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「……………」

「はぁ〜気持ちいい ♪ 」

シャワーを浴びてものの10分足らずで本当に戻って来た彼の濡れた髪の毛を乾かしてる…
彼はイスに座って気持ち良さそう…

って気持ち良いでしょうよ…自分は座ってるだけなんだから!!

明るい茶色の髪…サラサラにイイ匂い…ちょっとムカつく!

整った顔に背は高い…
昔は結構女性との噂があったけど本人が言うには付き合ってもいない相手との
破局報道が出た事があるって言ってたから…そっちの噂は半信半疑。

演技はなかなかの定評があってドラマも最近は撮ってないけど映画も評判がいい…

だから…


「アチッ!由貴!!」

彼が頭を押さえて私を振り向いた。

「焦げたらどうすんだ!」

ドライヤーを動かさずに同じ場所に当て続けたら彼が跳びはねた。
ちょっと笑える…

「ちょっとムカついたから…」
「はあ?」
「ねえ…」
「ん?」
「あなた友達同士の付き合いちゃんとしてるの?」
「え?何で?」
「だって…いつも真っ直ぐ帰って来てるんでしょう?友達との付き合いも大切にしないと…」
「…くすっ…由貴は?」
「え?」
「由貴は友達と遊んだりしないの?由貴だって毎晩家にいるじゃん。」
「私は…いいの。そう言うの好きじゃないし…」

「オレの為?」

「は?」

「オレがいつ帰って来てもいい様に?」

「ち…違うから!」
「オレはね10代の頃これでもかってくらい散々遊んだからいいの。もう遊びは卒業。」
「どんだけ遊んでたの?」
「ノーコメント!まあソコソコ…な。」
「……………」

遊び人め…

「由貴!」
「!!…何よ…」
「もう歯磨きしたか?」
「したわよ…」
「トイレも?」
「!!!なっ…何よ…行ったわよ…失礼ね!それが何?」

「ふふ…」

彼が意味ありげに笑う…とっても嫌な予感!!!

「な…何よ…?」

「はい!捕まえた!!」

「 なっ!!!! 」

カ シ ャ リ !! と音をたてて私の右手に手錠が掛かった!!!

「いやぁーーーーーっっ!!何これ???ちょっ…外してよっ!!」

「撮影所から借りて来たんだ ♪ 本物みたいだろ?でも小道具だから ♪ 」

「そんな事どうでもいいわよっ!!いいから鍵!!鍵出して!!」

「無いよ。」
「はぁ?」
「鍵はオレの部屋。」
「じゃあ取って来てっ!!」
「嫌だよ。それじゃ手錠を繋いだ意味が無いじゃん。バカだな由貴は!」
「バカはどっちよっ!!この大馬鹿っっ!!行くわよ!あなたの部屋に鍵!取りに行くわよっ!!」
「だから行かないって!一緒に寝るの由貴が嫌がると思って用意したんだぞ。」
「………余計なお世話よっっ!!もう!!」

ワナワナと怒りで身体が震える…ホント…この男はっっ……

「来てっ!!」

繋がってる腕を引っ張った。

「いたたたた!!!」

彼が動かないから手首に手錠が食い込む。

「お願い…鍵…取りに行かせて……」

「ダメだって…何度言わせんだ…由貴!」
「あっ!!」

彼が手錠で繋がれてる腕を高々と上げるから必然的に繋がってる私の腕も上がる。
でも身長差で私の身体が引っ張られて爪先立ちなって…

「ちょっ…」

安定の無い私の身体はヨロヨロと向かい合う彼の身体に凭れ掛かる様に密着した。

パジャマ越しに彼の身体の温度が伝わって来るくらいに近い…
仕方なくヨロける自分の身体を支える為に彼のパジャマにしがみ付いた。

「もうっっ!!!何するのっ!!」
「由貴が素直にオレの言う事聞かないからこうなる。」
「当たり前でしょ!一緒に寝る必要なんて無いものっ!!!」

「朝が早い。起こしに来る手間が省ける。何より…オレが気持ち良く眠れる!」

「私は寝不足よっ!!!嫁入り前の独身の若い女の子と一緒に寝るなんて…何考えてるの!?」

「嫁入り前って…誰かの所に嫁に行く予定でもあんの?」
「そりゃ…今は無いけど…万が一…もしかして…
死ぬまでには…1度くらいあるかもしれないじゃない…」

「無いね!」

ム カ ッ !!

「失礼ね!何でそういい切れるのよ!!」

「そんな奴が出て来たらオレが全員排除してやる。」

「何であなたにそんな権利あるの?」

「由貴は……オレだけの世話をしてればいいからだよ…他の男の事なんて考えなくていいの!」

「……どこまで人をコキ使うつもりよ……」


お互い相手を見つめたまま半分喧嘩に近い話し方になってる…


「 一生に決まってるだろ?由貴はずっとオレの面倒を見るの!もう諦めろ! 」

「冗談じゃ無いわよっ!!いつかお役御免するんだから!」

「そんな事…オレが許さない。」

「………?」


そんな彼の顔は何故だか真剣で…ちょっと怖いくらいだった…

でも一生彼の世話役なんてご免なんだから!!!