35





「眠かったら寝ていいから…」
「……うん…」
「くすっ…もう限界か…」

車を出してほんの10分で由貴は助手席でウトウトしだした。
だから飲み過ぎだっての…普段ほとんどお酒を飲まない由貴はオレが一緒だと
何故だか酔い潰れる。

本人が言うにはオレが一緒だと気が緩むらしい。

30分程走ってマンションに着いた。
地下の駐車場に車が着いても由貴は熟睡してて起きる気配は無い。

「まったく…まあこうなるのはオレがいる時だけだって言ったから…守ってはいるのか…由貴?」
「…くぅ」
「熟睡か…となると…奪わせて貰う。」
「…ん」


眠ってる由貴の唇を満足するまで奪わせて貰った。役得 ♪



「由貴…起きろ!着いたぞ!」
「ん…え?…着いた?何処に?」
「オレの部屋。大丈夫か?」
「惇哉さんの部屋?え?あ…私…」

気付いたら惇哉さんの部屋のソファだった。

「また…寝ちゃったんだ…」
「車に乗ってからね。」
「……でも部屋まで運んだんでしょ?」

「当然!女の子憧れのお姫様抱っこで ♪ 」

「!!」

「由貴顔真っ赤。」
「…………」
「先にシャワー浴びれば。目が覚めるんじゃない。」
「うん…そうする…」

もう恥ずかしいやら情けないやら…またやっちゃった…

「由貴…」
「なに?」

ド キ ン ! 

彼がまた私を壁と自分の腕の中に捕まえた!
でも今度は彼は壁に肘を着いたから顔がとっても近い…

「あ…」

やだ…今までこんなにドキドキしなかったのに…

「明日休みだよな…」
「うん…1日だけだけ…ど…」
「じゃあどっか行こう ♪ 」
「無理…」
「え?何で?しかも即答?」
「だって明日は事務所に行かなくちゃいけないから…」
「由貴1人で?」
「そう…惇哉さんは休んでてね…」
「え?オレ留守番?」
「だって仕方ないじゃない…それに私に付き合う事無いし…せっかくの休みなんだし…
ゆっくり寝てて…あ!帰りに何か買ってくるから…惇哉さんが好きな『シュガー』の
ケーキがいいかしら…?」
「いいよ…なんでも…そのかわり…」

「……ちょっ…」

彼がズイッと近付いた…だから近いってば…やだ…

「早く帰って来て…」
「わ…わかっ…わかったから!もう近いっ!」
「由貴…」
「なに?」
「今日は一緒に寝てもいい?」
「え?」
「ベッドで一緒に…」
「それは…」
「昨夜は由貴と一緒じゃなかったから寝れなかったんだと思うんだ。」
「ええ…子供じゃないんだから…そんな…」
「ねえ由貴…」
「さっきから何よ!お風呂入れないじゃない!」

「オレを見てて…」

「え?」

「他の誰も見ないでオレだけを見てて…」

「え?わかってるわよ…マネージャーしてる間は…」

「そうじゃなくて…俳優の 『 楠惇哉 』 じゃなくて 『 オレ 』 を見てて…」

「?」

由貴がキョトンとした顔でオレを見てる…まったくこんな時だけ鈍感なんだよな…

「オレは由貴だけを見てるから…」

「!!」

い…今のは…どう言う…

「そして…いつか…オレに言わせて……」

由貴の事が好きだって……

「なんて?」
「今はナイショ ♪ 」
「え?また?いっつも内緒じゃない。」
「今度は大丈夫。いつか必ず言うから…」
「本当?」
「本当!」

由貴に好きと言えないなら他の言葉で由貴を攻める。

オレがどれだけ由貴が好きか…わからせるから…だから…オレだけを見てて…

「じゃあもういいでしょ…どいて…」

いい加減この体勢から逃げたい…ドキドキ苦しい…

「由貴…」
「だから何?」
「キスしたいな…」
「え?」
「ダメ?」
「だだだだ…駄目っ!!」

そんなのダメに決まってるじゃない…何でそんな面と向かって…

「ふーん…じゃあ逃げて。」
「は?」
「頑張って抵抗して。」

「はあ?何言っ…んっ!!」

またキスされた!

「ン……や…」

今までとどこか違うキスで…どうしたら…
いつの間にか身体ごと抱き寄せられて…ちょっと待って…こんなの…

「オレに掴まれば楽だよ…由貴…」

ほんのちょっと唇が離れた隙に彼がそんな事を言う…彼に掴まるって…?

「オレの首に腕を廻して…由貴…」

「……え…?…」

言われた通り素直に彼の首に腕を廻した…ちょっと恥ずかしい…

「あ…」




リビングから出た廊下で……

私達はいつまでもいつまでも……ずっとキスをしてた……