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週刊誌に由貴との事を報道されて由貴が慌てまくった。

社長に呼ばれて事務所の社長室で社長と2人ここまで来たのに
未だに結婚を承諾しない由貴を問い詰めたら結婚を迫ってるオレが
由貴にプロポーズをしていない事が発覚!
そんな状態で由貴がOKしてくれるはずも無く…

強気に出ていたオレはあっという間に形勢逆転され…窮地に立たされていると言う訳だ…


「本当に………言ってなかった?」
「ええ…そんなに疑うなら自分でなんて言ったか覚えてるの?」
「………」

速攻で今までの…特に最近の会話を思い出す…

「ずっと由貴の事が好きだって言ってた…由貴を誰にも渡さないって…由貴を裏切ったりしないって……」

「それがプロポーズの言葉なの?」

グ ッ サ ッ !!

「…………」
「惇哉さん?」

「ち…違います……」

ああ…情けねぇ………

「でしょ?そりゃ惇哉さんの気持ちはわかってるつもりだったけど…
やっぱり一生に一度の事ですもの…こだわったって良いでしょ?」

「じゃ…じゃあ…」

「え?まさか取って付けた様に今ここで言うつもりじゃ無いでしょうね?惇哉さん!!」

「え”っっ!!」

「私そんなの認めませんからねっ!」

「由貴…」

確かに…由貴の言う通りだよな…

「わかった…オレが悪い………でも…付き合ってるっていう事は言っても良いだろ?」

「それは…本当の事だから…」
「ありがと…由貴…社長!と言う事で…後宜しく。
それから当分由貴家から出さないけどいいよな?」
「そうだね…きっとマスコミに追い駆けられるだろうし…
柊木さんそういうの初めてだからちょっと大変だろからね。」
「え?それは…」
「何だよ?」
由貴が困ると言いたげな顔と声だ。
「だって…映画の撮影がもう少しで終わるのよ…
私のマネージャーの最後の仕事だから…最後までちゃんと勤めたい!」
「でもね…柊木さん…」
「私なら大丈夫ですから…取材ならちゃんと受けますし…」

「そんなのはオレに任せればいいんだ…由貴…何も由貴が矢面に立つ事無いだろ。
騒がれてる対象はオレなんだから…」

「惇哉さん…」
「……はあ…とりあえず撮影遅刻するからもう行く。
社長何か聞かれたら真面目な交際中って言っておいて…由貴!」
「ん?」
「満知子さんにも言っておいた方がいい…きっとマスコミが押しかける。」
「え…あ…うん…」
「まあ満知子さんの事だからマスコミの扱いも慣れてると思うけど…あ…いいやオレから話す。」
「はい……」

何だかこう言う時は惇哉さんの方が慣れてて…助かる…
って思っても良いのかちょっと複雑だけど…

社長に後の事を頼んで部屋を出た。

「由貴…」
「ん?」
「本当に今日仕事するの?オレはあんまりお勧めはしないけど…」
「するわよ…」

だって…惇哉さんと一緒に仕事ができるなんてこれが最後だもの…何があっても…

「じゃあ…アドバイス!」

「!!」

惇哉さんが振り向いて私の頭に手を置いた。

「由貴は何も答えなくていい…誰も相手にすんな…」
「惇哉さん…でも…」
「由貴はオレが守るから…」
「惇哉さん…」
「まあいつものゴシップ記事じゃ無いんだし…
そんな嫌な思いもしないと思うけど色んな奴がいるから…
どんな質問されるかわからないから…覚悟だけはしといて…」
「…うん…」
ポンポンとされた。
「由 貴…」
「ん?」
「好きだよ…」
「………」

