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「ごめんなさい…」
「え?ああ…」

由貴がさっきからベッドの中でオレに謝る。
ベッドから出て由貴に背中を向けて着替えてたら由貴が慌て出して謝った。

腰よりちょっと上に引っ掻き傷が斜めに何本か入ってた。

「裸になる撮影無いし別に…」
「…そうだけど……」
「くすっ…由貴顔真っ赤…」

もう…やだ…恥ずかしい…
さっき無我夢中で惇哉さんにしがみついたから……

「恥ずかしがるのはわかるけどそろそろ起きてくれないと撮影遅刻する。」
「わかった…」
「………」  「………」
「ん?」
「あっち行ってて…」
「何で?」
「だって着替 えが何1つ無いんだから…」

こんな明るい場所で裸で立てるわけ無いじゃない…

「あ…そっか…昨夜風呂場からそのまま由貴の事連れて来たんだっけ?」
「そうよ…だから着替えるから出て行って!」
「今更だろ?オレもう由貴の身体隅から隅までバッチリ覚えてるもん ♪ 」
「それでも!!あっち行って!!私はまだそう言うの無理なの!!」
「はいはい…まったく由貴はワガママだな…」
「ワガママじゃ無い!恥じらいってものでしょ!!惇哉さんはそう言うの無さそうですけど!」
「それは偏見!」
「いいから!!早く!!」

何だかんだとなかなか出て行かない惇哉さんをやっと追い出した。
念の為にしばらく様子を見てドアをじっと見つめてた……

あれから1分…もう大丈夫よね…

意を決してベッドから抜け出てクローゼットに手を掛ける…

「由貴!」

「 !! 」

ガチャリと部屋のドアが開いて惇哉さんが覗き込んだ!!

「きゃああああああーーーー!!!イヤッ!!バカっ!!チカンっっ!!」

素っ裸のまま立ってた私は悲鳴を上げてまたベッドに潜り込んだ。
今のは絶対見られたっっ!!もう!!

「チカンって…失礼だろ…ってかまだ着替えてなかったの?」
「うるさい!!もう…何?」

惇哉さんを警戒して様子見てたのが失敗した!!わぁ〜〜ん!!!余計恥ずかしい!!

「由貴…」

キシリとベッドが軋んで惇哉さんがベッドに座る。
そのまま両手を広げて私を抱える様に手を着いた。

「もう全国の人にもオレ達のこと分かっちゃったんだからさ…いいよな?」
「え?何が?」

私は顔半分だけ出して惇哉さんを見上げた。
うわっ!とっても顔が近くて…目の前!!

「ちゃんと日にち決めて…出しに行こう…婚姻届け ♪
夜中だって受け付けてくれるんだからいつでも大丈夫だろ? ちゅっ ♪ 」

ちょっとだけ出てる由貴の顔のオデコにキスをした。

「だから嫌って言ったでしょ!」

「……………は??」

今…由貴は何て言った??聞き間違い??

「由貴…」
「何?」
「もしかして今…「嫌」って……言った?」

聞くのも怖いけど……

「ええ…言ったわよ。」

「はあああ???どうして?何でだよ?プロポーズちゃんと受けてくれたんだろ?」
「ええ…受けたわよ。」

話…噛み合って…ない??

「じゃあ…なんで…」
「だから前から言ってるでしょ…
私は惇哉さんのご両親にまだ紹介してもらってないって!だからよ!!」
「なっ……」

この期に及んでまだソコにこだわるのか…由貴…

「どうせテレビで知ったよ…」
多分…
「だからテレビで先にそんな事知るなんて余計申し訳ないの!」
「もしかして…オレの親に会わない限り結婚しないなんて言わないよな?」
「言うわよ。当然でしょ?大体何でそんなにご両親に会わせたくないの?反対されるから?」
「反対なんかしない…それにさせないしされても結婚するし…」
「じゃあいいじゃない…」
「…………」
「惇哉さん?」
「……そんなに会いたい?」
「ええ…だって普通会うでしょ?結婚するのよ。」
「………会っても仕方ないと思うけど…」
「それでも!」
「……………はぁ〜〜わかった…じゃあ撮影がもう少し落ち着いたら…で良い?」
「本当?約束よ!」
「わかった…約束する…」


どうして惇哉さんが私がご両親と会うのをそんなに嫌がるのか…
仲が悪いとか聞いた事無いのに……

でもこれでやっとご挨拶が出来るって私は惇哉さんとは裏腹に内心とっても嬉しかった。