話す。

「オレの事を好きにならせるなんて面倒な事はしない…
オレのものにしてオレ無しじゃいられない身体にしてやる。」

「!!!…や…そんなの…やだ…」

涙が…次から次へと零れて落ちる…抵抗なんてしてないのに等しい…
簡単にねじ伏せられて…オレの足の間に簡単に割って入って来た。

「 いやああああ!!!…っ…あっ!!! 」

グッっと下から強引に押し上げられた!
今まで感じた事の無い圧迫感に…痛みに…恐怖に…息が止まる…

「…っ…くっ…ぅ……」

「次はゆっくり抱いてやる…残念な事に今は時間が無いんでな…
これが男に抱かれるって事だ…わかったか?
痛いのは今だけだ…次は気持ち良くしてやるから我慢しろ…」

「……う…あうっ……」

何度も何度も押し上げられる…
自分の上で男の人が…動き続けてる…
こんなの…うそだ…こんなの…夢に決まってる…

早く…早く目が覚めればいいのに…

そんな事を思いながら…未だに押さえつけられて動かす事の出来ない両手を…
ぎゅっと握り締めた……



あの後しばらくして彼はオレから離れて…部屋を出て行った…
オレはしばらく起き上がる事が出来なくて…ベッドの上で放心状態だった…

彼が出て行く時手の枷は外してくれた…
この部屋の中だけなら自由に動いて良いと言われて…生活するには不自由しないと言われた。


「…………はぁ…」

オレは部屋についてる浴室でシャワーを浴びてる…
足に嵌められた枷の鎖はベッドの脚に繋がっててギリギリ部屋の中だけ
歩ける長さに調整されてた。

一体…何が起こったんだろう…あっという間の事だった…
オレ……何されたんだ…?あの人に…何…されたの?なんて言われたの?……オレ…

オレはこれからどうなるんんだろう…
また草gの血のせいでこんな事になる…子供の頃からいつもそうだった…
オレと母さんは草gの家なんて係わりたくないのに…いつもこんな目に遭う…

シャワーを浴びながら涙が頬を流れた……



オレはベッドの上でずっと長い時間座ってた。
部屋はとっても広い…こんな大きなベッドが置いてあるのに大きなソファも置いてあって
まだ部屋に空間が残ってる。
部屋の中も洒落てて壁の一面は全部窓ガラスでとっても眺めがいい…
こんな部屋初めてだし…快適だ…きっととっても(金額の)高い部屋なんだろうな…って思った。
繋がれてるから逃げる事は出来ないのはわかってたけど…逃げる気力も無かった。

すごく疲れてたんだ…気持ちも…身体も…もうどうでも良かった…

何時だったろう…外が暗くなって綺麗な夜景を眺めてたらドアが開いて彼が入って来た。
身体がビクリとなって緊張する。

「今夕飯持って来させる。ちゃんと食えよ。」

背広の上着をソファに放り投げながらオレのいる窓際に歩いて来た。

「こっちに来い!」

彼がベッド脇に立ってオレを呼ぶ。
「…………」
オレはそんな命令に反抗する素振りも見せずにビクビクしながら近付いた。
足枷の鎖が小さな音を立ててオレに付いてくる…

「…あ!」
グイッと腰に腕を廻されて引き寄せられた。
「大人しくしてたか?」
「………」
コクンと頷いた…

「お前にとってはショックな事だろうけどなもう諦めろ。そして受け入れろ。」

真っ直ぐ瞳を見つめられてそう言われた。
怖かったけど…もうさっきみたいな荒々しさはこの人から感じられない…

「ずっと小さい頃からお母さんと逃げて…生きてきた…同じ所に半年もいれなくて…
男のフリまでして…毎日毎日ビクビクしながら…怯えて生きてきた……
お母さんが死んでから…オレ1人で…すごく不安で…怖くて…淋しくて…
だからあなたに捕まって…もう逃げられないと思った時…本当は少しホッとしたんだ…」

