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メグの話と兄貴の話と全部ひっくるめてまとめたら1つの答えが出た…

メグの事を10年前から想い続けてる相手は……兄貴…?



「お前のその相手って……兄貴?」
「!!!」

言った瞬間メグが目に見えてビクリとなった。
わかり易い奴…

「ちちちちち違うわよっ!」
「………バレバレなんだけど?」
「だから違うってば!」
「じゃあ兄貴に此処に来てもらうか?そうだよ兄貴に恋人役になってもらえばいい。
相談に乗ってくれると思うけど。」
「ダダダダ…ダメよ!!」
「何で?」
「ダ…ダメだから!ま…柾クンに…め…迷惑掛けられないし…」
「大丈夫だろ?メグが困ってるの分かれば力になってくれる…」

言いながら携帯を取り出して掛け始める。

「だからダメだってばっっ!!!」
「!!」

メグがオレの携帯を奪い取ってギュッと両手で握り締める…

「メグ…」
「惇クンの意地悪……」
「場所…変えようか?」


今のやり取りで周りが気にし出したのとどうやら話が込み入りそうだから…

ギュッと握り締めてる携帯を優しく受け取りながらメグにそう声を掛けた。



「だからって…何で此処に来るわけ?」

「何でって ♪ 由貴に会いたかったからだろ〜〜〜 ♪ 由〜貴〜 ♪ 」
「だ・か・ら・ここは事務所で会社で職場だって言うのがわからないの?」

抱きしめようとする惇哉さんをかわしながら文句を言うけど人の話まったく聞いてない!

「オレは許されるの ♪ 」

最初から話が済んだら事務所に寄るつもりだったし。

「惇クン…」
「由貴にも聞いてもらう。」
「え?なんで?」
「その方が手っ取り早い。」
「?」
「メグはオレと由貴に説明する義務がある。」
「説明?」
「結構込み入ってるみたいだから…な?メグ。」
「………」
「社長由貴と応接室借りるよ。2人の将来と事務所の将来の為だから。」

社長は片手を上げてOKのサイン。
本当社長ってば惇哉さんに甘いんだから…
大体2人の将来の為って言うのはわかるけど…事務所の為って?

「ちょっと由貴借りるね。後でたっぷり相手するから皆宜しくね ♪ 」

ウィンクはいらないでしょ!もう…後から寺本さん達の声が聞こえる。
三角関係のもつれじゃ無いですから…

「とりあえずコーヒーでも飲むか。由貴淹れて ♪ 」
「…はい」

仕方なく応接室のドアに向かう。

「オレも手伝う ♪ 」
「結構…ムグッ!」

断ろうと思ったら惇哉さんに後から口を塞がれた!

「うーうー!!」
「メグはここで待ってな。帰ろうなんて思わない様に!メグだって話…聞いて欲しいんだろ?
きっと誰にも話せなかったんだろ?」
「………」
「………」

そんなオレの言葉に由貴も大人しくなったからそのまま給湯室に連れ込んだ。


「由貴…」
「だから……ダメだってば!ちゃんとケジメ…つけ…て……ンッ……やぁ…」

何度も何度も顔を逸らしても惇哉さんは何度も何度も私の口を塞ぐ。
惇哉さんを叩こうにも両手は頭の上に押さえ付けられてて抵抗出来ない!

「あ…ひ…人が来る…から…」
「由貴が声出さなければ誰も気付かない…ドアは由貴自身が押さえてるし ♪ 」

確かに押さえ付けられてる所は給湯室のドアだけど…

「彼女…が…待ってる…んっ…」

そうやって話してる間も唇が着いたり離れたり…もう…惇哉さんってば……

後で覚えてなさいよ…

「もしかして後でお仕置き?」
「………」
「由貴にお仕置きされるなんて…スゴイ期待して待ってよ…ベッドの中で…」
「誰がそんな事……」
「そう?残念……由貴…」
「何よ……」
「会いたかったよ……由貴は?」
「別に…」
「えー?ちょっとショック…」
「本当はお昼…一緒に食べようかと思ってたんだけど…」
「え?お誘いの電話もメールも無かったけど?」

「皆にからかわれるから…止めた……」

「………ぷっ!由貴……」
「笑わないでよ!もう会う人会う人色々聞かれて大変なんだから…」
「そっか…由貴も色々大変だったんだ。」
「そうよ…」
「由貴……」
「ん?」
「好きだよ…」
「………うん………チュツ…」

もう…私もどんどん惇哉さんに甘くなってるみたい……マズイわ……


給湯室でそんな事をした後で彼女の前に行くのは何だか恥ずかしかったけど…
惇哉さんは当然の如く何事も無かった様…


「兄貴なんだろ?メグの言ってた相手って?」
「………」
「相手?」

「何でメグがオレと由貴の結婚に反対してたかって言うとメグの事を好きだって言ってる相手に
自分の事を諦めさせる為にオレには独身でいて欲しかったんだってさ。一生!」

「だ…誰も一生なんて言って無いでしょう!」

「?」
「一生オレを片思いの相手にしたかったんだよな?」
「だから一生じゃ…」
「片思い?」
「フリだよフリ!今までもそうやって誤魔化してきたんだもんな。」
「誤魔化してたわけじゃ…」
「その誤魔化してた相手が惇哉さんのお兄さん?」
「らしい…だよなメグ?」
「………」

コイツは…ここまで来てまだ意地張るか!

