惇哉マネージャー編 05
楠 惇哉(kusunoki syunnya) : 由貴のマネージャー
柊木 由貴(hiiragi yuki) : 人気急上昇中の女優。
由貴に仕事上のパートナー宣言をされ何とも複雑な心境で過ごす毎日…
だからと言ってマネージャーの仕事を手の抜く様な事はしない…
でも…凹むのはどうしようもない事実で…
何気にあの由良も由貴の事を未だに諦めてないみたいだし…
まあもうすぐ撮影が終われば由貴との接点はなくなるわけだし…
焦るのも仕方ないが…いい加減諦めればいいものを…かなりシブトい。
由貴自身も由良には警戒してるらしからそうそうどうにかなるとは思わないが…
今日は由貴が休暇で泊まってるホテルのプールサイドで
2人が最後の話し合いをするシーンだ…
この後由貴が扮する彼女が悩んで悩んでアイツを選ぶ事を決める…
まあそれはこのシーンから大分経った後に決めるんだが…
何度か取り直して無事に撮影が終了した…
由貴も大事な場面を取り終えてホッとしてるのがわかる。
それで気を許したのが間違いだった。
「お疲れ様でした。」
「由貴ちゃん!」
「はい?」
帰ろうとする由貴をアイツが呼び止めた。
オレはその時他のスタッフと離れた場所で話をしてて気付かなかった。
「あのさ……オット!!」
「え!?……あっ!きゃっ…」
バ ッ シ ャ ー ー ー ン !!!
「柊木さん!!由良さん!!」
水の跳ねる音とスタッフの叫ぶ声と……
「由貴!?」
「ぷはっ!」
「はあっ!!」
視線をプールに向けると丁度2人が水面に出て来た所だった。
「由貴!!!」
「……惇哉さん……けほっ…」
「何してる!早く上がれ!!」
言いながら由貴の傍に駆け寄った。
プールサイドに駆け寄った時はもう2人はプールから上がってて…
でも当然全身ずぶ濡れで…
「由貴!大丈夫か?誰かタオル!!」
「惇哉さん…」
「いやあ〜悪い悪い…機材の配線コードに躓いちゃったらしくて…」
「お前…ワザと……」
「やだな〜事故だよ事故!怪我も無かったんだしそう怒んなよ。オイ堤!タオル!」
自分のマネージャーにそう声を掛けて振り向いた。
「にしても…いい眺めだなぁ〜由貴ちゃん ♪
やっぱスタイル良いね。それにその姿が悩ましい〜 ♪ 」
「 ハッ! 」
「え…?…あっ!!」
ずぶ濡れの由貴はブラウスとスカートがペッタリと身体に張り付いてて
身体のラインと下着がハッキリ透けて見える。
「…………」
由貴が両腕で自分の身体を抱きしめて隠した。
オレはジャケットを脱いで由貴に掛ける。
「この事はしっかり抗議させてもらうからな……」
「だから事故だって言ってるだろ?不可抗力!俺だって下着までビショビショなんだぜ。」
「………ふざけるな…由貴は女なんだぞ…
こんな大勢の前でこんな姿見られて…お前と一緒にするな…」
「怖え〜〜〜でも女優だろ?仕事となれば裸だって皆に見られるんだぞ?」
「このっ…」
「惇哉さん!!」
由貴がオレの腕を掴んで引っ張る。
「大丈夫だから!私は大丈夫だから!!」
「だってさマネージャー!由貴ちゃん本当にゴメンネ!今度お詫びに食事でも奢るよ ♪ 」
「断る!!」
「……あっそ…じゃお疲れ!」
そう言うとアイツは悪びれる事無く帰って行った。
バ タ ン ! !
思い切りホテルの控え室の部屋のドアを乱暴に閉めた。
「今替えの下着女性スタッフに用意してもらってるから…」
「うん…」
「…………」
「あの…惇哉さ……あっ!!」
有無も言わさず由貴を抱きしめた……
オレがついていながら…こんな…
「ごめんな…由貴……
あんな恥ずかしい目に遭わせて…オレがついていながら…本当にごめん……」
「……惇哉さん……本当に…私は大丈夫だから……気にしないで…」
「ごめん……」
それからホテルの部屋に奴のマネージャーが謝りに来て…
事務所の方にも奴の事務所からお詫びの電話が入った…
でも…オレは…奴を許さない……