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「由貴…」
「ん?」

「約束通り話をしようか…」

「今?」
「うん…」
「ここで?」
「ここで!」
「………」

ここって…ベッドの中で?

「明日にしない?ちゃんと話す姿勢で…」
「今…」
「……わかった…」

何だかこれ以上は逆らえなくて…私は頷いた。


「今回の話の内容は由貴も大まかな事はわかってると思うけど大学内で起こった
殺人事件の犯人がオレなのか別の人物なのかって所が焦点になってる。」

そんな事を話しながら惇哉さんは私の方に横になって頬杖をついて
片手はしっかりと私の身体に廻されてる…

そんな動作も私は全然気にしなくなってた…

「いつも殺人現場にいながら決定的な証拠に欠けて…
でも限りなく犯人に一番近いんだけど捕まえる事が出来なくて…」
「女刑事の高瀬さんが証拠を見つけようと惇哉さんに近付いていくんでしょ?」
「そう…最初は疑ってた彼女だけど石原の事を調べて行くうちに犯人じゃ無いんじゃないかって思い始める…
でも気持ちはまだ半信半疑…だけどそんな彼女の気持ちを見抜いて石原は彼女をいい様に振り回すんだ…
まるで新しく見つけたオモチャみたいに…」
「そう言う設定は惇哉さんにぴったりかも!」
「………そんな事無い!オレはいつも優しいだろ?」
「顔…引き攣ってるわよ。」
「…ああー…それから石原が何気に事件の謎を解くヒントをくれる様になる…」
「それを手掛かりに彼女が事件の核心に迫って行くのね?」
「ああ…」
「そんな2人の間に恋愛感情も生まれるの?」
「ああ…2人と言うよりも…彼女の方にって感じかな…
もしかして犯人かもしれない男だから…彼女も葛藤しながら石原と接して行く…」
「じゃあそれで事件解決できるんだ。」
「でも最後の事件の確信に迫る一番重要な事は石原は教えてくれない。」
「どうして?」
「そこまで良い奴じゃ無いから。」
「そう…」
なんでにっこり笑って言うんだか…
「どうしても事件を解決したい彼女はしつこく石原に食い下がるんだけど…
そんな彼女に石原は条件を出す。」
「条件?」
「そう…」
「どんな?」

「彼女を壊す為に1人の女としてじゃなく…刑事として石原に…身体を差し出す事…」

「え?」

目の前で言われた言葉があっという間に私の頭の中を通り過ぎた…

「ラブシーンがあるんだ…由貴…」

「…………」

私は…返事もしないで惇哉さんをただじっと見つめてた…

「ベッドシーンがある…」

惇哉さんも私を真っ直ぐ見つめ返してる…
だからお互い相手の瞳をじっと見てた…

「そ…それは…仕方ないわよ…ストーリー上必要な事なんだし…
い…今までだってキスシーンとかあったじゃない…」

やだ…上手く言葉が…喋れない……情けない!

「今までのキスシーンなんて比べ物にならない…由貴…」

「 !! 」

「きっと由貴はそんなシーンを見て…ショックを受ける…」

「そ…そんな事無いわよ!子供じゃ無いんだし…これでも……マ…マネージャーなんだから…」
「臨時だろ…もともとそんな事に慣れてないんだから…由貴に割り切れるわけがない…」
「し…失礼ね!そんな事無いわよ!それにマネージャーやらせたのは惇哉さんじゃない!」
「そう…由貴に傍にいて欲しくて無理矢理マネージャーやらせた…」
「………」
「でも…由貴に耐えられる?由貴の目の前でオレが他の女と裸で抱き合ってるの見るなんて…」
「………」

「オレ手を抜かないからきっと激しくなると思う…
監督にもそう言われてるし…相手の彼女もそれを承知してる…」

彼女?……ああ…高瀬さん……

「で…でも…演技じゃない…本当にするわけじゃ無いんだ…もの…平気よ…そう…平…」


それ以上話せなくなった…どうしてだかわからないけど…
頭の中で惇哉さんと高瀬さんの裸で抱き合ってる場面が浮かんだから……

私……


「由貴…」

惇哉さんが優しく私の名前を呼ぶから…視線を惇哉さんに向けた…

「由貴も知ってると思うけど…オレ何度か女の人とは経験がある…」

何度なんて言葉じゃ言えないくらい経験があるけど…今はそう言う事にしとく…

「でも…ここ何年は誰も相手にしてない…」
「 !? 」

「いつも由貴が一緒に…傍にいてくれたから他の女なんて考えなかったから…」

「…………」

「オレは仕事って割り切れる…仕事ならどんな事でもする…でも…由貴…」

「……なに?」

「本当は…由貴以外の女の身体なんて触りたくない…だから…」

「だから?」


「今夜……由貴を抱く……」