yoshihiko&tooru02

* このお話はBL要素を含んだお話です。苦手な方はご遠慮下さい。
  本編とは全くの別なお話になっていますので本編とは切り離してお読み下さい。 
  椎凪が5歳の時に施設から引き取って亨が育ててます。椎凪は心も身体も亨に愛されてます。 *




「何食いてぇ?」
「んー腹溜まるもん。」
「僕はパフェ!パフェ!!」
「それメシじゃねーだろ!カズの意見は却下だ却下!」
「ブー!早坂なんかの 意見は聞いてないの!慶くんは僕の味方だもんね。」
「いつものトコでいいだろ?あそこのパフェカズのお気に入りだし。」
「ワーイ!慶くん大好き早坂嫌い! だからモテないんだ!」
さっきから椎凪の腕にしがみ付いてるカズがベーと舌を出した。ナンカ余計ムカついた。
「ウルせーシメんぞ!カズっ!」
ギャイギャイと喧しい…
学校の帰り道腹が減ったと言う事でオレとカズと早坂で何か食べて行こうと移動中だった。

「早坂く〜ん」
後ろから呼ばれて 立ち止まる。
「あれ〜君達?」
振り向くとどっかの制服姿の女子高生が三人キャイキャイと近付いて来た。
茶髪の化粧の長い爪…
「そう言えばさぁこの 前教えて貰った遊んでくれるって言う友達…
メールしたのにアドレス違うって送れなかったよ〜」
どうやら前に勝手にオレのアドレス教えた相手らしい…
速攻アドレス変えといて良かった。
亨の影響かオレも女の子にはあんまり興味が湧かない。
全部が全部そうとは言わないが初対面でも馴れ馴れしくて
しっかりと話さない舌っ足らずの話し方がどうにもついていけない…
早坂がオレを見た。
オレは目線で『教えたら殺す!』と送った。
「おっかしいなぁ〜いつの間に変えたんだろ?今度聞いとくよ…」
「絶対ね!」
「ああ…」
早坂の顔が引き攣ってる。笑える顔だった。
今日のメシ代は 早坂の奢り決定か?
「友達?」
オレとカズを横目で見てる。
「ああ…今からメシ食いに行く所なんだ。」
早坂が余計な事を言った。
「え〜あたし達も 行っていい?人数も3・3で調度いいし。あたし達もヒマしてるし。ね?」
「え?」
早坂の顔が一瞬明らかに煌めいた。
冗談じゃない!でもこんな時は 頼もしいカズが登場する。
「ちょっとぉ〜何でコイツらと一緒にご飯食べなきゃいけないのぉ〜」
超不機嫌な態度でカズがオレの前に出る。
「もーこれだから気の利かない女は困るんだよね〜
僕達は僕達だけで食べたいんだよ〜君達はお呼びじゃないの〜」
何故か最初は語尾を伸ばす…
一応優しく言ってる つもりらしいが相手にしてみればムカつき度100%だろう…

「な…何あんた超失礼じゃん?」
「失礼なのはそっちだろ?僕は君達とは初対面 なんだよ。
なのに自己紹介もしないで一緒に食事ってズーズーしいって言わないで
何て言うのさ?」
あ…伸ばさなくなった。
「何コイツ…ウザ!」
「ほら化けの皮が剥がれた。」
「はぁ?」
「普段は男言葉使ってるんだろ?いつもみたいに話せば良いじゃないか。
それから君!さっきから慶くんに変な 色目使うんじゃない!慶くんが汚れる!」
三人の内の一人を指差して叫んだ。
「はぁ?」
指差された子が引き攣った顔で返事をした。

