Shiina & Ikki



 * 『本編84話』後の瑠惟さんが婚約する前のお話です。ちょっとだけBL要素含んでいますので苦手な方はご遠慮下さい。 *



教室を出ようとしたら携帯が鳴った。
「え?椎凪さん?」
久しぶりで慌てた。
『あ!一唏。久しぶり。授業もう終わった?』
「…うん…」
『この後 何か予定入ってる?』
「え?いや…別に…」
『じゃあオレとデートしよう。校門で待ってて。』
「ええっ!!」

ちょっと待てって…何で急に こんな事に…?
とにかく俺は急いで階段を駆け降りて校門に向かった。
まだ椎凪さんは来て無い…思わずホッとした。
何だか心臓に悪い…良くわからないけど…
椎凪さんと一緒だと妙な気持ちになるんだよな…
そんな事をあれこれ考えてたら…

「一唏久しぶり!会いたかったよー!」

「うわっ!!」
後ろから いきなり抱き着かれた!まったくこの人は毎度毎度…
人目を気にしてくれっ!

「ちょっと椎凪さん離せっ…」

駄目だ…身長差と体格差で勝てねー…
「冷たいなぁ一唏…ほっといたから怒ったの?」
後ろから覗き込まれた…顔近いって…
「誰がっっ!!ハッ!!」
下校する奴等がオレ達を観察してる! ヤバイっ!また学校中の噂になる…
「ほら…と…とにかく行こうぜ!」
俺は椎凪さんを促して早々と学校を後にした…

「ちょっと腕離せって…」
いつまでも俺に腕を廻してる椎凪さんを見上げながら絡み付く腕を外し始めた。
「だってお仕置きだもん。」
「………グッ…」
大分前に椎凪さんを怒らせた 事があって…でも未だにお仕置きって…
かなり根に持ってる…いい加減勘弁して欲しい…
「なーんて冗談だよ。」
一応笑ってる…
「嘘だろ…」
横目で 見上げて聞いた。
「本当。もう怒って無いよ。」
「信じらんねー…」

チ ュ ツ 

「うぎゃあ!!」
コイツ…オレの頬にキスしやがった… 公衆のど真ん中で…
「これで信じた?」
「余計信用できねーよっ!!」
お仕置きって言って俺の頭にキスしたじゃねーかっ!校門でっ!しかも女子の目の前で!
お陰で次の日から男と付き合ってるて学校中の噂だったんだぞ!

「今日はどうしたんだよ…」
疲れるから話題を変えた…付き合いきれねー…
相変わらず椎凪さん の腕は俺の肩から身体に廻されて輪っかを作って俺を抱え込んでる。
「今日耀くん右京君の所行っててさオレ一人なんだ…だから一唏に慰めて貰おうかなぁって思ってさ。」
「………」
呆れた眼差しを送ってやった…
まったくこの人は耀さんがいないとすぐに淋しくなるんだから…始末が悪い…
いつの間にか椎凪さんの扱いに慣れてる俺も… 一体…

「どうするんだ?これから?」
「まずはちょっとその辺ブラブラして食事して…最後はホテル?」
「行かねーよっ!」
まったく…冗談だって 分かってるけど妙に胸がざわめくから止めてくれ…



「ほら椎凪!飲んでるの?」
「飲んでるよ!もー最悪っ!!折角一唏と久しぶりのデートだったのに…」
「はは…」

これ以上誤解される様な発言は言うんじゃねー…

「いいじゃないよーみんなで楽しく飲めばぁ!」

椎凪さんと何処で食事しようかと 歩いてたら同僚の人達に出くわした。
その中の一人が椎凪さんに絡んで離れなくて仕方なく合流したってわけ。
椎凪さんは本当に嫌そう…

「一唏は飲めないんだからかわいそうだろ。まったく堂本君ちゃんとルイさんの面倒見なよね!」
「すいません…でもルイさん全然俺の言う事聞いてくれなくて…」
今にも泣きそうだ…よっぽどエライ目に遭ったんだな…
「椎凪がいないから仕方なくコイツと飲んでたのよ!内藤さんも付き合い悪いし…」
「ルイさん酒癖悪いから みんな敬遠するんだよ。自業自得だろ!」
目線を合わせず呆れた様に椎凪さんが言うと
「何よ!椎凪までっ!酷い!!」
いきなり泣き出した!
「ほら!今度は泣き上戸が始まった…ホントうざい!!」
「椎凪ぁ…グズッ…」
マジで泣き出した…どうするんだ?
「はー…もー…何?何かあったの?」
「別に…何にもないわよ…ヒック…」
「だから淋しいなら元カレとヨリ戻せば?」
「嫌よ!椎凪の馬鹿!!アンタはいいわよね。耀君がいてこんな可愛い愛人まで いるんだから!」