オレはナゼかこの人に思ってる事を話し始めた…
聞いてくれても…聞いてくれなくても良かった…
ただ…誰にも話せなくて…誰かに聞いて欲しかったから…勝手に話してた…
彼は黙ってオレの言う事を聞いてる…

「もう逃げなくてもいい…毎日びくびくしないでいいんだって…」

今度はオレが彼をじっと見つめた…
「…………」
彼は黙ってオレを見つめてる。

「オレをどうするの?此処に置いて時々オレの事抱きに来るの?」

何故だかそんなセリフがサラリと出た…
きっと一度に色々な事がありすぎておかしくなったのかもしれない…

「草gの家に引き渡すの…?」
もうどうでもいいや…
「今はまだ引き渡しはしない…お前がオレの所にいる事も知らせてはいない。」
「?……なんで?」

「お前はオレと結婚するんだ。」

彼が突然そんな事を言い出した!

「え?結婚?オレ…と?」
「ああ…それで草gの家と血縁関係になれる。」

なんの表情も変えず淡々と話す彼…そんな彼をぼーっと眺めてる…
今日初めて会ったこの人が…オレと結婚するって言う…やっぱりオレ…おかしいんだ…

だって…何とも思わないんだもん……

「後はお前が逃げないと約束するなら少しは自由にしてやる。
まあ外出の時はお前を守る為に何人か一緒に行動する事になるがな…」
「何それ?ただ形だけ夫婦になるって事…?」
オレは彼に聞き返す…
「ああ。」
普通に返された。

「そう…本当にオレって…道具なんだね…」

「………」

何だろう…静かな沈黙が流れた…

「もう…どうでもいいや…生まれた時からオレには自由なんて無いんだから……
…あなたといればもう逃げ回らなくてすむの?」
「ああ…」
「命を狙われる不安からも解放されるの?」
じっと彼を見つめて問い掛けた。

「……ああ…オレが絶対お前を守ってやる。」

その言葉だけはオレの心と身体にズシリと響いた…
今まで誰も…誰にも言ってもらえなかった言葉…

「オレが…道具だから?オレの事が……必要?」
「……ああ…必要だな。オレにはお前が必要だ。」
「…………」

お互いしばらく相手を見つめてた…

「わかった…オレ…此処にいる…」

ギユッと両手を自分の胸の前で握りしめた。
道具でもいい…オレの事必要だって言ってくれたから…
それにもう逃げ回る事も…怯えて暮らす事もなくなるなら…

「結婚もOKって事か?」
「!!…うん…形だけで…いいなら……」
「………」
「あ!!」
いきなり引き寄せられた。

「うわっ!!な…なに?」

オレは突然の事でびっくりで…だって…今までそんな素振り……

「夫婦ならする事!」
「え?だって形だけの夫婦だって…」

確かにそう言った…

「子供つくんだよ。それにお前をオレが女にしてやる。どんな女になるか楽しみだな。」
「あ…ちょっと…」

言いながらベッドに押し倒された…首筋に彼の唇の感触が伝わる。

「あ…やだ…痛いから…や…」

抵抗しても全く意味が無かった…
あっさりと浴衣は肌蹴て彼の手が裸のオレの身体を行ったり来たりしてる…
だって…下着…穿いて無いんだもん…

「嫌…」

「次は気持ちよくしてやるって言っただろ…」

耳元に囁かれた…


浴衣は簡単に脱がされて…今日初めて会ったこの人に裸の身体を晒してる……

たった1日でオレの取り巻いていた環境が大きく変わった…


これからオレはこの人にどんな風に変えられていくんだろう……

本当なら立ち直れないほどの事が自分に起きたはずなのに
色々な事からの解放がそれに勝るのかな……


…ああ…そう言えばバイト…無断欠勤しちゃったな…クビかな……


なんて彼の重さを感じながらふと…そんな事を思ってる自分がいた…