「はぁじゃない今すぐ慶くんから視線を外せ!じゃないとその両目くり抜くぞ!」

カズが言った途端沈黙が訪れた。
カズの言葉に引いたからじゃない… カズが本気だと全員が理解したからだ。
亨の事を『サド』だと言うカズだがオレからみたら別の意味でカズは『サド』だ。
こうなるとオレが割って入るしかない… カズがここまでなるなんて珍しい。
余程機嫌を損ねたのか…多分オレの事とパフェを早く食べたいって事だろう…
「カズ…」  「香苗!」
オレがカズに声を掛けたのと同時に誰かが呼んだ。
「宣雄!」
彼女達が振り向いた…知り合いか?でも一人が小さな声で『ヤベ…』と漏らした。
「用事があるって人の事振っといてそいつらと何してんだよ?」
ムッとしながらオレ達をひと睨みした。
「な…何でもないよ。ちょっと話してただけだし… 用事もこれからでさ…」
明らかに怯えてる…彼氏じゃないのか?
「良かった。じゃあもう僕達に用は無いよね。慶くん行こう。パフェパフェ」
やっぱり パフェか…カズがワザと男達の間を抜けた。
「待てよ。」
案の定カズの腕を掴んで止められた。
カズがニヤリと笑ったのを相手は認めたかどうか…
やっぱりワザとか…こうなる事を狙ってたんだ…まったく…
「って事は用のある香苗達の邪魔してたのか?テメェ等は?」
「ち…違うって…宣雄…」
「お前は黙ってろ!それとも何か?
用事済ませるよりコイツ等とクッチャベってた方が良かったってのか?」
「…ううん…」
なんかコイツ等の関係を垣間見た 気がした。
「はーヤダヤダ女の子相手に凄んじゃてさぁ〜」
さっき同じ相手に脅しをかけてたカズが自分の事を棚に上げてワザとらしく大声で言った。
「僕達は急いでんのさっさとこっちの用事済ませてくんないかなぁ〜?」
「はぁ?」
鼻で笑われた。
確かに背も低くて高校生のクセに幼さが残るカズ相手 じゃ当然の反応だろう。
見た目は…
「僕達に用があるんだろ?」
「おい…カズ…」
さっきから黙って見てた早坂が流石に声を掛けた。
「早坂は引っ込んでて…あの子達にムカついた分コイツに責任取ってもらう。」
静かにカズが戦闘体制に入った。
「カズ…お遊びモードだぞ。」
「分かってるって…慶くん…」

「何がお遊びモードだよ?ふざけんじゃねーっての!」

それがそいつの最後の言葉だった。



「お前強いんだな…見かけによらず…」
自分より図体のデカイ野郎三人をあっという間に叩きのめしやがった。
今度からからかうの止めよ…
「中学まで空手習ってたからね〜慶くんが辞めたから僕も辞めちゃたけどさ。」
「椎凪も習ってたのか?」
「ああ…」
「慶くんは僕よりも強いんだよ。 僕勝てた事ないんだ。」
「え?マジかよ!」
「カズが本気出さないからだよ。」
「だってぇ〜慶くんを殴るなんて出来る訳無いじゃ〜ん」
そう言って椎凪にデレデレと抱き着いた。
「!」
何だ…胸の奥がチクリと疼いたぞ…
「おら!男同士でイチャイチャしてんじゃねーよ!」
カズを 無理矢理椎凪から引っぺがした。
「もーもとはと言えば早坂のせいじゃないか!ぶー!今日は早坂の奢りね!」
「はぁ?何でだよ?関係ねーだろ!」
「おい…二人共いい加減にしろよ…」
オレの言葉も聞いちゃいない。
二人でお互いの服を引っ張り合ったりこずき合ったり…終わりそうもない。
ただ流石にすきっ腹にごたごたとやられたからオレも多少虫の居所が悪かった。


 「カズ…

 いい加減にしろよ…怒るぞ…」

 「!!」

 早坂がオレを見て固まった。

 カズはオレを見て真っ青になって硬直した。
 
 「わーーごめんなさいっっ!
   ごめんね!慶くんっっ!!」


カズが今にも泣きだそうだ…
「早くメシ食べに行こう…カズ。」
そう言ってカズの頭を 撫でるとニッコリ微笑んだ。
「…!!…うん!」
カズはあっという間に満面の笑顔で椎凪を見上げてまた腕にしがみついた。
さっきのは一体何だったんだか… 俺はそんな二人を後ろからじっと見つめてた。


「なあカズ…」

「ん?」

次の日学校で気になってた事を聞いてみる事にした。
「お前さ…椎凪の事ってマジで好きなわけ?」
聞くのも恥ずかしいが…
「うん。」
おーおー言い切ったな。
「女を好きなのと同じなのか?」
「うん。まぁ障害は多いけどね。」
カズの頭の中に亨が浮かんだのを早坂が気付く訳もなく…
「いつからなんだよ…」
「小学一年の時から。」
「はぁ?そんな昔から?」
「うん。」
「きっかけは?」
「きっかけ?んーとね…」
しばらく沈黙…
「言わない!内緒!」
「はぁ?何だよ。 思わせぶりな態度しやがって…良いじゃんか言えよ。」
「やだよ!慶くんと僕の大切な思い出だもん。」
「ったく…」

