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「う〜ん……」
「……………」
新婚旅行から3ヶ月…
今日は数日後から北館監督作品の映画の撮影が始まるからその前に
飲みに行こうと言う事になってレンジと2人で向かい合って座ってると言う訳なんだが…
オレはちょっと酔いも廻っててレンジ相手に絡みだしてた。
「さっきから何唸ってんだよ…酒が不味くなんだろうが…」
「あのな…オレにとっては一大事なことなんだぞ…独身の男には分かんないだろうがな!」
「なんだ?メガネちゃんに離婚届でも叩き付けられたか?」
「アホか!んな訳ないだろう!だったらお前なんかと飲んでない!」
「だろうな…必死になってメガネちゃんのご機嫌取ってるだろうぜ。」
「うるさいな!そんなんじゃないって……」
「ああ?何だよ?言ってみろよ…」
「何でなんだか……」
「だから何だよ?」
「子供が出来ない!」
「…………は?」
「新婚旅行から帰って来てもう3ヶ月…結婚してから半年以上経つのに…」
惇の野郎がクソ真面目な顔でそんな事を洩らすから…
「……種な……」
ド カ ッ !!!
「ぐがっ!!いてっ!!!」
「それ以上言ったらド突くぞ!」
「テメェ…先に人のスネ蹴り上げといてよく言うなっ!!!シバクぞ!!」
「…………」
「こればっかりは運任せだろ?」
「由貴がさ…」
「あ?」
「何気に危ない日避けてんだよな…」
「は?」
「出来そうな日は何だかんだ理由を付けてしないんだよ。」
「…………はあ〜〜〜おい惇!」
「ん?」
「お前さ……」
「?」
「女のそう言うのわかるのか?」
「由貴の事ならわかる。」
「なっ…何でだよ?」
「え?だって由貴だから…由貴の事なら大体の事はわかる。」
「………何だか…すんげぇ怖ええ……お前…ストーカーみてぇ…」
マジレンジが引き攣った顔で引いてた…
「夫婦なんだしおかしくないだろ?」
「そうか?」
「って言うか由貴はすぐ態度に表れるからわかるんだよ…あーイライラしてんなぁってさ…」
「そんなもんかね…」
「由貴はまだ子供欲しくないのかな…」
「そう言う話しないのか?」
「しない事もないけど…そういやいつもハッキリ言われてなかったかな…
でも嫌だとも言われてないし…」
「お前との子供は欲しく無いんじゃねーの?」
「何でだよ?」
「お前みたいなアホな子供が生まれたら困る…」
ド カ ッ !!!
「いてっ!!!」
また蹴りやがった!!
「ド突くぞっ!」
「蹴ってから言うんじゃねーよ!」
「撮影始まったら一緒にいれる時間も減るしさ…」
「一緒に暮らしてんだからいいじゃねーか…家に帰ればいるんだろ?」
「そうだけど一緒にいれる時間なんてほんの少しだよ…由貴はオレの仕事優先させるし…」
「当たり前だろうが…」
「は〜あ……ヤキモキしたけどやっぱ由貴がマネージャーやってた方が
一緒にいれて楽しかったな…」
「お前…ガキじゃ無いんだからな…」
「オレは一緒にいたい……三鷹の奴…また長期で休まないかな…」
「ああ…あのマネージャーか?だって手術して健康になったんだろ?
あんな別人みたいに痩せちまって…」
「今じゃ健康オタクだよ…人にも青汁飲ませようとすんだぜ…冗談じゃ無いっての!
オレは由貴のコーヒー持参してるって断り続けてるけど…はあ〜」
「仕方ねぇーな…そんな考えが甘いんだよ。大体メガネちゃんもマネージャーやる気無いんだろ?」
「智匱の時は引き受けたけどな…まあ社長命令だったけど…今度も社長命令でやらせようかな…」
「ホント何処までお前はメガネちゃんが必要なんだよ…」
「何処まで?そんなの何処まででもだよ…毎日でも傍にいて欲しい…」
ド カ ッ !!!
「イデっ!!!」
今度はレンジがオレのスネを蹴り上げた。
「お前〜〜〜」
「ノロけんじゃねーっていっつも言ってんだろうが!」
「やかましい!悔しけりゃノロけてみせろ!この純情男がっ!!」
「お前みたいに見せビラかさないだけだっつーの!」
「初耳!彼女もいないくせに…ああ!そっか1人芝居か?悲しいな〜」
「シメるぞ…マジで…」
「へえ…楽しみだな……」
そんな小競り合いをしながらオレは心の中で本当に願ってた…
由貴がもう1度オレのマネージャーやってくれます様に…って!