「じゃあ兄貴に聞く。」
「や!もうダメだって言ってるでしょ!!違うから!柾クンじゃないもん!!」

携帯を取り出して掛けるフリをすると途端にメグが慌て出した。
これでバレて無いと思ってるのがわからん!

「メグ…ちゃんと説明しな!」
「………」
「お願いします。」

由貴が頭を下げる…そんな事しなくていいのに…


「………だって…柾クンがあたしの事好きだなんて…ウソだから…」

「何でそう思う?」
「だって…惇クンだって知ってるでしょ?あたし勉強だってあんまり出来なかったし…
おっちょこちょいだし…ガサツだし…料理だって上手くないし…顔だってイマイチだし…」

「まだ言うの?言ってて落ち込まない?」

「惇哉さん!」

隣に座ってた由貴が肘でオレの脇腹を小突く。

「だって…」
「でも柾クンは頭が良くて勉強出来て…器用で何でも出来て…皆の憧れの的…
それに誰にでも優しいし…顔だって惇クンよりも数倍カッコイイ…」
「………」

あーそうですか。

「だから柾クンがあたしの事好きだなんてきっと何かの勘違いだし…
それか子供の頃からのよしみで構ってくれてるだけだよ…」
「10年間も?」
「10年間も!?」
「うん…そうらしい。」
「あら…」

由貴が驚いてる…そりゃ驚くよな…オレも驚いた。

「それに柾クンあたしに告白してくれる前…何人かの人と付き合ってたみたいだし…
だからあたしじゃなくても…」
「別にメグの前に誰と付き合ってたなんて関係無いだろ?
その後でメグの事好きになったのかもしれないじゃん?」
「ありえないよ…」
「何で?」
「だって…」
「………」

本当はメグだって兄貴の事好きなんじゃないのか?

「で?高1の時告白されたのに断ったの?」
「だって!あたしと柾クンじゃ釣り合わないし…」
「でも兄貴は納得しなかった?」
「うん…」
「だろうな…オレだって納得しないよ。あの頃メグは付き合ってる相手もいなかったじゃん。」
「だから惇クンに片思いの相手になってもらったの!」
「何でそこでオレ?」
「だって……」
「だって?」

「他人に迷惑掛けられないでしょ。」

「は?」

オレも他人だと思うんですけど?

「惇クンは弟なんだしあたしの幼馴染みなんだからいいの!」
「何だその理屈?」
「だって相手は誰だってしつこく聞かれて…他の誰かの名前言ったら
その人の所まで押しかけそうな雰囲気だったし…迷惑掛けるじゃない。」
「それでオレかよ?」
「だって惇クンなら子供の頃から知ってるし特定の相手いなさそうだったし…
いてもすぐ別れてたし…そんな相手が片思いの相手なんて持ってこいでしょ?」
「………」

オイ……

「へえ〜〜〜」
「!!」

由貴が呆れた眼差しの呆れてる声だ!ったく余計な事を…

「学生の頃の話だからな!由貴!!」
「わかってるわよ…」
「………」

ホントか?その顔が怪しいんだよ…また変な風にわかってるんじゃないのか?

「ホント何であたしなんだろう…他にいくらだって相手はいると思うのに…」
「兄貴はメグがいいんだろ…」
「え?」

「どんだけ待たされたって…気持ち受け入れてもらえなくたって…
兄貴はメグがいいんだ…メグの事しか考えてないんだよ…」

「そ…そうかな?」

「………」

鈍い女だな…ってか天然?あれ?何だか…この感じ……

「だからってあたしの出張先の海外まで追い掛けて来る?」
「は?」
「惇クンが結婚するからってわざわざそれを言いに来たのよ!柾クンってば!
あたしちょうど仕事でこっちにはいなかったから。」
「あ…あの海外旅行って…」
「そうよ!あたしの所にいきなり訪ねて来たの!!」
「………」

あの兄貴が?

「 『 もういいだろうメグ…惇哉他の女性と結婚するんだって。 』 って
あの柾クンスマイルであたしに言いに来たの!!」

ま…柾クンスマイル?

「全部知ってたのよ!!だから嫌味ったらしく言いに来たの!!」
「そ…そうか?兄貴よっぽど嬉しかったんじゃない?」

気持ちはわかる。

「知らないわよ!だから頭に来たから柾クンに内緒でこっちに帰って来ちゃったの!」

それが昨日か…

「あたし…絶対柾クンとは付き合わないって決めたの!」
「は?何で?」

どんな発想?

「だって…何だか癪に障るじゃない…柾クンの思い通りみたいで…」
「は?いいじゃん思い通りで?」
「嫌よっっ!!」
「何で?メグだって兄貴の事……!!!」

ギ ロ リ !! と睨まれた。
もしかして余計な事言ったか?地雷踏んだ?

「柾クンの事なんてゼーンゼン好きじゃ無いですからっ!!!
好きだったらとっくの昔に付き合ってますからっ!」

「…………」  「…………」



オレと由貴はいきなり怒り出したメグを呆然と見つめてた…

オレの知らない間に兄貴とメグの間でそんな事があって…

今も続いてるなんて知らなかった…

何で素直にならないのかと呆れるけど…

こんな所にも 「 意地っ張りな彼女 」 はいるんだなぁ……なんて思いつつ……


これから兄貴はどうするんだろうと考えずにはいられなかった……