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「…………」

ずっと胸の中が変だった…
モヤモヤ…チクチク…そんな色んな感じが混ざってて…

だから開き直り半分で小西さんの事を彼に話したけど……


今は…何でだか胸がドキドキしてる…

どうして彼はあの時私の事じっと見てたの?

どうして私に向かって 『 オレにはちゃんと心に決めてる人がいるから。 』

なんて言うの?どうして?

じゃあなんで彼はいつもふざけて私にキスしたり抱きしめたりするんだろう…その人代わり?

もう何が何だかわからない!!!

「もう!バカ!!一体何なのよ!!!」

私は訳がわからなくて…布団に包まってとにかく眠る事にした。
こんな事いくら考えたって答えは出ない…だってこれは惇哉さんにしか分からない事だからで…


……だめだ…眠れない……や…ダメダメ!早く寝ないと惇哉さんが来ちゃ…

「 !!! 」

ほら!寝室のドアがカチャリと鳴ってパタンと閉まった。

「…………」

ど…どうしよう…まだ胸がドキドキしてるし…寝てないのがわかっちゃう!!

ギシリとベッドが軋んで彼が布団に入って来た…
っていつもの事なんだけど…今は…やっぱり今日くらいは別々に寝れば良かった!!

「…由貴…」
「…………」
「由貴…寝てないのわかってるよ。」
「……!!…もう…寝るもの…お休みなさい……」

私は布団に包まったまま顔も出さずにそう言った。

「由貴……」

「…や…だめ…」

由貴が包まってる布団に手を入れて由貴の顔を両手で挟んで引っ張り出した。

「そんなんじゃ苦しいだろ?」
「だ…大丈夫…だから…離して…お…お休みなさい……」

相変わらずの真っ赤な顔だ…
本当にわかってないのか…わかっててわからないフリをしてるのか…どっちだ?


「おやすみ…」

「あ……んっ…」


また…キスされた…

私はベッドの上でうつ伏せのまま…顔を座ってる彼の方に引き寄せられた。

どうして私なんかにキスするんだろう…ちゃんと他に好きな人がいるのに…


「…ン…」


惇哉さんが優しくキスをして…そっと私から離れた…

ゆっくりとお互いの舌が離れていく……



「……なんで…」
「ん?」
「どうして私にキスするの?」
「…前言った…オレがしたいからするの。」
「だから…どうして?」
「それも前言った…見方を変えないと由貴にはわからないって…
ちゃんと考えないから由貴にはわからないんだよ……ちゃんと宿題はやれって事!」

「……いいじゃない…教えてくれたって…」


不満そうな由貴の顔…

だってきっと由貴は自分で気付いて納得しないと絶対オレの言ってる事を信じない…

初めての恋で裏切られて…自分に言われた言葉は全部嘘だったと思い知らされて
由貴は知らず知らずのうちに男の言葉を信じない様になってる…

このオレの言葉ですら半信半疑だ。

まあオレの場合つい最近由貴の事が好きだと気付いたから…
今まであんまりにも由貴に対してふざけてからかったから
信じてもらえないのも仕方ないけど…

プラス根っからの頑固さと意地っ張りと…後は恋愛に疎くて男を信じて無いって事!


ったく…あの男はホント由貴に余計な事をしてくれた……


「由貴の事が好きだからだよ。」

「え?」

「聞えなかった?由貴にキスするのも抱きしめるのも由貴の事が好きだから!理解した?」

「 !!!! 」

うわ…凄いビックリな顔だ…結構由貴って顔に出るよな…

何だかオレはもう面倒くさなってアッサリと由貴に告白した。

「どうしてか知りたかったんだろ?そう言うワケだから。」

「………う…そ…」
「うそじゃ無い。」
「じょ…冗…談…」
「冗談でもない。」

「…………」

「由貴?」

なに?ずっと黙ったまんまって?どう解釈したら???

「……い…」

「 ? 」

「いやっ!!!」

「はあ???うわっ!いてっ!!」

由貴が思い切りオレを突き飛ばすからベッドから落ちた!

「由貴?」

「かっ…かっ…帰る!」
「帰る?何処に?」
「自分の部屋!!」
「は?あ!おい!由貴!!」

何だ?一体どうした??

由貴がオレを跨いで寝室を飛び出した!

「由貴!ちょっと待てって!!」

「いやっ!触らないで!!!」

「何で?急にどうしたんだよ?」

玄関に続く廊下で由貴を捕まえて2人で揉み合ってる…何でだ???

「私の事好きだなんて言う人と一緒になんていられないもん!!!」

「は?何だよそれ?」

「私の事好きだなんていう人の事なんて信じられないっ!!だからあなたとも一緒にいられない!」

「なっ…」

どんな理屈だ?そりゃ…



彼が私を好きだと言った…

今までの様なおふざけなら私は何とも思わない…

でも…本気で…本当に好きだと言われたら……私は…その人を拒絶しちゃう……


あの日…自分を… 『 柊木 由貴 』 と言う存在を否定された日…

あの時のショックと絶望感…胸の中があんなに苦しくなって痛かった…

もう…あんな思い…二度としたくない!!!

好きだと言われた相手に……裏切られるのはもう…嫌っ!!



「由貴!!!」

「 !!! 」

強めに由貴の名前を呼んでオレの方を向かせた。

「ごめん…そんなに信じるなんて思わなかったから…」

「……?」

「ちょっと本気出して演じてみた…由貴が好きだって…」

「え?」

「流石オレだよな…由貴がここまで信じてくれるなんてさ…
普段のオレからは考えられない真面目ぶりだった?」

「……なに?それじゃ…」

「だから…本当ごめんって…嘘だから…今の…冗談…」

「………冗談?」

「ああ…落ち着いた?」
「…………」
「由貴?」


由貴が俯いたまま顔を上げない…今度は何だ?

オレはさっきから心臓がドキドキバクバク…もうテンぱってて倒れそうだ…



「もう…恥ずかしい…じゃない……あんな所見られちゃったし……」

由貴の身体から力が抜けたのがわかった…良かった…

「別に気にしてないから…それよりもう寝よう…由貴も疲れただろ……一緒に寝れる?」

珍しくオレは由貴にそんな事を聞いてる…だって…

「………」

由貴は返事をしなかった…

「じゃあ由貴はベッドで寝なよ…」
「惇哉さんは?」
「オレは今日はソファでいいから…」
「でも……」
「ホント…いいから……」

オレは由貴をぎゅっと抱きしめた…

「由貴……」

「…………」


由貴……好きだよ……

まさかこんなに由貴が傷付いてたなんで……気付かなかった……

だから今は…嘘って…冗談って事にしておくから……

でも…いつか必ず…オレの事が好きだって由貴に言ってもらうからな……



「おやすみ……」



オレはそう言うと…由貴にわからない様に……

そっと由貴の髪の毛におやすみのキスをした………