「嫌よ!」
「…………」
一応帰ってから何気に由貴に聞いてみた。
そしたら間髪入れず即答!一刀両断だよ。
「三鷹さんがいるのになんで私がマネージャーなんてやらなきゃいけないのよ!」
「ダンナの頼みでも?」
「惇哉さんの頼みでも!!イ・ヤ・で・すっ!!」
「社長命令でも?」
「……三鷹さんがどうしても出来ないって言うなら考えてもいいけど…
三鷹さんを差し置いては嫌よ!」
「差し置いてって…ただ聞いただけだろ…」
「惇哉さん…」
「何だよ…」
由貴が変な眼差しで迫って来る…
「変な事考えてないでしょうね?」
「変な事って何?」
「ワザと三鷹さんが具合悪くなる様に精神的ダメージ与えてるとか?」
「あのな何年オレのマネージャーやってると思ってんだよ!オレの事なんて慣れきってるよ!」
「そう?」
「ヒドイな…由貴……オレの事そんな風に見てたのか…」
「だって急にそんな事言い出すから…怪しいじゃない!」
「由貴……」
ビクン!
「な…なに…」
ソファで座ってた私を捕まえる様に背凭れに手を置いて惇哉さんがゆっくりと
私に近付いてくる…
もう少しで映画の撮影が始まるから惇哉さんは今見た目あの 『 石原 竜二 』 なのよね…
だからちょっとドキドキしちゃう…
「オレ今自分の中で願掛けしてんだ…」
「ど…んな?」
「いつも由貴と一緒にいれます様にって…」
「……いつも…いるじゃない…」
ちょっ…唇が今にもくっ付きそうなんだけど…
「もっと…一緒にいれる様に…」
やだ…耳の元で囁かれた…
「あ……」
思わず惇哉さんの腕にしがみ付いて…
「……ん……」
ちゅっ……くちゅ…
息が詰まるほど舌を絡ませられて…苦しいくらい…でも…
「…ぁ………ハァ……」
離れた後も何度も触れるだけのキスを繰り返した…
「由貴とのキスに願掛けしてるんだ……」
「…………」
そんな惇哉さんの願掛けが効いたのか…
次の日にとんでもない事が起こった!
「はあ?事故った?三鷹が?」
次の日事務所に呼び出されていきなりそんな話だ。
「昨夜私用で出掛けて他の車の事故に巻き込まれたんだそうだ。
怪我は左足首複雑骨折で全治3ヶ月…命には別状ないらしいんだけどね…」
「マジ?」
「で…その間のマネージャーなんだけど…誰か別な人つけないとね…
う〜ん…誰かいるかな…」
社長が顎に手を当てて唸ってるから助け舟を出した。
仕事中に久しぶりに社長室に呼ばれた。
「失礼します…」
中に入ると先に呼ばれてた惇哉さんがソファに座ってた…
「 ? 」
何?そのにこやかな顔は…
大体社長室に呼ばれるなんてロクな事がないんだから…
「何でしょう?」
「あのね…三鷹君が事故に遭っちゃってね…全治3ヶ月なんだって…」
「え!?事故ですか?大丈夫なんですか?」
「まあ命には別状無いんだけど…もう明後日から惇哉君の映画の撮影が始まるだろ…」
「 !!! 」
うっ!何か嫌な予感が!!
「社…社長!!ちょっ…ちょっと待って下さいっ!!」
「ん?何だい?」
「も…もしかして…まさか…」
「察しがいいね〜由貴 ♪ 」
「 !! 」
そうだ惇哉さんがいたんだっけ!!
「惇哉さん……まさか…」
「また一緒に仕事が出来て嬉しいな〜〜 ♪ 」
そのニッコリ顔………惇哉さんが言い出しっぺねぇ〜〜!!
許さないわよ〜〜〜っっ!!
「と言う訳で…今日からまた惇哉君の…ああご主人のマネージャー宜しくね。奥さん。」
「社長!!!そんな…」
「これ僕命令だからね ♪ 」
「…………」
イコール社長命令じゃないのよーーーーーっっ!!!!