shinjisiseikatu





「お茶でも飲む?弥生さん。」

フラフラとパジャマ姿でリビングに現れた弥生さんに声を掛けた。
「乃村 弥生」さん。今人気の女流作家。
恋愛小説から サスペンスものまで幅広く手がけてる。
彼女と知り合ったのは3年前。知り合いの編集部の人に別の作家の人の受賞パーティーで紹介された。
一つ年上だったかな? 見掛けは大人の女性なのに本当は甘えん坊で寂しがり屋。
一緒に飲んだ後泣き上戸になって僕の部屋に泊めたのがキッカケで仕事で煮詰まったり一人が寂しく
なると 僕の所でしばらく滞在する。もうそうやって何本も僕の家で小説を書き上げては帰って行った。
今もやっと書き終えてそろそろ自分の家に帰るかなぁ?ってところかな?
「うん…慎二君コーヒーも紅茶も淹れるの上手だモンね…いつも美味しい。」
「ありがと。紅茶でいい?あー眠れなくなちゃうからミルクティーにする?」
「…いいよ…普通ので…今夜は…遅くまで起きてるから…」
「そう?でも仕事終わったんでしょ?それなのに?」
「うん…」
そう言ってニコッと笑う…

「慎二君…いつもありがとうね。」
ソファに座って紅茶を飲み終えた弥生さんが突然真面目な顔でそう言った。
「どうしたの?改まって…」
弥生さんが僕に向かっておいで おいでをする…僕はソファに座った。
「慎二君はさ…私の殆んどの事知ってるんだよね…」
「そうだね…」
「裸も…この前見られちゃったし…」
「あれは 弥生さんが風呂上りに裸でウロウロしてるから…」
「だって…慎二君仕事で遅くなるって言ってたから…平気かなぁ…って…」
「もー大人の女性なんだから少しは 恥らってよ…」
「…だから…慎二君が私の事で知らないのは…どんなキスするかって事と…
どんな風に男に抱かれるかって事…」
「弥生さん…?」
弥生さんが 僕から目を逸らしながら恥かしそうに言う…
「でも…今日でもう最後…いつまでも慎二君に甘えてられないもんね…だから慎二君に私の全部
見てもらいたいの…」
「え?」
弥生さんが僕の腕を引っ張って自分の方に引き寄せた…
「……でも僕…弥生さんとそう言う事する気…起きないんだけど…ごめんね…」
それは本当… 今までだってそんな気起こした事は無い…不思議な事だけど…
「だめっ!私決めたんだから。これで終わりにするの。」
弥生さんは至って真面目らしい…
「大丈夫…結婚してなんて言わないから…一度きりだもん…」
そう言って僕にキスをした…
「もー弥生さんは一度決めると止めないんだから…」
僕は呆れながら 言った。
「そうよ。だから諦めて。」
「………」
弥生さんが僕のシャツのボタンを外しながらもう一度キスをした…
…別に女性に興味が無いわけじゃない …だけど…いつも最後に思い知らされる…
誰とも相性が合わない…いつもそうだ…

「慎二君って意外とがっしりしてるんだね…」
シャツを脱いだ僕の身体を 見て弥生さんが感心した様に言った。
ここは僕の寝室のベッドの上…弥生さんに連れて来られた…
「一応男ですから…」
「もっとキャシャかと思ってた…」
「本当にするの?」
もう一度確かめた…
「する!」
「やめようよ…」
「だめっ!」
どうやら…無駄な抵抗みたいだ…
「もー…仕方ないな…」
「手抜きしないでよ!」
「はいはい…」
渋々返事をした…なんで?何でこんな事に…
女性に恥をかかせてはいけないと思って…諦めて…弥生さんに僕からキスを した…
そのままベッドに横になる…

「…ん…」
弥生さんが小さな声をもらした…
「慎二君…優しいね…いつもこんなに優しく女の人抱くの?」
「優しい?そうかな?」
「何か…遠慮してるみたい…」
「してないよ…いつもと同じ…」
「じゃあもっと激しく抱いて…」
「…!激しく?」
 ギ シ ッ !
「激しくって…どんなの?こう?」
さっきより…ベッドの軋む音が大きく聞える…
「ば…か…聞かないで…よ…あ…」
「だって本当に 判らないから…椎凪さんに聞けば良かったかな?…なんてね…くすっ…」
「誰…それ…」
「すごく…激しい人…くすっ…」
「 …あ…あっ… 」
「弥生さん?」
「慎二…君…ん…」

ずっと…ベッドが軋む音が続く…弥生さんの息も…どんどん荒くなって…僕にまわした腕にも力が入る…

…あ…何だ?いつもと違う…呼吸が…合う…弥生さんが僕に合わせてくれてるのか?
ああ…そうか…僕付き合いの長い人とするのって…初めてなんだ… 身体の関係無しで3年…
弥生さんも僕の事知ってるって事だものね…なんか…違和感が無いなんて…初めてだ…

「なに?」
裸で横にいる弥生さんをじっと 見つめてる僕に気が付いてそう言われた…
「ううん…気が済んだのかなって…」
「うん…ありがとう。慎二君…自分の中で…ケジメついたよ。」
「そう… 良かった…本当はドキドキものだったんだ…」
「うそばっかり。仕方なく相手したくせに…」
「真面目に相手したよ。」
「判ってるわよ…今まで…本当にありがとう。 食事位は付き合ってよね。」
「もちろん。」
そう言って2人共ニッコリ笑った。
「…はぁ…やっぱり相変わらずか…」
「…え?」
「ううん…慎二君は 誰のものになるのかなぁって…こんなイイ女に見向きもしないから…」
「素敵な女性だと思ってるよ。」
「思ってるくせに今まで一度も手…出さなかったよね?」
「はは…」
「あー笑って誤魔化した!もう…」
そう言って僕を小突く…

それから2度と弥生さんは僕の部屋に泊まる事は無かった…でも…友達として今でも交流は続いてる…