「ブハッ!!」

マジマジ見られて思いきり吹いた!お陰で食べてた唐揚げが喉に詰まった!
「…グッ…」
慌てて手元の烏龍茶を 一気に飲んだ。
「大丈夫?一唏?ほらルイさんが変な事言うから…」
ホントだよ…悪い冗談だろ…
「愛人じゃ無いですから…ゲホッ…」

それからしばらくして…アレ?何だ?目が廻る…
「一唏?」
椎凪さんが気付いて俺に声をかけたけど…
なんだ…頭の何処か外側で響いてる…ぼーっとする…
「アレ?もしかして俺のウーロンハイ飲んじゃったの?」
堂本と言う同僚が俺を覗き込みながら聞いて来た。
「は?これが…俺の?」
「違うよ。そっちが君の!」
左側を指差すと…あ…俺の烏龍茶?
「え?お酒飲んじゃったの?」
「はい…俺のと間違えたらしくて…」
「一…唏…」

椎凪さんの声が…微かに聞こえ てる…でも駄目だ…
吸い込まれるようにいつの間にか俺の意識は無くなってた…


誰かが俺の頭を撫でてる…優しくて…気持ちいい…布団の温もりも気持ち 良くて…

『大丈夫?一唏…』
「…う…ん」
あー央か…俺ちゃんと家に帰れたんだ…椎凪さんに悪い事したゃったかな…
『まだ寝てる?』
「うん…もう少し…」
『そう…おやすみ…』
「うん…おやすみ…」
そう言えば央に改まっておやすみなんて言った事あったけ?
まぁいいか…今はとにかく眠い…

それからどの位経ったんだろう…

「…チュツ…」
「…ん?」
なんか…違和感が…?
「…ハァ…ん…」
なんだ?勝手に声が出てる…ああ…俺… 誰かとキスしてるんだ…央だ…
でも…こんな感じるキスだったけ?
「…ン…」
スゲー積極的なキス…これって何だか椎凪さんのキスに似て…る…

「!!!」

俺は一瞬で目が覚めて跳び起き様としたけど身体に重さを感じて起き上がれなかった。

「んーっ!!」
やっぱり相手は椎凪さんだ!嘘だろ! 何でこんな事に?
「あ!目覚めた?」
椎凪さんが俺から離れてニッコリ笑った。
「なっ何してんだよ!どけっ!」
俺は顔が真っ赤になってるのが 分かる…
「可愛い一唏。顔真っ赤。」
「うるさいっ!ここ何処だよ!」
「ホテル。」
「はぁ?何で…」
いつの間に…
「一唏。」
椎凪さんが真正面な顔で俺を見つめてる…
「なっ…なんだよ…」
俺は思わず視線を逸らしたけど強引に顎を掴まれて正面に引き戻された。
また口を塞がれる…
「ン…ア…」
ちょっと…そんなに攻められたら…息出来ねーって…それに力が抜ける…
散々舌をいじくられて遊ばれた…
俺はついていくのがやっとだ… いつの間にか息が弾んで…
ヤベーたかがキスでこんなに感じまくって…

「一唏の事…抱いちゃおうかな…クスツ」
「…え?…」
ホント何言ってるんだ? この人…
疑問形だったのに服脱がせ始めるな!俺は頷いて無いぞ!!

「…はぁ……はぁ…」
ヤバイ…もう既にテンパってる…
それに俺は… 椎凪さんには逆らえ無いから…
「あっ…あっ…」
駄目だ…こんな声出しちゃ…
「ンア…」
何処をどう触ればこんなに身体が変になるんだ…
「椎凪さん…椎凪さ…ん…」
気持ちとは裏腹に身体は椎凪さんを求めてる…
「何?一唏…」
そんなに優しく耳元で囁くな!それだけで頭が痺れる…
「あ…俺…俺…」
思わず視線で訴えてしまった…スゲー恥ずかしい…
察した椎凪さんがニッコリ笑って俺の膝の裏に腕を入れて引き上げる…
俺は両手で椎凪さん の肩を思いきり掴んだ…


「ハッ!!!」

ベッドの上で跳び起きた!
「ハァ…ハア…何だ…今の…」
全身汗びっしょりだ…夢…夢か?ここ俺の 部屋だし…
それにしてもスゲーリアルだった…あんなに感じまくって…

俺…あんな事望んでんのかっっ!!嘘だろーっっ
相手は椎凪さんだぞ…マジか? マジなのか?
わぁー嘘だっ!!俺はあんな事期待してねーっっ!!

俺はしばらくの間ベッドの上で頭を抱えてのたうちまわった…
考えてみたら椎凪さんとは久しく 会ってなかった…

朝からめっちゃブルーな気分で学校に行った。
半ば放心状態で授業を受けて…
やっと放課後になって今日は早く家に帰って寝ようと心に決めた。
絶対その方が良いに決まってる…
フラフラと教室を出ようとした時…俺の携帯が鳴った…


『あ!一唏。久しぶり。』