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「おかえりなさい。」

「……………」


いつもの様に由貴が帰ったオレを玄関で出迎えてくれた。

「何でそんなに息切らしてんの?」

普通に話そうとしてるけど由貴が呼吸をする度に肩も一緒に上がる。

「え?……あ…惇哉さんが…もう帰るって言うから急いで…帰って来たから…」
「そんなに慌てなくてもいいのに…由貴…」
「だって…」

「何か後ろめたい事でもあるの?」

「……え?」

「オレに何か隠してる事……ない?」
「……え!?」
「由貴……」
「あの……惇哉さん…何か…知ってるの?あっ!!!」

ダ ン !! っと廊下の壁に両手を万歳の状態で押さえつけられた。

「惇…惇哉さん?」

「それをオレが聞いてる……由貴…」

「…………」

こんな状態なのにオレの後ろの玄関のドアを気にして由貴の視線がチラチラと動く。

「何?由貴…誰か来るの?それとも無事に帰ったか気になる?」
「惇哉さん?さっきから何言ってるの?」
「智匱ならさっきそこで見掛けたよ…無事に帰ったんじゃない?」
「惇哉さん?」

「由貴……お帰りなさいのキスして…」

「え?………私…から?」
「そう…由貴から……」
「え…でも……」
「何で?出来ない?したくない?」
「したくないって……どうして?」
「それが由貴の気持ちだから…?」
「………言ってる意味が…わからないんだけど?」
「そう?」
「じゃ…じゃあこの手離して…」
「……………」

手を離すとお互いがゆっくりと手を下ろす…

「少し……屈んで…」

「…………!!」

言われた通りちょっと屈むと由貴がオレの首に両手を廻して引き寄せた。
オレは勝手に由貴の腰に手が廻る…

「惇哉さん……」
「………な…に?」

由貴の顔がぐっと近付く……ヤバイ…こんなの…

「何かあった?」
「え?……あ…いや………なん…で?」
「だって…前も確かこんな事があったから……」
「え”っ!?」
「何か誤解してる?」
「いや………」

さっきまでの煮えくり返ってた感情があっという間に冷えて…冷めて…消えていく…

「惇哉さん……」
「 !! 」

今度は由貴の両手がオレの頬を優しく挟んで由貴の方を向かせられた…

ああ……マジやばい……オレ顔赤くないか?大丈夫か?

「惇哉さん……」
「は…い……」

由貴の顔がもっと近付く…ヤバイ!!ヤバイ!!心臓が破裂しそう!!

「会って欲しい人がいるの……」
「へ?」

あれ?お帰りのキスは?

「会って…欲しい人?」

「…………」

コクンと由貴が頷いた。

「誰?」
「………」

その時ガチャリと玄関のドアが開いた。

「あ!」

開いたドアの向こうにいたのは……

「え?智匱!?」

「何だ帰ってたのか…って何してんだよ?玄関先で…」
「あっ!!やだ…」

由貴がパッとオレの顔から手を離した。


なに!?会って欲しい相手って…コイツ?智匱???

思わず思い切り由貴に振り向いてしまった!


「え!?あ!違う!違うわよ!惇哉さん!!!と…智匱君?」
「ああ…親父…」
「は?親父?」

智匱に促されて姿を見せたのは見た事も無いいい歳のオヤジ…

「こんばんは……」

控えめに微笑まれて挨拶されたけど……

「………誰?この人?」

「俺の親父。」
「智匱の父親?」

それが何でまたオレん家に来る?意味わかんねぇ……???

「初めまして。智匱の父です…いつも息子がお世話になりまして…」
「は…あ…いえ…」

何?何なんだ?この展開??

「あのね…惇哉さん……」
「え?」

今度は由貴が智匱の父親の隣に立つ。

「私の……父です。」

「……………はあ???」

え?何??本当にどんな展開??意味わかんない!!??

智匱の父親が…由貴の父親???って事か??

「由貴?一体どう言う事?わかる様に説明して!」
「あの……私の母と離婚した後再婚した相手が智匱君のお母さんなの…」
「え?再婚?」
「そう…」
「…………」

頭の中で家系図を展開してみた…
由貴の父親と智匱の父親が同じで…母親はそれぞれ違うって事は??

「え!?まさか……もしかして!?」

「ったく鈍いな!俺と由貴姉は姉弟なんだよ!腹違いの異母姉弟!」

「なっ!!!」



オレは突然の事で頭の中がパニック!!

智匱と由貴が姉弟?腹違いの異母姉弟だと??

ってかその前に!!!


今コイツ由貴の事 『 由貴姉 』 って言ったか!!??