SHIINA&shiina

2人が一緒にいたら大人椎凪は子供椎凪を溺愛するんだろうな…と思って考えたお話です。
BL要素含んでますので要注意。 *大人椎凪 : 慶兄  子供椎凪 : ヨシ




朝下に降りると人の気配がしない。
「やっぱり慶兄忘れてる…」
今日は日曜日だけど学力テストがあるって言っといたのに…
そのまま2階に上がって慶兄の部屋に 直行した。
自分で朝ごはんの支度しても良いんだけどオレは慶兄の作る料理が好きだから
いつも食べたいし慶兄が家に居る時に勝手に食べると
『オレが作ってあげた かったのにぃ』ってイジケてうるさいから…
走り込んで慶兄の部屋のドアノブに手を掛けようとした瞬間
中からドアが開いた。
「……うわぁ!!!」
目の前にグラビアアイドル顔負けの裸の胸がタオルに包まれて現れたっ!!
お色気バッチリの綺麗なお姉さんと鉢合わせだ。慶兄ィ………
「………」
「あれ? 君が噂の弟君?」
「はぁ?」
いきなり指差されて…一体どんな噂撒き散らしてんだっっっ
「慶兄ィ…!!」
必死に叫んだ。
頼むからオレの視界から その胸が消えるまで離れてくれ!!目のやり場に困る!!
「…ンー…あれ…今日って…学校休みだろ……?」
モッソリと布団が持ち上がって…でーーーっっ!!! 慶兄まで裸って!!
純真無垢な中学生にナンテもの見せんだっっ!!仮にも保護者だろっっ!


「すっかり忘れてたよ。ゴメンゴメン。」

あれから 取り付く暇も無い程急に冷たい態度になってお姉さんを追い帰し
手早くオレの朝食を作ってくれた。
やっぱ慶兄の料理は美味しい。
「なんか可哀相だったな… あの人…慶兄って結構女の人に冷たいよね。自分から誘っといてさ。」
「いいの。初めっから一晩だけって約束だから。夕べは仕方なく連れて来ただけだし。」
「出来れば家には連れて来ないでよ…」
心臓に悪い。
「だから夕べは仕方なく。ホテル行ってたら帰ってくんの朝だもん。
可愛い弟を一人で一晩中置いとけない だろ?物騒だし。」
そう言ってニッコリ笑う。そんな時だけ刑事の顔だ。
なんか捻くれ曲がった理屈なんだけど…お兄様…警察官がこんな事していいのかな…
「そう思うならあんな事しなきゃいいのに…耀さんにチクっちゃうよ。」
ギ ク ッ !!
明らかに動揺してる。
耀さんは大学二年生の女の子。
この欲望の 塊みたいな慶兄にもう何ヶ月も片思いをさせていると言うとんでも無くスゴイ人。
どうやらその不満を他の女の人で紛らわしてるらしいんだよね…
まぁ可哀相って 言えば可哀相な気がするけど自業自得と言う気もしなくも無い…
「兄を脅すのか?弟よ…来月からおこずかい無しね。」
「エエーーーっっ!!それって横暴!! 慶兄ひどいっっ!」
「オレがこの家の大黒柱だよ。オレがこの家の法律だから。ハハハ!!」
「断固抗議する!!」

朝っぱらからからかわれ危うく遅刻する 所だった。
「ヨシ。」
「ん?」
「愛してるよ…」
出掛ける前のいつもの挨拶。
子供の頃は今ほど気にはしてなかったけど今はやっぱりみんなとは
違う事に気が付いた。
「ン…」
抱き寄せられて慶兄が優しくオレの頬にキスをする。
それがすごく恥ずかしい。

オレが10歳の時両親が事故で死んだ。
その時慶兄はもう刑事になっていた。それから慶兄が親代わり。
本当に父親役と母親役をやってくれた。
中学の頃から地元じゃ有名な程喧嘩が強くて高校の頃には
家事全般得意で料理の腕なんかバイトで磨かれて
ありとあらゆる物が作れる。
それにオレに凄く優しくてオレを愛してくれて…
オレは淋しいとか悲しいとか… そんな事何にも感じずに過ごして来れた。
でもそれが『溺愛』と気付くのに随分時間がかかったけど…

「逃げんなよ。」
抱き寄せられてる身体を更に引き 寄せられた。
「だって…恥ずかしいんだよ。こんな事兄貴としてる中学生誰もいないよ!」
抱き寄せられた身体を押し戻した。
「他所は他所!家は家だから。 愛してるんだって…ヨシ…」
「や…ちょっと…」
逃げると更に淫らさが増す…失敗した…時間も無いのに!
「オレの事愛してるって言ってよ…ヨシ…」
ホントヤバイって…
唇を奪われそうな位慶兄の唇が近付く…ひーー……
「あっあっ愛してるって!!慶兄の事世界中で一番愛してるっっ!!」
今までの経験で 取得した対処法…これでOKのはず。
「オレも愛してるよヨシ」

チュッ!