自分でも何でそんな事を聞いたのか…
何気に何かを思い出してるカズの横顔を横目で盗み見てた…

「椎凪はカズの事…変に思わないのか?」
「何が?」
懲りもせず今度は椎凪に聞いた。
「カズの奴お前の事女を好きなのと同じ気持ちで好きなんだぞ?」
「知ってるよ。小学校からだから…一途だよな…」
椎凪が満更でもなさそうな顔で笑った。
「マジか?いいのか?男だぞ?」
「別に。オレもカズの事好きだし。」
爆弾発言だぞ!椎凪っっっ!
「マ…マジか?」
「ああ…」
「………」
言葉が出ねぇ…
「やっぱ引くか?」
クスリと笑ってる。
「…いや…初めての事で…何て返したらいいのか…」
「友達としてな…まあそれ以上って言える けど…」
「…そっか…そうだよな…ビビった…」
「でもいきなりどうしたんだよ。そんな事聞いてきて?」
「いや…ちょっとした好奇心ってトコかな?」
「へー…」

そう言うと椎凪も何かを思い出すかの様な眼差しをして何処か遠くを見てた。
俺は…前から椎凪の事を気に入っていたのはクラスメイトとして だと思ってた…
でも必要以上に椎凪を女とくっ付けたかったのは…
誰かとくっ付いてくれれば俺がホッと出来ると思っていたからか…
しかも椎凪の保護者様に トキメキにも似た感情が湧いたのも事実で…
何だか自分が危ない世界に入りそうで…怖くなった…



「怖かったら電気点けおこうか?慶彦くん…」

「大丈夫だよカズくん。」

小学校に入って初めての夏休み。
同じマンションの同じ階の二軒隣に住んでる慶彦くんと同じクラスになった。
幼稚園は別々だったから嬉しくてお母さんに頼み込んで家にお泊りに来てもらった。
慶彦くんは優しくて僕より背が大きくて勉強が出来て僕は大好きだった。
前から泊まりに来て欲しかったけどお家の人が良いですよって
言ってくれなかったからダメだった。
だけど僕からと慶彦くんからもお願いしてやっと許してもらった。
一緒にご飯食べてお風呂にも入って今から寝るところ。
楽しい時間はあっという間に過ぎちゃうな…

「どうしたの?」
慶彦くんが心配そうに僕の 顔を覗き込んでる。
「目が覚めたらもう帰っちゃうんだなぁって…」
「また泊まりに来るよ。カズくんもオレん家に泊まりに来ればいいよ。」
ニッコリと笑ってくれた。
「いいの?」
「いいよ。」
「うれしい〜あ…でもあの人がダメって言うよ…」
慶彦くんのお家の人…僕を見る顔が怖いん だよな…
「大丈夫だよ。オレからも頼んでみるから。」
「うん!泊まれたらいいな。」
「そうだね…じゃあもう寝ようか。」
「うん。」

「おやすみ。カズくん。」
「おやすみ。慶…」
「 チュツ 」
「え?」
慶彦くんが…僕の口に…
チュツって…

「おやすみのキスだよ。」
うわーニコッって笑った…

「お…おやすみ…」



僕はそれからしばらく胸がドキドキしてた… 眠いなんてどっかいっちゃって…

慶彦くんの事が前よりもっともっと好きになった。



「カズ帰るぞ。」
慶くんが僕を呼ぶ…
「今行く〜 ♪♪ 」
僕は何処にいても直ぐに慶くんの所に走って行く。
「ねぇ慶くん。今度僕ん家泊まりに来てよ。」
「ああいいよ。久しぶりだな… カズんトコ泊まんの。」
「でしょ?でも亨ちゃん邪魔しないかな…いっつもウルサイんだもん。」
結構なハードルなんだな…これが…
「しばらくの間大丈夫だと思うから今のうちだな。」
オレに愛してるって言われて舞い上がってるから。
「ホント?じゃあ今度の金曜の夜ね!」
「ああ。」
「ヤッター ♪♪ 」

僕はいつもの様に慶くんの腕に絡み付いて…いつもと同じ様に慶くんと家に帰った。