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「お兄さん…何か気に入らない事でもあったのかしら…あんなにすぐ帰るなんて…」
「さあ…機嫌を損ねたわけじゃないと思うけど…
まあ昔から兄貴は何を考えてるか人に悟らせなかったから…オレも良くわからない…」

そう…兄貴はいつもニッコリと笑ってた…
何でもその笑顔の下に隠してたんだ…子供の頃はわからなかったけど…

「由貴〜 ♪ 」
「なっ…何よ…」
惇哉さんがリビングに続く廊下で私の腰に腕を廻して引き寄せる。
「皆賛成してるだろ?」
兄貴があんな事言うなんて意外だったけど…
「だから?」
「だから先に籍入れよう ♪ 」
「だから嫌!」
「由貴…何でそんなに意地張るんだよ?もう意味無いだろ?」
「意味ならあるでしょ?ちゃんとあの人の事ハッキリさせて!」
「霈の事?」
「当たり前でしょ。」
「はぁ〜〜〜もう…一体いつになったらオレは由貴と結婚出来んの?」
「んーー……いつかしら?」
「まったく…ねえ…由貴…」
「ん?」
「オレの事……好き?」
「………そんなの当たり前でしょ…
じゃなきゃ結婚しようなんて思わないし一緒にも暮らしたりなんかしないわよ…」
「そ…じゃあ後もう少しは我慢する…」
その照れてる真っ赤な顔に免じて…
「出来るんだ?」
「とにかく明日にでもアイツに連絡してみる…」
「今日じゃなくて?」
「今日は…残りの時間は由貴とゆっくり過ごしたい…
明日から昼間一緒にいれないんだぞ。わかってる?由貴!」
「前に戻るだけよ…」
「そうだけど…前とは違う…由貴…」
「……惇哉さん…ン……」

キスしても由貴は嫌がらなかった…
だから今の何とも言えない気持ちを紛らわす様に由貴にキスをねだる……

「はぁ…惇…哉…さん……」
「ん?」
「お腹空いたんだけど…早く夕飯食べに…きゃっ!」
いきなりお姫様抱っこで抱き上げられた!
「じゃあ美味しく夕飯が食べれる様に軽く運動してお腹減らそう。」
「え?ちょっ…私はもうお腹空いたって…」
言ってる間に寝室のドアが惇哉さんの肩で押し開けられた。
「惇哉さん?」
「オレはもう少しお腹空かせたいんだな…由貴…付き合って ♪ 」
「ええ!?む…無理!それに夕飯食べるの遅くな……あっ!!」
また言ってる間にベッドに2人で倒れこんだ。
倒れ込んだって言っても惇哉さんに抱っこされてたから惇哉さんが倒れれば
私も倒れ込むのは当たり前で…
「ちょっ…惇哉さん!まっ……シャ…シャワー浴びてから…」
「へえ…随分積極的 ♪ ってそうやって逃げるつもりだろ?甘い!」
「だって……」
失敗した…読まれてた!
「由貴…」
「………」

ああ…また言われちゃう…

「愛してる……」


世の中のどれだけの人が待ち焦がれてる言葉なんだろう……
それを…私は…1日に何度も言ってもらえて…

しかも相手は抱かれたい男に殿堂入りした人なのよね……
あまり気にした事無かったけど…

だからってわけじゃないけど…そっと惇哉さんの頬に指先で触れてみた…

「由貴?」
「世の中のどれだけの人があなたからのその言葉を待ってるのかしら…」
「由貴…」
由貴の指先が頬を滑ってオレの唇をなぞる…
「私はそれを独り占めしてるのよね…」
「オレが好きになった人なんだから当然の権利だろ?」
「権利?」
「オレに好かれる権利…愛される権利…オレを独り占め出来る権利…オレに愛をささやかれる権利…」
「クスっ…キリが無いじゃない…」
「当たり前だろ…キリが無い事なんだから…だからオレはその逆…」
「え?」
「由貴に好かれる権利…愛される権利…由貴を独り占め出来る権利…由貴に愛をささやかれる権利…」
「権利はあるかもしれないけどその権利を遂行するのは難しいかも…」
「わかってる…だから実現した時はきっと嬉しくて泣くかもな…」
「え?惇哉さんが?」
「そう…うれし泣き ♪ 」
「大袈裟…」
「大袈裟なんかじゃない……由貴…今度の事がちゃんとしたら…今度こそ籍入れて…
頼む…じゃないとオレ勝手に出すかも…」
「辛抱が足りないわね…」
「あのね…オレがどれだけ前から辛抱してるか…由貴わかってないだろ?」
「どの位?」
「………辛抱し過ぎて忘れた……」
「……あっ…」

由貴の首筋にキスをしてオレの身体で由貴を包み込んだ…
由貴は嫌がったりしなくて…オレの首に腕を廻してくれる……
ちょっとは慣れてくれたのか……

洋服のボタンを外しても…その服を脱がせても…由貴は嫌がったりしなかった…
露わになった由貴の胸にオレの印をつけると由貴がピクンと小さく跳ねた…

「あ……夕飯は……私の…好きなモノで…ね……」

オレが露わになった由貴の胸の上にキスと舌を滑らせると
大きく仰け反りながら由貴がそんな事を言う…
ホント…由貴ってば進歩してきた……

「了解!」


それから2人…お腹とは違う場所が一杯になるほど愛し合って……

もう夕飯とは言えない様な時間に由貴リクエストの料理を食べた…