「…うわー!!」
唇にキスされたっっ!!
「甘いなぁ…そう言えば オレが納得すると思ったんだろ?」
ニコニコ笑うなっっ!
「…だからって口にする事ないだろっっ!!ファーストキスだったんだぞっっ!!」
「ヨシのファースト キスなんてもうとっくにオレのもんだよん!」
「!!!」
腰に手を当てて威張るんじゃないっっ!初耳なんですけどぉぉっっ!!
「いってらっしゃい。」
ニッコリと満面の笑みで言われたぁ!!
「そんなんで騙されないからなっ慶兄っっ!
帰ったらじっくり話し合ってやるっっ!!」
「はいはい。」
腰にシーツ を巻いただけの慶兄が玄関のドアが閉まるまでオレを笑顔で見送ってた。

頭に血が上り試験は散々だった…慶兄のせいだ…帰ったらどうしてくれよう…
オレは 思い付く限りの嫌がらせを考えた。

「椎凪君。」
帰ろうと廊下を歩いてたら呼び止められた。
「真鍋先生!」
数学の真鍋先生だ…でも噂では全教科担当 の先生より教えるのが上手とか…
「どう?出来た?」
優しく笑ってる。
オレは真鍋先生が気に入ってる。
先生としてもそうだけど別の理由でも。
「全然…慶兄のせいで散々です。」
「慶彦のせい?」
ピクリと先生の眉の端が動いた。

「朝っぱらから裸の女の人が家にいるし…」

先生に聞こえる 様に呟いた。慶兄への仕返し決定!
「ほぅ…お兄さんは今日家に居るのかな?」
先生の眼鏡の奥がギラリと光った。
「はい!休みで家にいます。」
元気良く 答えた。

バ タ ン !
玄関の閉まる音がした。ヨシが帰って来たんだ。
「ヨシおかえり!淋しかっ…」
「こんにちは。ヨシ君の保護者さん。」
「…と…とっ…亨っっ!?」
慶兄の顔が見る見る青ざめていく…物凄い効き目だ。
「なっ…何しに来やがったっっ!!」
「家庭訪問だよ。ただし保護者に教育的 指導をする為にね。
朝っぱらから中学生に裸の女性を見せたそうじゃないか。
その事についてじっくりと話し合おうか…慶彦。」
言いながら玄関を上がって慶兄に 詰め寄って行く。
慶兄は真鍋先生が近付く分後に下がる。

先生と慶兄は慶兄が中学生の時からの知り合い。
慶兄は真鍋先生の教え子なんだって。でもよくよく 話しを聞くと
その前から知ってたみたいなんだよな…
二人共あんまりその辺の事は話してくれないけど…
慶兄は真鍋先生に絶対勝てない。
その辺がオレが 真鍋先生を気に入ってる所。
いつでもオレの味方だ。
先生が言うにはオレは中学生だった頃の慶兄に似てるから余計可愛いって言う。
学校では内緒だけどね。

慶兄が追い詰められて壁と先生に挟まれてる。
いたいけな弟の清らかな唇を奪った罰だっっ!たっぷりとお説教されてしまえっっ!!
慶兄がオレの為に作ってくれた オレの大好物だらけのお昼ご飯を一人先に食べながら
そんな光景を楽しげに見つめていた。

次の日の朝…何故か慶兄がぐったりとテーブルにのびていた…
時々真鍋先生が泊まった朝はいつもこうだ…何でだろ?
だから動けない慶兄の代わりに真鍋先生がご飯の支度をしてくれる。
オレは美味しいから別に構わないんだけ どさ。
どうやら明け方近くまで慶兄は真鍋先生にお説教を喰らってたんだって…凄い…
…ご愁傷様…慶兄…
まぁこれで少しは懲りただろう…チョット可哀想かも しれないけど自業自得だもん。仕方ないよね。

…本当は夕べ慶兄が真鍋先生にベッドの中でお説教されたなんて夢にも思わず…
まぁオレは一生知る事は無かった んだけどね。