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「わあ〜素敵…」

「へえ…やっぱり写真やパソコンで見るのとは全然違うな…」


飛行機で約11時間…時間変更線を超えて途中幾つかの観光をしてタヒチのモーレア島に着いた。

ホテルと言っても海の上に1つ1つのバンガロータイプだ。


開放的な窓からは真っ青な海が見える…

リビングに寝室…両方の部屋に面したサンデッキ…
そのサンデッキにはプールまで付いてる。

白と木目のこげ茶で統一された室内…

大きめなベッドが真っ白なシーツで栄える…

今夜ここで…なんて考えて顔が緩む…



「夕食はここのビーチでだってさ。それまで自由らしい…」
「うん…」

由貴はそんな返事をしながら部屋の中をあちこち見て回ってる。

「どこも洒落てるわよね…何だかドキドキしちゃう…」

今回の新婚旅行で由貴はメガネは掛けていない…
それはオレがお願いしたからでここまで来て伊達メガネを掛ける必要なんて無いし…

「由貴…」
「ん?」
「少しは落ち着いたら?疲れちゃうぞ。」
「うん…でももう少し見てる…だって本当に何もかも綺麗で…あっ!」

動き回ってる由貴を後ろから捕まえて抱きしめた。

「由貴……」
「なに…」
「やっと来れたな…」
「そうね…」
「待たせて…ごめん…」
「いいわよ…だって忙しいって事は仕事があるって証拠でしょ?
惇哉さんが暇になったら私も事務所も大変ですもん…」
「そっか…」
「ただ…身体だけは気をつけてね…惇哉さん調子悪くても無理して撮影行きそうだから…」
「ふふ…気をつける…ああ…そう言えばこの前の映画の続編今度また撮るんだってさ。」
「え?本当?」
「うん…この前披露宴の2次会で監督に言われた。」
「そう…また髪の毛伸ばさなきゃね…また黒く染めるの?」
「多分…それにまたジムに通わなきゃ…」
「あのまま通ってれば良かったのに。」
「その時間も由貴と一緒にいたかったの…
家で多少は鍛えてたからそんな苦労しないで体重落とせると思う…」
「そう……」

「由貴……」

「ん?」

「オレ…由貴と結婚できて良かった……」

「うん……」

「由貴は?オレと結婚できて良かった?」

「う〜〜ん……どうかしら?これからの惇哉さん次第かしら?」

「……はあ〜〜相変わらず由貴は素直じゃないなぁ〜」

「ふふ……聞かなくてもわかってるでしょ…」

「由貴の口から由貴の言葉で聞きたい……」

「………良かったって思ってるわ…後悔もしてない…
惇哉さんとこれからもずっと…一緒にいれて嬉しい…」

「由貴…」

「満足した?」
「ああ…大満足 ♪ フフ…由貴…」
「なに?」
「呼んだだけ……由貴… ♪ 」
「………」

それからオレは感謝の気持ちと嬉しさの表現で由貴をキス攻めにした。

本当はそのままベッドに倒れ込みたかったけど夜まで我慢する事にした…




「はあ〜〜気持ち良い…」

夕飯を食べた後2人ともシャワーを浴びてサンデッキのイスに座ってお酒を飲んでる。

「由貴飲み過ぎるなよ。」
「大丈夫よ…」
「ホントかよ…」

こんな時に酔い潰れて記憶無いなんてイヤだからな…注意してないと…

「明日は午前中はイルカと遊べるってさ。」
「私イルカなんて触るの初めて。」
「オレもだよ。イルカショーなら子供の頃見た事があるけどな…」
「楽しそう…」
「…………」

そう言って嬉しそうに笑う由貴を見てオレは何とも言えない気持ちになる…


この気持ちを…由貴にどう伝えればいいんだろう……

今まで誰といてもこんな気持ちになんてならなかった…

由貴が傍にいてくれるだけでこんなにも気持ちが安らぐ…

それを由貴はわかってくれてるのか…?


「って由貴飲みすぎだろ!もう終わりだって!!」

気付かない内にワインの瓶半分以上1人で飲んでる!
弱いクセに自分の加減を知らないんだから…

「大丈夫よ〜もう惇哉さんのケチ!」
「ケチじゃない!眠くなったら困るんだよ!」
「どうしてよ?」

「全部由貴には覚えていて欲しいから…今夜のこと……」

「 !! 」

「思い出に残る夜にしような…由貴…」

「………また…そんな事言う……」
「なんで?」
「余計ドキドキするじゃない…」
「ドキドキ?」
「そうよ…もうずっと前から今夜の事考えて…ドキドキしてるの…」

酔った勢いなのか…諦めたからか…
由貴がそんな胸の内をこそっとオレに話してくれた…

「由貴…」
「………惇哉さんは慣れてるかもしれないけど…私は…」
「慣れてなんかない…オレだってドキドキしてる…」

言いながら由貴のオデコに自分のオデコをくっ付けた…

「うそ…」
「本当。」

酔ってるからか目の前にある由貴の瞳が潤んでて…それだけでそそられる……

「酔ってるからでしょ?」

「くすっ…違うよ……これから起こる事にオレもドキドキしてる…由貴……」

「…ん…」
「チュッ…」

啄ばむ様なキスをして…お互い見つめあう…

「惇哉さん……」




キシリと小さな音がしてベッドが軋む……

「ん……」


由貴の腕がオレの首に廻されて引き寄せる…

酔ってるから…それともこんな特別な夜だからか…

だからそのまま由貴の唇をオレの唇で塞いで…お互いの舌を絡めるキスをする…

いつもしてる…同じキスなのに……なんてドキドキするんだろう…

ずっとしていたい…


「ン……ハァ………」

オレの唇が離れると由貴が大きく息をはく…

目を瞑って…ちょっと顎が上がって…ほんの少し開いた唇が悩ましい…


「酔った?」

「ううん……大丈夫……惇哉さん……」

首に廻された腕がスルリと下りてオレの頬を手の平で触る…
そんな手の平を捕まえてキスをした…

「…チュッ ♪ 」

「くすぐったい…」

「あったかい…」


そんな会話もいつもと違ってる様に感じるのは…

いつもと違う……この異国のせいなのか…