スッと惇哉さんが屈んでそっとキスを…

「あ!2人共こんな所にいた!」

階段の上から顔を覗かせた寺本さんが私達を指差して大声を出した。
「え?本当!」
後から他のメンバーも顔を出す。

「ちょっと!いつから付き合ってたの?」
「もう水臭い!」
「一緒に暮らしてるの?」

「ちょっ…ちょっと…」

次から次から次に質問が浴びせられる。
あ…きっとこれ以上に色々聞かれるんだろうな…なんて思ってしまった…

「仲が良いとは思ってたけど…まったく…」
「スミマセン…」
「何で謝るのよ?」
「隠してたみたいになったので…」
こんな風になると何となくそう思う…
「時間無いからまた今度ね。」
惇哉さんがそう言って会話を遮った。
「じゃあ近いうちにちゃんと説明してもらうからね!柊木さん!」
「はい…」
「オレが教えてあげるよ ♪
由貴との出逢いからどんな風に愛を育んできたか…どんな風に愛し合ってるか…」
「ええーーー!?ホントに?」
一瞬で皆が黄色い声を出して舞い上がった!
「ちょっ…惇哉さん何変な事言ってるのよ!いいから!!私がちゃんと話すから!!」
「え?そう?なんだ2時間ほど熱弁しようと思ってたのに…」

冗談じゃ無いっていうの!何話されるか…危ないんだから…

皆に何度も頭を下げて事務所を後にした。


「!!」

想像はしてたけど実際目の当たりにすると緊張する…
撮影所の周りに結構な数の人だかりがあったから…

花月園さんの時は惇哉さんは部屋に閉じ篭ってたし
たまたま仕事も無くてそんなにマスコミに追い駆けられる
なんて事が無かったから…

「由貴は裏口から入って…」
「うん…」

撮影所の駐車場に車を止めてしばらく車から降りずにいた。

「そんな顔しない!後ろめたい事じゃ無いんだから。」
「そうなんだけど……惇哉さん…」
「ん?」

「絶対余計な事まで話さないでよっ!!」

「え?」

由貴が真面目な顔でオレを見つめる。

「レポーターの人が喜ぶ様な話絶対禁止ですからね!」

「やだな…由貴…オレがそんな事…」
「ううん!信じられないの!
だって惇哉さんにとったら今回の事って逆にラッキーくらいに思ってるんじゃないの?」
「え”っ!?」
「ほら!その顔が何もかも物語ってるわよ!」
「由貴…それはとんだ濡れ衣だって…」

本当は大正解で世間に向かって大声で叫びたいくらいなんだ。

やっとオレ達の事が大っピラに出来るって ♪ 
由貴にはこんな形になって悪いとは思うけど…オレは嬉しい ♪

「約束よ!交際を認める以外余計な事言わないでっっ!!」
「はいはい…」
「毎晩愛し合ってるとかキスしてるとか…絶対言わなくて良いんですからねっ!!」
「はいはい…わかってるって…信用無いな…」
「あるわけ無いでしょっ!!それに 『 はい 』 は1回っ!!」
「……はい。」

なんでこんな時に由貴にお説教されなきゃいけないんだ…
なんて思いつつ車から降りると警備員と揉み合いながらレポーター達が迫って来た。

「ほら…由貴が説教なんてするから…気付かれた。」
「え?私のせい?」

「楠さーん!あの週刊誌の件なんですけどーーー!!」
「今度は真面目なお付き合いなんですかーー!!」
「あ!そちらがマネージャーさんですよね!!」

色んな人が色々言いながら迫ってくる!!

「由貴早く中に…」
「……う…うん…」
「由貴!」
「え?」

裏口の扉に向かって歩き出した私を惇哉さんが呼び止めたから思わず振り向いた。

「ちゃんと言うから……」
「え?」

私の腰に惇哉さんの腕が廻されて…そのまま抱き寄せられた……
え?何?一体何がどうなって……

そんな惇哉さんの行動でさっきまで騒いでたレポーターの人達も静になった…


「柊木由貴さん。」
「…は…はい……」


「 オレと結婚して下さい。 」


「……惇哉さん……」


今は…ハッキリと…ちゃんと聞こえた……
私だけじゃなくて…傍にいたマスコミ関係の人達全員にも……


「……あ…」


私にハッキリとプロポーズの言葉を言った惇哉さんは……

そのまま…皆の見てる前で……堂々と……

私にキスをした……